第378号黒岩検閲済 2026年7月23日 発行(不定期刊/前号:7月23日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|相場ニュース偽装×検証不能な利益額表示の型

日経平均を伝える相場ニュース記事の中に、「投資顧問」と「AI投資ツール」が同じ利益額実績を掲げて並ぶ型を、金融庁の一次情報で調べた

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黒岩警戒度

今号も、相場ニュースの体裁をした記事を洗った。日経平均の値動きを解説する、ごく普通の市況記事に見える。ただ、本文の途中と末尾に、名乗りの違う二つのリンクが並んでいた。「投資顧問」を名乗るサービスと、「AI」を冠したツールだ。どちらも、同じ「獲得利益135万4500円」という数字を掲げている。特定のサイト・サービス名は挙げず、案件をまたいで現れる一つの型として、今号はこの数字の並び方を調べた。

相場ニュースという「入口」の選ばれ方

市況記事を読むとき、読者は「怪しい話に注意する」モードではなく、単に今日の値動きを知りたいだけのモードにいる。その、警戒がゆるんだ場所に広告のリンクを置く。記事の体裁そのものが、一種の信用の貸し借りになっていると私は見ている。

本文の途中には「投資顧問ジャーナル」風の名乗り、末尾には「AI投資ツール」風の名乗りが、それぞれ別の看板として置かれている。だが、リンクの先で求められているのはどちらも同じ、LINE登録か会員登録だ。看板の数だけ、判断材料が増えているわけではない。

「投資顧問」を名乗るなら、まず登録の有無

「投資顧問」という肩書きは、誰でも自由に名乗れる言葉ではない。有価証券や金融商品の価値について、報酬を受け取って助言する事業は、投資助言・代理業として内閣総理大臣の登録を受ける必要がある。

投資助言業の登録要件 「国内の投資家(A)との間で締結した投資顧問契約に基づき、有価証券の価値等や金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に関し助言を行い、かかる投資助言業務に関し報酬の支払を受ける場合、投資助言会社(X)は、投資助言・代理業の登録が必要となります。」——金融庁「投資運用業等 登録手続ガイドブック2」(令和7年7月 Ver.4.0)より

私は、この記事内の「投資顧問」というリンク先が登録業者かどうかを、ここで確認したわけではない。ただ、この型を見たときにまずやるべきことは分かっている。名乗りではなく、登録の有無を確かめることだ。無登録のまま金融商品取引業を行っていた業者については、金融庁が警告を重ねて公表してきている。

無登録業者への警告 「無登録で金融商品取引業を行っているとして、金融庁(財務局)が警告書の発出を行った者の名称等を掲載しています。」——金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」より

「AI」がついても、土俵は変わらない

もう一方の「AI投資ツール」についても、同じ考え方があてはまる。判断を下しているのが人間かAIかは、法律上の位置づけを変える理由にはならない。実態として投資判断への助言や運用を行っているなら、同じ登録の枠の中にいる。金融庁自身、AIを謳う手口についてすでに注意を促している。

AI診断を謳う勧誘への注意喚起 「AI診断を謳い文句にウェブサイトへ誘い込み、分析レポートを配信すると偽ってSNSへ誘導し、投資話を持ち掛ける。」——金融庁「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」より

「自動売買ソフトを使えば、なにもしなくても儲かる」という誘い文句についても、金融庁はすでに注意を呼びかけている。

自動売買を謳う勧誘への注意喚起 「『自動売買ソフトを使えば、なにもしなくても儲かる』などと言って、FX・バイナリーオプション・暗号資産等への投資を一方的に勧めてくるケースが以前より発生しています。」——金融庁「『FX取引・暗号資産投資の勧誘』にご注意!!」より

「獲得利益135万4500円」を割り算してみる

で、その利益の出どころは?――今回、一番気になったのはこの数字そのものだった。135万4500円という、いかにも実在の取引明細から切り出したような端数。だが、これだけでは何も分からない。元手がいくらだったのか。何か月分の合計なのか。何人分の実績のうち、最大値だけを抜き出していないか。この3つが空欄のまま、金額だけを見せられている。

仮に元手が10万円ならとんでもない倍率になるし、元手が1億円ならごくわずかな利回りにしかならない。同じ「135万4500円」でも、母数しだいで意味はまったく変わる。具体的な金額の端数は、信頼できそうに見えて、実は何も検証させない数字になりうる。そして、こうした確実らしい言い回しで勧誘すること自体、法令が禁じている行為にあたる。

断定的判断の提供の禁止 「どんな金融商品であっても『必ず○○円まで値上りする』『この取引をすれば○○円儲かる』といった不確かなことを確実であるかのように伝えたり、確実と誤解させるようなことを説明して勧誘することは法令で禁止されています。」——金融庁「"オイシイ投資話"にご注意!!!!」より

SNS発の投資勧誘トラブルは、件数としても増えている

今回調べた型そのものの統計ではないが、SNSや発信者の情報をきっかけにした投資の話が、行政の窓口に持ち込まれる件数として急増している、という大きな流れの中にこの型もあると私は見ている。

SNSきっかけの相談件数 SNSをきっかけとした著名人なりすまし等の金融商品・サービスに関する相談件数:2021年度52件→2022年度170件→2023年度1,629件(前年度比約9.6倍)——国民生活センター「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」(2024年5月29日)より
迷ったとき用の一言 数字を見せられたら、まず母数を聞いてほしい。元手・期間・何人中の何位か。答えが返ってこなければ、それ自体が答えだと思っていい。
  • リンク先が「投資顧問」を名乗るなら、登録の有無を確認したか
  • 「AI」という言葉に、判断の中身についての説明が伴っているか
  • 掲げられた利益額に、元手・期間・母数が添えられているか
  • その利益額を、自分の手で裏づけを取れるか
  • 家族や友人など、利害のない誰かに一度話してみる

この記事のまとめ

  • 相場ニュースの体裁を借りて、「投資顧問」「AIツール」という異なる名乗りが同じ利益額を掲げて並ぶ型がある
  • 「投資顧問」を名乗るには登録が必要で、AIが判断していても同じ枠の中にいる
  • 具体的な金額の端数ほど、母数のない数字は検証できない

相場ニュースの体裁でも、リンクの先は普通の勧誘と同じだ。(黒)