「稼げなければ全額返金」の“全額”を確かめたら、対象は数千円の教材代だけだった型を、消費者庁の一次情報で調べた
特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れで調べた。「作業して収益が出なければ、全額返金します」――そう聞くと、失うものがないように思える。だが、その「全額」が何を指しているのか、確かめたことはあるだろうか。今号はこの型を洗った。(黒)
「全額返金」から始まる、軽い最初の一歩
この型の入口はいつも軽い。SNS広告から登録すると届くのは、いきなり高額な契約ではなく、数千円程度の電子書籍やガイドブックだ。そこに「30日間作業して収益が0円なら、購入代金を全額返金する」という収益保証が添えられている。
これなら失敗しても損はない、と読めてしまう。だが、ここで保証されているのはあくまで数千円の教材代であって、この先に控えている話ではない。「全額」という言葉が、何の全額なのかを一度立ち止まって確かめておきたい。
電話で、話の桁が変わる
ガイドブックを受け取ったあと、電話がかかってくる。ここで示されるのが、数十万円から数百万円規模の「サポートプラン」契約だ。最初の広告にもガイドブックにも、この金額は出ていない。
で、その利益の出どころは?――消費者庁は、まさにこの型の事業者について、返金保証の見せ方そのものを問題視して公表している。
「全額」を確かめると、対象は教材代だけだった
返金保証の「全額」という言葉は、素直に読めば支払ったお金すべてを指しているように見える。だが、実際に確かめると、対象は最初の教材代だけで、そのあとに契約した高額なサポートプラン費用は含まれていない――という事案を、消費者庁が別に公表している。
同じ公表資料によれば、サポートプランの申込料金は「最も安価なプランで約10万円、最も高額なプランだと約180万円」だったという。数千円の返金保証と、桁の違う契約金額。まずこの差があること自体を、見ておいてほしい。
電話という場そのものに、決められたルールがある
この手の電話は、特定商取引法が定める「電話勧誘販売」に当たりうる。同法は、電話をかけてきた事業者に対して、氏名や勧誘目的を名乗る義務や、事実と違うことを告げる不実告知の禁止を課している。
契約したあとでも、この期間内ならクーリング・オフで契約をなかったことにできる。「もう契約してしまったから」とあきらめる前に、まず日数を数えてほしい。
「達成すれば上乗せ」という、もう一つの後押し
電話の場では、返金保証だけでなく「一定の期間で一定額を稼げば、上乗せの特典がある」といった話が添えられることもある。上乗せの話が加わると、失敗する場面より成功する場面のほうを先に想像させられやすい。
これも、返金保証の「全額」と根は同じだと私は見ている。断定的な収益の見通しを先に示す話法について、消費者庁は次のように公表している。
上乗せの数字も、返金保証の「全額」と同じで、まず出どころと条件を確かめる対象にすぎない。
相談は、むしろ大きくなっている
「数千円で始まる話」という入口のイメージとは裏腹に、この種のタスク副業に関する相談の平均契約購入金額は、年を追うごとに大きくなっている。
同じ資料では、相談のきっかけがSNS経由だった割合も2020年度23%から2024年度70.1%まで増えたとしている。入口は軽くなり、契約の規模はむしろ重くなっている、と私は見ている。
- 「全額返金」「収益保証」の対象が、教材代だけなのか契約全体なのかを書面で確認したか
- 電話で示された金額が、最初の広告やガイドブックのどこにも書かれていない金額でないか
- 「一定期間で一定額稼げば特典」という話に、確かめられる根拠が添えられているか
- 契約書面を受け取った日から8日以内のクーリング・オフの余地が残っていないか
- 家族や友人など、利害のない誰かに一度話してみる
この記事のまとめ
- 「全額返金」の保証が、実際には数千円の教材代のみを対象とし、電話勧誘後の高額サポートプラン契約は対象外だった事案が消費者庁から公表されている
- 電話勧誘は特定商取引法の対象で、氏名明示義務・不実告知の禁止・8日間のクーリング・オフが定められている
- タスク副業の平均契約購入金額は年々増加しており、「数千円の話」では終わらない規模になっている
「返金保証」という言葉を見たら、まず対象範囲を確かめる。それだけで、防げる契約がある。(黒)