第404号黒岩検閲済 2026年7月27日 発行(不定期刊/前号:7月27日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|電話番号先収集×勧誘目的未告知の型

申込フォームに電話番号だけ入力すると、目的を告げない電話が後から来る副業勧誘の型を、消費者庁・国民生活センター・警察庁の一次情報で調べた

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スマホ広告から副業の申込フォームに入ると、そこで求められるのは氏名と電話番号だけ、ということがある。何の仕事をするのか、いくら費用がかかるのかはその場では説明されない。案内されるのは「後日、担当者からお電話します」の一文だけだ。特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、電話の入口から調べた。

「電話番号だけ」で完結する申込フォームの意味

広告には「1日で〇万円」「動画を見るだけで収入が増えた」という具体的な数字が添えられ、口座残高が伸びたとおぼしき画像が並ぶことが多い。ただし、その脇には「金額は一例であり成果を保証するものではありません」という打消し表示が、目立たない大きさで置かれている。

将来の収入を断定的に示す言い回しについて、消費者庁の逐条解説はこう整理している。

断定的判断の提供とは 「『断定的判断』とは、確実でないものが確実である(例えば、利益を生ずることが確実でないのに確実である)と誤解させるような決めつけ方をいう。『絶対に』、『必ず』のようなフレーズを伴うか否かは問わない」――消費者庁「逐条解説 消費者契約法」第4条第1項第2号より

強調と打消しの関係についても、消費者庁は次のように述べている。

打消し表示の考え方 「打消し表示の文字が小さい場合や、打消し表示の配置箇所が強調表示から離れている場合…一般消費者は打消し表示に気付くことができないか、打消し表示を読み終えることができない」――消費者庁「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」より

「〇万円」という数字と、小さな打消し表示が同じ画面に同居していたら、まず後者のほうを大きく読み直してほしい。

電話をかける側は、なぜ最初に名乗らなければならないのか

この型で気になるのは、フォームの時点で仕事の中身が一切説明されないことだ。「詳しくは電話で」という案内どおりに待っていると、数日後に着信がある。ここで、電話をかけてきた相手が何者で、何の目的で電話しているのかを先に名乗るかどうかが、実は法律で決められている。

特定商取引法第16条 「販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売をしようとするときは、その勧誘に先立つて、その相手方に対し、販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称及びその勧誘を行う者の氏名並びに商品若しくは権利又は役務の種類並びにその電話が売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするものであることを告げなければならない」――消費者庁「特定商取引法ガイド-電話勧誘販売」より

申込フォームで集めた電話番号にかけて有料プランを案内する電話は、この電話勧誘販売にあたりうる。「教材の使い方を説明します」というだけで用件を切り出し、勧誘目的をはっきり告げないまま話が進むとしたら、それ自体がこの条文に照らして確認しておきたい点になる。電話の相手が、会社名と「これは勧誘のお電話です」という一言を最初に言ったかどうかを、覚えておいてほしい。

「仕事に必要」という理由で、契約の桁が変わる

電話で示されるのが、数十万円から数百万円規模の「サポートプラン」であることがある。最初の広告にもフォームにも出ていなかった金額が、ここで初めて提示される。「この仕事を続けるにはこのプランが必要です」という説明のされ方に見覚えがあるなら、それは特定商取引法が定める、もう一つの類型に近い。

業務提供誘引販売取引とは 「『仕事を提供するので収入が得られる』という名目で消費者を惹きつけ、『その仕事に必要』と称して商品等を販売し、金銭負担を強いる取引形態」――消費者庁「特定商取引法ガイド-業務提供誘引販売取引」より

この類型に該当する場合、書面を受け取った日から20日以内はクーリング・オフができる。電話勧誘販売としての規制がかかる場合は8日以内だ。どちらの型に当たるとしても、契約直後に慌てて確定させる必要はなく、まず日数を数える時間が残っている。

私見だが、契約先の名前を検索して、設立から日が浅い事業者だと分かることがある。特定商取引法に基づく表示には代表者名や所在地の記載義務があるので、契約の前に確認できる材料として、これも押さえておきたい。

電話の中で足される「もう一つの条件」

電話では、サポートプラン契約に加えて「一定期間内に一定額の収益を出せば、お祝い金のような上乗せがある」という話が添えられることもある。上乗せの条件が示されると、失敗する場面より成功する場面のほうを先に想像しやすくなる。だが、その条件を実際にどれだけの人が満たせているかは、電話口では確かめようがない。条件が細かく決まっているほど、それは「達成しにくい条件」の裏返しかもしれない、と一度疑ってみてほしい。

迷ったとき用の一言 「会社名と、これは勧誘の電話だという一言を、最初に言ってもらえますか」。この一言を電話口で聞くだけで、相手の対応がだいぶ変わる。はぐらかされたら、それ自体が答えだと思っていい。

この種の副業トラブルの相談は、件数・金額ともに増えている。国民生活センターは、簡単な作業で稼げるとうたう副業の相談件数が「2020年度1,341件から2023年度3,694件」に増え、「SNSをきっかけにした割合」も「23.0%から63.4%」に、平均契約購入金額も「279,519円から763,117円」に伸びたと公表している(国民生活センター「スキマ時間に気軽に稼げる等とうたう副業トラブル!」2024年9月4日)。

警察庁も、副業を名目に現金等をだまし取る「副業詐欺」について、令和7年(2025年)の年間確定値として「認知件数は2,071件、被害額は35.8億円」と公表している(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」令和8年5月22日公表)。数千円の教材から始まる話の入口は軽くても、その先で動く金額と相談件数は、年を追うごとに重くなっている。

  • 申込フォームの時点で、仕事の中身と費用が説明されているか
  • 電話の相手が、会社名と「勧誘の電話である」ことを最初に名乗ったか
  • 「仕事に必要」という理由で示された金額が、最初の広告のどこにも書かれていない金額でないか
  • 契約先の事業者が、特定商取引法に基づく表示(代表者名・所在地)を確認できる、設立の浅い会社でないか
  • 契約書面を受け取った日から8日または20日以内のクーリング・オフの余地が残っていないか

この記事のまとめ

  • 副業広告の申込フォームで氏名・電話番号だけを入力させ、仕事の中身や費用はその場で説明しない型がある
  • 電話をかける側には、特定商取引法上、会社名と勧誘目的を先に名乗る義務がある
  • 「仕事に必要」という理由で示される高額プランは業務提供誘引販売取引にあたりうる場合があり、クーリング・オフの余地が残っていることがある

電話の相手が名乗るかどうか、それだけでも確かめる価値がある。私はそう考えている。(黒)