「特定商取引法に基づく表示」のリンクが開けず、契約書の会社名と振込先の名義も違う――副業勧誘で確認できる2つの型を、消費者庁の一次情報で調べた
特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、契約する前に自分の目で確かめられる2つのチェックポイントを調べた。ひとつは、広告の隅に必ず置いてある「特定商取引法に基づく表示」というリンク。もうひとつは、契約書に書かれた運営会社の名前と、実際にお金を振り込む先の口座名義が同じかどうか。どちらも法律の専門知識がなくても、クリックひとつ・通帳ひとつで確認できる。
リンクは「ある」のに、開くと何も出てこない
「未経験でもスマホ操作だけ」「AIが書いた記事を貼るだけ」といった、参入のハードルの低さを前面に出す副業広告がある。この種の広告のページ下部には、たいてい「特定商取引法に基づく表示」というリンクが小さく置かれている。特定商取引法ガイド「通信販売」(消費者庁)は、通信販売の広告について「事業者の氏名(名称)、住所、電話番号などを表示しなければなりません」としている。リンクが置かれていること自体は、この義務を果たそうとしている体裁に見える。
ただ、そのリンクを実際にクリックしてみると、ページ自体が開けない――「ページが見つかりませんでした」という表示だけが出てくる、という相談報告がある。表示義務を満たすリンクが用意されているように見えて、開いた先に中身がない。体裁だけが整えられていて、実質を伴っていない状態だと言っていい。
契約書の会社名と、振込先の名義は一致しているか
申し込みが進み、LINEでの個別対応や電話での説明を経て、高額なプランの契約書面が示される段になると、次に確かめたいのは「この契約は、誰との間で結ぶことになるのか」という点だ。契約書に書かれた会社名と、実際に振り込む先の口座名義が違う、という相談が寄せられることがある。
振込先の名義そのものについて、統計を出している公的資料は見当たらない。ただ、近い傾向は公的機関から指摘されている。「SNSがきっかけの副業トラブルに注意!」(東京都消費生活総合センター・2025年10月30日)は、振込先が「個人名義」の預金口座である場合について「指定される振込先の『個人名義』は都度変わることが多く、振込後の取戻しはほぼ不可能です」と注意を呼びかけている。国民生活センターの報告書(2024年9月4日)に載る相談事例でも、「振込先口座はほぼすべて異なる個人名口座だった」という記述がある。
これらはいずれも「個人名義」への言及であり、法人と法人の名義がずれるケースそのものを扱った公的統計は確認できなかった。私見だが、契約の相手として名乗った会社名と、実際にお金が流れていく先の名義が違う状態は、名義の種類(個人か法人か)を問わず、契約前に自分の目で確認していい線引きだと思っている。
この型が現れやすい入口
「未経験でも月30万円」「AIの記事をコピペするだけ」というような、参入の軽さを強調する副業広告は、この2つのチェックポイントが崩れやすい型の入口としてよく現れる。国民生活センター「スキマ時間に気軽に稼げる等とうたう副業トラブル」(2024年9月4日)によれば、この種の「簡単なタスクを行う副業」に関する相談件数は、2020年度の1,341件から2023年度には3,694件へと増えている。入口が軽くなるほど、後段の契約段階で確認を怠りやすくなる――そういう構造が数字の背景にあると見ている。生成AIを謳う副業がLINE登録から電話勧誘、年額のローン契約へと進む型の全体像は、別の号でお金の流れとして分解した。今回はその型の中でも、契約の前に誰でもその場で確かめられる2点に絞って書いている。
すでに契約・振込をしてしまった方へ
すでに振込やローンの手続きまで進んでしまった方へ。まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わない・これ以上借りないことが先だ。
- 広告・LP最下部の「特定商取引法に基づく表示」を実際にクリックし、氏名・住所・電話番号が読めるか確認する
- そこに表示された会社名と、契約書・請求書に書かれた会社名が一致しているか確認する
- 振込先の口座名義が、契約書の会社名と一致しているか確認する
- 一致しない・リンクが開けない場合は、その場で振り込まず持ち帰る
- すでに払っている場合は、勧誘のやり取り(LINE・電話日時・契約書面)の記録を残し、消費者ホットライン「188」に相談する
相談先がすぐに分からなければ、消費者ホットライン「188」(消費者庁)から最寄りの窓口につないでもらえる。私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。
この記事のまとめ
- 「特定商取引法に基づく表示」のリンクは、存在するだけでなく実際にクリックして中身が読めるかまで確認する
- 契約書に書かれた会社名と、振込先の口座名義が一致しているかを、振り込む前に確認する
- どちらか一方でも崩れていたら、その場で判断せず持ち帰る
クリックひとつ、通帳ひとつで確かめられることを、契約書にサインする前に済ませてほしい。(黒)