第361号黒岩検閲済 2026年7月19日 発行(不定期刊/前号:7月18日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|市況ニュース×複数広告同居の型

相場ニュースの体裁をした記事に、LINE登録・投資顧問ランキング・AIツール・資産形成スクールという性質の違う広告が同時に並ぶ型を、表示規制の一次情報で調べた

公開 最終更新 読了 約6分
黒岩警戒度

今号はこの型を洗った。(黒)特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れで調べた。相場の値動きを伝える記事を読んでいたら、本文の合間に「一般のニュースには載らない情報を無料で配信する」とうたうLINE公式アカウントの登録バナーが、何度も差し込まれていた。さらに読み進めると、投資顧問業者の実績をランキング形式で並べた広告、全自動で売買するというツールの紹介、資産形成を教えるスクールの案内までが、同じ記事の中に次々と現れた。

「相場ニュース」の顔をした記事に、性質の違う広告が同時に並ぶ

記事そのものは、いたって普通のニュースだった。半導体関連株が下げた、円安が重荷になった、という淡々とした市況解説である。

ただ、本文の合間に目をやると様子が変わってくる。「一般のニュースには載らない情報を無料で配信する」というLINE公式アカウントへの登録バナーが、記事の途中に繰り返し現れる。さらにスクロールすると、投資顧問業者の実績をランキング形式で並べた広告、全自動で売買するとうたうツールの紹介、資産形成を教えるスクールの案内までが、同じニュース記事の中に並んでいた。

性質の違う広告が、1本の記事の中に同居している格好である。読んでいる側からすると、どこまでが報道でどこからが広告なのか、境目がかなり分かりにくい。

なぜ1本の記事に、複数の“出口”が用意されているのか

ニュース記事に広告が入ること自体は、珍しくない。ウェブメディアの多くは広告収入で運営されている。

ただ、今回目についたのは、広告の数と種類の多さだった。LINE登録、投資顧問ランキング、自動売買ツール、資産形成スクール——読者がどれか一つに触れれば、それぞれ別の会社への送客が成立する構造になっている。

この記事を運営している側の収入は、相場が当たることからではなく、読者がどれか一つのボタンを押すことから生まれている可能性がある。押されるごとに成果報酬が発生する、いわゆるアフィリエイト広告の仕組みだと考えれば、出口が複数用意されている理由にも説明がつく。で、その利益の出どころは? 読者が期待している「相場で儲かる情報」の出どころではなく、「読者にどれだけ広告を踏ませたか」がこのページの収益源になっている、という可能性を一度疑ってみてほしい。

「AI」「ランキング1位」という言葉の重み

広告のなかでも気になったのが、「AI」「全自動」「ランキング1位」という言葉の使われ方だった。算出の根拠や対象期間が示されないまま、実績だけが強調されている。

金融庁は詐欺的な投資勧誘の典型例として「上場確実ですので、必ず儲かります。元本も保証します」といった断定的な言い回しを挙げ、こうした勧誘への注意を呼びかけている(金融庁「詐欺的な投資勧誘等にご注意ください」)。こうした言い切りを見たら、まず割り算で確かめたい。

この型の核 実際のものより著しく優良であるかのように見せる表示は、景品表示法が定める優良誤認表示に当たりうる(消費者庁「優良誤認とは」)。また、不確実な事項について断定的な判断を示して勧誘する行為は、金融商品取引法第38条2号で禁じられている(金融商品取引法(e-Gov法令検索))。「AI」「ランキング1位」という言葉自体を疑うのではなく、その根拠が示されているかどうかを、まず確かめたい。

数字で見る、SNS発の投資勧誘トラブル

SNSをきっかけにした投資勧誘のトラブルは、統計の上でも増えている。国民生活センターによると、著名人を名乗ったりつながりを示したりして投資を勧誘される相談は、2022年度に170件だったのに対し、2023年度には1,629件に達したという(国民生活センター「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」、2024年5月29日)。170件を1,629件で割ると、約9.6倍という計算になる。

同じ資料は、平均の契約購入金額が約644万円に上るとも報告している。今回取り上げた型は「無料の情報配信」を入口にする点で、この統計が扱う手口と構造が重なる。

同資料には、「ご登録ありがとうございます。アシスタントの〇〇です。これから有益な情報を提供していきます。」という言葉でLINE登録者に接触し、そこから投資話へ進める手口のイメージ図も示されている。無料の窓口が、そのまま次の勧誘の入口になっている、という構図は今回の型とも重なる。

迷ったとき用の一言 「無料で配信します」という言葉を見たら、まず運営者情報を確認してほしい。本当のニュースなら、広告と記事の境目を隠す理由がどこにもない。
  • 記事中の「無料で配信」バナーの運営者表記を確認し、報道記事なのか広告なのかを見分ける
  • 誘導先の投資顧問・助言サービスが、金融庁の登録業者一覧に載っているかを確かめる(金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」。ただし未掲載でも無登録営業に当たる場合があるという留保も同ページにある)
  • 「AI」「ランキング1位」「実績◯◯%」という数字に、算出期間や母数の根拠が示されているかを見る
  • 「今だけ」「あなただけ」と言われたら、その場で登録せず、いったん時間をおいてから記事を読み直す

この記事のまとめ

  • 相場ニュースの体裁をした記事1本に、LINE登録・投資顧問ランキング・AIツール・スクールという性質の違う広告が同時に並ぶことがある
  • 出口が複数用意されている背景には、参照されるごとに収益が発生するアフィリエイト広告の仕組みがあると考えられる
  • SNS・LINE経由の投資勧誘に関する相談は2022年度から2023年度で約9.6倍に増え、平均の契約購入金額は約644万円に上るという

結局のところ、記事の中の「情報」と「広告」を自分の目で見分ける癖をつけるしかない。