第387号黒岩検閲済 2026年7月25日 発行(不定期刊/前号:7月25日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|的中実績の選択的開示×AI投資ツール誘導の型

相場ニュース記事の「前回の注目銘柄を振り返る」コーナーが、当たった結果だけを選んで見せる型を、消費者庁・金融庁の一次情報で調べた

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黒岩警戒度

相場ニュースの体裁をした記事を、今号も読んだ。個別銘柄の材料を並べた記事の中ほどに、「前回の注目銘柄を振り返り」という欄があった。前回取り上げた銘柄のその後の値動きを、答え合わせのように見せる作りだ。ただ、並んでいたのは値上がりした銘柄だけだった。特定のサイト・サービス名は挙げず、案件をまたいで現れる一つの型として、今号はこの"振り返り"の中身を調べた。

「前回の振り返り」という、信頼を作るコーナー

記事の作りはこうだ。冒頭で当日の株価材料を並べ、担当者らしき名前を添えた「注目銘柄」欄を置く。そのすぐ下に「前回の注目銘柄を振り返り」という見出しがあり、前回取り上げた銘柄のうち、その後値上がりしたものの株価推移が示されている。上がった、当たった、という結果だけが並ぶと、読んでいるこちらは「この担当者は目利きらしい」という印象を先に持ってしまう。

当たった分だけを選ぶと、数字はどう見えるか

ここで一度、割り算をしてみたい。仮に前回5銘柄を紹介していたとして、値上がりしたのが2つ、下がったか横ばいだったのが3つだとする。的中率は5分の2、4割にすぎない。だが振り返り欄に載るのが値上がりした2銘柄だけなら、読者の目には「今回も当たった」としか映らない。外れた3銘柄は、そもそも振り返りの対象にすら上がらない。つまりこの欄は、成績の全体ではなく、都合のいい一部だけを切り出して見せる仕組みになっている。

「実際より著しく優良」に見せる表示は、景品表示法の対象 消費者庁は、景品表示法が禁じる優良誤認表示について「実際のものよりも著しく優良であると示すもの…であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を禁止しています」と説明している(優良誤認とは(消費者庁))。当たった結果だけを選んで並べる振り返り欄は、この着眼点に触れうる作りだと私は見ている。

振り返りの先にある、もう一つの窓口

この振り返り欄のすぐ下、あるいは記事の末尾には、たいてい別の案内が続く。「AI投資ツール」を名乗るサービスへの無料登録だ。実績として「最大◯◯%」という利益率が大きく掲げられ、「無料で使ってみる」というボタンが置かれている。前回の振り返りで「当たる担当者」という印象をすでに持たされたあとにこの案内を読むと、今度はAIの実績も同じように信頼できるものに見えてしまう。だが、振り返り欄とAIツールの実績は、本来は別の場所で、別の根拠に基づいて示されるべき数字のはずだ。

で、その利益の出どころは?――振り返り欄が「当たる人だ」という信頼をまず作り、その信頼を保ったままAIツールの実績表を読ませる。この二段構えこそが、この型の仕掛けだと私は見ている。

「無料」から先に、何が待っているか

消費者委員会は、SNSを利用した取引に関する建議の中で、こうした導線を一つの類型として整理している。「無料又は少額な情報商材等を契約させた後、情報商材等の説明をするためなどと称して消費者に事業者からの電話連絡の予約等をさせ、その電話によって高額なサポート契約等を勧誘する事例(以下「二段階型事例」という。)」(SNSを利用して行われる取引における消費者問題に関する建議(消費者委員会))。この整理はもともと電話勧誘の文脈で作られたものだが、「無料の入口でまず信頼を得てから、次の段階へ進める」という骨格そのものは、SNSやウェブ記事を経由する型にも当てはまる構造だと私は見ている。

「AI」を名乗る実績にも、確かめる手段がある

個別銘柄の投資判断について、報酬を受け取って助言する事業は、投資助言・代理業として登録を受ける必要がある。金融庁のガイドブックは、投資判断に関する助言を報酬を受けて行う場合「投資助言・代理業の登録が必要となります」と説明している(投資運用業等 登録手続ガイドブック(金融庁))。判断を下しているのが人間かAIかは、この登録要件を左右する理由にはならない。無料をうたうツールであれば登録が不要な場合もあるが、その先で有料プランへの案内が続くなら、対価性のある勧誘に近づく。金融庁は無登録業者について注意を呼びかけ、警告書を発出した業者の一覧を公表している(「無登録業者との取引は要注意!!」(金融庁))。

迷ったとき用の一言 「この振り返り、前回は何銘柄中の何銘柄が当たったんですか」。全体の母数を尋ねてみてほしい。答えが返ってこない、あるいは値上がり分の話にすり替わるようなら、それも一つの答えだと思う。

数字で見る、この型に注意したい理由

印象だけの話ではないことを、数字でも見ておく。国民生活センターは、SNSをきっかけとして著名人を名乗る、つながりを示すなどして勧誘される金融商品・サービスのトラブルについて「こういった相談が、全国の消費生活センター等に寄せられており、2022年度と比べて約9.6倍と急増しています」と発表している(国民生活センター報道発表(2024年5月))。同資料では「100万円が1億円になったとの体験談が掲載されていたので興味を持ち、メッセージアプリへ登録した」という相談事例も紹介されている。振り返り欄が見せる"当たった実績"も、性質としてはこの体験談の見せ方と地続きだと私は見ている。

  • 「振り返り」欄に、値上がりした銘柄しか載っていないか確認する
  • 前回紹介された銘柄の総数と、その後の結果すべてを自分でも追ってみる
  • 「AI投資ツール」「投資顧問」を名乗るリンク先が、金融庁の登録業者一覧に載っているか確かめる
  • 無料登録の先に、電話相談や有料プランの案内が続いていないか見ておく
  • その場で登録・入力をせず、いったん時間を置いてから確かめる

この記事のまとめ

  • 「前回の振り返り」欄は、値上がりした銘柄だけを選んで見せられる仕組みになっている
  • その信頼を足場に、AI投資ツールなどへの無料登録が続くことがある
  • 確かめるべきは、振り返りの母数と、無料登録の先に何が続くかだ

「当たった話」を見たときほど、外れた話がどこにあるかを一度探してみてほしい。