日経平均を伝える相場ニュース記事の中に、「投資顧問」と「AI投資ツール」が同じ利益額実績を掲げて並ぶ型を、金融庁の一次情報で調べた
今号も、相場ニュースの体裁をした記事を洗った。日経平均の値動きを解説する、ごく普通の市況記事に見える。ただ、本文の途中と末尾に、名乗りの違う二つのリンクが並んでいた。「投資顧問」を名乗るサービスと、「AI」を冠したツールだ。どちらも、同じ「獲得利益135万4500円」という数字を掲げている。特定のサイト・サービス名は挙げず、案件をまたいで現れる一つの型として、今号はこの数字の並び方を調べた。
相場ニュースという「入口」の選ばれ方
市況記事を読むとき、読者は「怪しい話に注意する」モードではなく、単に今日の値動きを知りたいだけのモードにいる。その、警戒がゆるんだ場所に広告のリンクを置く。記事の体裁そのものが、一種の信用の貸し借りになっていると私は見ている。
本文の途中には「投資顧問ジャーナル」風の名乗り、末尾には「AI投資ツール」風の名乗りが、それぞれ別の看板として置かれている。だが、リンクの先で求められているのはどちらも同じ、LINE登録か会員登録だ。看板の数だけ、判断材料が増えているわけではない。
「投資顧問」を名乗るなら、まず登録の有無
「投資顧問」という肩書きは、誰でも自由に名乗れる言葉ではない。有価証券や金融商品の価値について、報酬を受け取って助言する事業は、投資助言・代理業として内閣総理大臣の登録を受ける必要がある。
私は、この記事内の「投資顧問」というリンク先が登録業者かどうかを、ここで確認したわけではない。ただ、この型を見たときにまずやるべきことは分かっている。名乗りではなく、登録の有無を確かめることだ。無登録のまま金融商品取引業を行っていた業者については、金融庁が警告を重ねて公表してきている。
「AI」がついても、土俵は変わらない
もう一方の「AI投資ツール」についても、同じ考え方があてはまる。判断を下しているのが人間かAIかは、法律上の位置づけを変える理由にはならない。実態として投資判断への助言や運用を行っているなら、同じ登録の枠の中にいる。金融庁自身、AIを謳う手口についてすでに注意を促している。
「自動売買ソフトを使えば、なにもしなくても儲かる」という誘い文句についても、金融庁はすでに注意を呼びかけている。
「獲得利益135万4500円」を割り算してみる
で、その利益の出どころは?――今回、一番気になったのはこの数字そのものだった。135万4500円という、いかにも実在の取引明細から切り出したような端数。だが、これだけでは何も分からない。元手がいくらだったのか。何か月分の合計なのか。何人分の実績のうち、最大値だけを抜き出していないか。この3つが空欄のまま、金額だけを見せられている。
仮に元手が10万円ならとんでもない倍率になるし、元手が1億円ならごくわずかな利回りにしかならない。同じ「135万4500円」でも、母数しだいで意味はまったく変わる。具体的な金額の端数は、信頼できそうに見えて、実は何も検証させない数字になりうる。そして、こうした確実らしい言い回しで勧誘すること自体、法令が禁じている行為にあたる。
SNS発の投資勧誘トラブルは、件数としても増えている
今回調べた型そのものの統計ではないが、SNSや発信者の情報をきっかけにした投資の話が、行政の窓口に持ち込まれる件数として急増している、という大きな流れの中にこの型もあると私は見ている。
- リンク先が「投資顧問」を名乗るなら、登録の有無を確認したか
- 「AI」という言葉に、判断の中身についての説明が伴っているか
- 掲げられた利益額に、元手・期間・母数が添えられているか
- その利益額を、自分の手で裏づけを取れるか
- 家族や友人など、利害のない誰かに一度話してみる
この記事のまとめ
- 相場ニュースの体裁を借りて、「投資顧問」「AIツール」という異なる名乗りが同じ利益額を掲げて並ぶ型がある
- 「投資顧問」を名乗るには登録が必要で、AIが判断していても同じ枠の中にいる
- 具体的な金額の端数ほど、母数のない数字は検証できない
相場ニュースの体裁でも、リンクの先は普通の勧誘と同じだ。(黒)