無料のSNS/LINE銘柄配信が高利益率の実績を掲げたあと、有料の投資顧問契約と高額な投資教育講座という2つの出口へ枝分かれする型を、金融商品取引法・景品表示法の一次情報で調べた
SNSの投稿やブログ記事をきっかけに、無料の銘柄情報を届けるLINE公式アカウントへ登録した、という声がある。届く配信の中には、AIが銘柄を自動で選ぶという触れ込みのツールが登場し、過去の利益率として「最大◯◯%」といった数字が示される。ここまでは無料だ。だが、その実績を見せられたあとに案内される先は、月額の投資顧問契約か、あるいは数十万円規模の投資教育講座——性質の異なる2つの入口だった、という相談を見かける。今号は、個別の案件名は伏せたうえで、この「無料配信で実績を見せ、投資顧問と投資教育講座という2つの出口へ枝分かれさせる」型を、金融商品取引法・景品表示法・消費者契約法の一次情報で調べた。(黒)
「無料」の実績表示は、誰が確かめたものか
無料配信の中でまず目にするのは、AIツールなどが弾き出したという「利益率」の数字である。だが、実績を示す広告表示には、事業者の側に根拠を示す責任がある。消費者庁は不実証広告規制について「当該表示は、措置命令との関係では不当表示とみなされ(第7条第2項)、課徴金納付命令との関係では不当表示と推定されます(第8条第3項)」と説明している(消費者庁「不実証広告規制」)。つまり、根拠を出せと言われて出せない実績表示は、それだけで不当表示とみなされる仕組みになっている。
景品表示法が定める「優良誤認表示」とは、「事業者が、自己の供給する商品・サービスの取引において、その品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示すもの」を指す(消費者庁「優良誤認とは」)。「利益率最大◯◯%」という数字を見たら、まずその算出条件——いつ、どの銘柄で、何回中何回の結果なのか——が示されているかを確かめてほしい。示されていない数字は、そのまま鵜呑みにする理由にならない。
「投資顧問」への案内は、登録の有無で確かめられる
無料配信の先で持ちかけられる有料の投資顧問契約は、法律上「投資助言・代理業」にあたる。金融庁は「投資家との間で締結した投資顧問契約に基づき、有価証券の価値等や金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に関し助言を行い、かかる投資助言業務に関し報酬の支払を受ける場合」に登録が必要だとしている(金融庁「投資運用業等登録手続ガイドブック」)。個別銘柄の売買タイミングについて、対価を得て助言する行為は、原則としてこの登録の対象になる。
登録の有無は、金融庁のサイトで誰でも検索できる。金融庁自身、「登録を受けていない『無登録業者』は、投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず、登録を受けている業者と同等の態勢が整っていない可能性が高い」と注意を促している(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」)。投資顧問という言葉が出た時点で、まず登録の有無を確認する——これだけで、判断材料はだいぶ増える。
「必ず儲かる」という言い切りは、断定的判断の提供にあたりうる
配信の中で「AIが選ぶから確実」「必ず儲かる」といった言い回しを見た場合、その説明は制度上の論点になりうる。消費者契約法は、「将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること」を、契約取消しの対象となる行為の一つに挙げている(消費者庁「逐条解説 消費者契約法」)。加えて証券取引等監視委員会も、「証券会社やその役職員が、有価証券の価格等が必ず騰貴する、又は必ず下落するといった断定的な判断を示して勧誘することを禁止している」と説明している(証券取引等監視委員会「投資をされる方へ」)。増えるかどうかは本来「不確実な事項」であり、それを言い切ってしまうこと自体が、すでに一つの論点になる。
投資顧問と投資教育講座では、出口によって使える制度が変わる
無料配信の先に用意された2つの出口は、実は法律上の扱いが異なる。有償の投資顧問契約には、独自のクーリング・オフ制度がある。東京都消費生活総合センターは「投資顧問契約はクーリング・オフができます。契約書を受取った日から10日以内に書面または電磁的方法(電子メールの送付等)により通知しなければなりません」と説明している(東京都消費生活総合センター「東京くらしWEB」)。これは特定商取引法とは別に、金融商品取引法が投資顧問契約向けに定めた制度である。
一方、高額な投資教育講座はどうか。特定商取引法上、クーリング・オフや中途解約権が明確に定められているのは「特定継続的役務提供」という枠組みで、消費者庁は「現在、以下の7役務が特定継続的役務として指定されています」として、エステ・美容医療・語学教室・家庭教師・学習塾・パソコン教室・結婚相手紹介サービスの7種を挙げている(消費者庁「特定継続的役務提供」)。投資教育講座はこの7類型に含まれていない。同じクーリング・オフという言葉でも、投資顧問と投資教育講座とでは根拠となる制度が違うという点は、契約前に覚えておいてほしい。もっとも、勧誘の方法(電話勧誘販売など)によっては別のクーリング・オフが使える余地も残るので、契約書面が届いた段階で、どの制度が使えるのか個別に確認するのが確実だ。
- 「投資顧問」という言葉が出たら、金融庁のサイトで登録の有無を確認する
- 「利益率◯◯%」を見せられたら、算出条件(期間・回数・銘柄)が示されているか確認する
- 「必ず」「確実に」という言い切りは、断定的判断の提供にあたらないか一度疑う
- 投資教育講座は契約前に、クーリング・オフや中途解約の可否を書面で確認する
この記事のまとめ
- 無料のLINE銘柄配信が実績を見せたあと、投資顧問契約と投資教育講座という2つの異なる出口へ枝分かれする型がある
- 投資顧問契約には金融商品取引法上の登録制度と、契約書受領日から10日間の独自クーリング・オフがある
- 投資教育講座は特定商取引法の特定継続的役務提供7類型に含まれず、クーリング・オフの扱いが投資顧問とは異なりうる
出口が2つに分かれていても、確かめるべきことは変わらない。登録の有無と、利益の出どころである。