第372号黒岩検閲済 2026年7月22日 発行(不定期刊/前号:7月21日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|株情報記事×LINE見込み客収集の型

無料の株情報記事の末尾からLINE登録へ。「限定配信」で見込み客リストを作る型を調べた

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黒岩警戒度

個別の銘柄を取り上げる無料の株情報記事を読んでいたら、末尾に見慣れた案内が付いていた。「完全無料」のLINE公式アカウントへの登録案内である。特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、無料の記事からLINE登録へつなぐこの導線を洗ってみた。

どんな入り口なのか

型はだいたい共通している。株価や単元株数といった具体的な数字を添えて銘柄を紹介する記事があり、読み終えたあたりで公式LINEへの案内が置かれる。「ブログやnoteの更新情報」「次に資金が流入しそうな注目テーマ」「相場先読み速報」。登録すれば、こうした情報が届くという触れ込みだ。「登録は完全無料です。明日の相場チャンスを逃さないために」と、急がせる言葉も添えられる。

この形自体は珍しくない。投資に限らず、情報商材と呼ばれる商売のかなりの部分が、この「まず無料で、連絡先を渡してもらう」段階から始まる。

なぜ「無料」から入るのか

消費者委員会は、情報商材をめぐる消費者トラブルの類型として、こう整理している。

「初めから高額契約を勧誘するのではなく、無料又は少額な情報商材等を契約させた後、情報商材等の説明をするためなどと称して消費者に事業者からの電話連絡の予約等をさせ、その電話によって高額なサポート契約等を勧誘する事例」──これを「二段階型事例」と呼んでいる(消費者委員会「SNSを利用して行われる取引における消費者問題に関する建議」令和4年9月2日)。同じ資料では、SNS関連の消費生活相談が2021年に約5万件寄せられ、年齢層も20代を中心に40代・50代まで幅広いという数字も示されている。

つまり、無料の記事とLINE登録という入り口は、それ自体が問題というより、「その先で何が来るか」を測るための最初の一歩に過ぎない。私が見ておきたいのは、登録した後、どんな段階が待っているか、である。

「無料」の位置づけ 無料であること自体は、悪いことではない。問題は、登録した時点では、その先に何が用意されているかが読者から見えないことだ。二段階型事例という言葉が示す通り、無料はあくまで「入口」であって、「答え」ではない。

「今だけ」「限定配信」という言葉について

登録を急がせる言葉の代表が「今だけ」「限定」である。これ自体は、事実であれば直ちに問題にはならない。ただ、事実と違えば話は別だ。特定商取引法は、通信販売の広告について「著しく事実に相違する表示」や「実際のものよりも著しく有利であると人を誤認させるような表示」を禁じている(消費者庁「特定商取引法ガイド 通信販売」)。景品表示法にも同様の考え方があり、取引条件が実際より著しく有利だと誤認させる表示は「有利誤認表示」として規制の対象になる(消費者庁「有利誤認とは」)。

「限定配信」という言葉を見たら、それが本当に限られたものなのか、確かめられる根拠があるかどうか。そこだけは、立ち止まって考えたい。

「相場先読み速報」を配信する行為は何にあたるのか

もう一つ確かめておきたいのが、配信の中身そのものだ。対価を得て、投資判断に関する情報を継続的に提供する行為は、内容によって金融商品取引業(投資助言・代理業)の登録が必要になる場合がある。金融庁は、無登録で金融商品取引業を行う者について「投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず、登録を受けている業者と同等の態勢が整っていない可能性が高い」と注意を促している(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」)。

もちろん、今回のような無料のLINE配信がすべて投資助言業に当たるわけではない。対価性や助言の具体性など、個別の事情で判断が分かれる話だ。ただ、「相場先読み」を名乗る情報を有償・無償問わず受け取る前に、その配信元が登録業者かどうかを確認できる、という事実は知っておいて損はない。

確認の仕方 金融庁のサイトには、登録を受けた金融商品取引業者の一覧と、無登録で勧誘を行っていると確認された業者の一覧が、それぞれ公表されている。名前を検索窓に入れるだけで確認できる。登録の有無は、判断材料の一つとして持っておいてほしい。

LINEへ誘導するという構造そのものについて

ここは慎重に書きたい。警察庁は、SNSのダイレクトメッセージで接触したあと、LINEなど別のSNSへ誘導し、投資グループへ加入させる手口を「SNS型投資詐欺」として注意喚起している。令和7年の暫定値では、認知件数は9,538件、被害額は1,274.7億円にのぼるという(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」)。

誤解のないように言っておくと、無料の株情報記事からLINE公式アカウントへ登録する行為そのものが、この統計に含まれる詐欺と同じだ、という話ではない。多くは合法な情報提供・見込み客獲得の範囲にとどまるだろう。ただ、「SNSの記事から、LINEなど別の場所へ誘導する」という接触の構造自体は、警察庁が注意喚起する手口とも共通する部分がある。登録した先で何が起きるかは、登録した時点では分からない──その一点だけは、覚えておいてほしい。

  • 運営者の会社名・所在地・登録番号が、記事やLINEアカウントのプロフィールに明記されているか
  • 投資に関する助言や相場情報の配信を行っている場合、金融庁の登録業者検索で名前を確認したか
  • 「今だけ」「限定配信」という言葉に、確認できる根拠が示されているか
  • 登録した後、どんな情報がどのくらいの頻度で届くのか、事前に想像してみたか
  • その場で登録せず、いったん持ち帰って調べる。それだけでも判断は変わる

この記事のまとめ

  • 無料の株情報記事からLINE公式アカウントへ誘う導線は、無料・少額から入って高額な契約へ進む「二段階型事例」の入口に位置づけられる型である
  • 「限定」「今だけ」は、それ自体でなく根拠の有無で見方が変わる。相場情報の配信は内容次第で投資助言業の登録が問われる場合がある

で、その先に何が用意されているのか。登録の前に、その一問を自分に投げてから決めても、遅くはない。