銘柄紹介記事に仕込まれた「口コミで高評価」という広告リンクが、具体的な利益額・利益率を掲げる外部サービスへ読者を導く型を、ステルスマーケティング規制の一次情報で調べた
今号も銘柄紹介記事型の勧誘を洗った。特定のサイト名や案件は挙げず、案件をまたいで現れる一つの型として、リンクの作りとお金の流れで調べる。
今回、資料を読みながら引っかかったのは「口コミで高評価」という一文だった。口コミというのは、本来は誰かが実際に使ってみた感想のはずだ。だが、その言葉の先をたどっていくと、感想ではなく広告に行き着く。この一点を軸に、型を追ってみた。
型の流れ ── 銘柄解説記事から広告出口まで
特定の名称は挙げない。案件ごとに紹介される銘柄や会社名は違っても、記事の作りとリンクの並びを抜き出すと、同じ3段階に収まる。
①入口 ── 実在の個別銘柄を挙げる、市況解説のような記事
実在する上場企業の銘柄名を挙げ、業績や材料を解説する体裁の記事が入口になる。ニュースサイトの株式コラムのように見えるため、広告として身構えずに読み進めてしまう。記事の末尾には「本記事は特定の銘柄の売買や投資の勧誘・推奨を行うものではありません」という断り書きが添えられていることも多い。
②誘導 ── 「口コミで高評価」の実体は広告
その断り書きのすぐ近くに、「口コミで高評価!儲かると話題の投資サービスをみる」といった一文がリンク付きで置かれている。だが、たどってみても個々の利用者の感想は出てこない。あるのは、外部の有料サービスへの入り口だけだ。消費者庁は「景品表示法で規制されるのは、広告であって、一般消費者が広告であることを分からないものです」と説明している。令和5年10月から、ステルスマーケティングは景品表示法違反になった。消費者庁「ステルスマーケティング規制」。
③出口 ── 具体的な金額・利益率が、算出根拠なしに並ぶ
誘導先の外部サービスでは、獲得利益の具体額や、数百%規模の利益率が大きく掲げられている。だが、その数字がどの銘柄を、いつ、いくらから運用して出たものかという算出根拠は示されない。
数字で見る規模
この型に近い、SNS・ブログ経由で無料の入口から高額なサービスへ進むトラブルは、副業という別の型でも増加が確認されている。
国民生活センターによれば、「気軽に稼げる」等とうたう副業トラブルの相談件数は、令和2年度の1341件から令和5年度は3694件に増えた。平均契約購入金額も27万9519円から76万3117円まで伸びている。SNSをきっかけとした割合も、令和2年度の23.0%から令和5年度は63.4%まで上がった。国民生活センター「スキマ時間に気軽に稼げる等とうたう副業トラブル」。有料投資サービス単体の統計ではないが、無料の入口からSNS経由で高額契約に進むという型そのものは共通している。
確かめ方 ── 数字と表示を、自分でも検証する
で、その利益の出どころは?――誘導先のページを見ても、この問いに答える記述は出てこない。代わりに、読者自身で確認できる制度がいくつかある。
まず、実際よりも著しく優良だと示す表示は、景品表示法の優良誤認表示にあたる。消費者庁は「実際のものよりも著しく優良であると示すもの」であって「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示」と説明している。事業者に表示の裏付け資料の提出を求める制度もある。消費者庁「優良誤認とは」。
また、将来の利益を断定的に示す勧誘そのものについても、消費者契約法は「将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること」を問題として挙げている。消費者庁「逐条解説 消費者契約法」。「勧誘ではない」という断り書きと、断定的な利益提示が同じ記事の中に同居している場合、その矛盾に一度立ち止まる価値はあると私は思う。金融庁も、SNSやマッチングアプリ経由の投資勧誘全般について注意を出している。金融庁「SNS・マッチングアプリ等で知り合った者や著名人を騙る者からの投資勧誘等にご注意ください!」。
この記事のまとめ
- 実在の銘柄を解説する記事の中に、「口コミで高評価」という広告リンクが仕込まれ、外部の有料サービスへ誘導する型がある
- 誘導先で示される利益額・利益率には、算出根拠が示されないことが多い
- 「勧誘ではない」という断り書きと、断定的な利益提示が同居している場合は、その矛盾に注意したい
その場で登録・入金せず、リンクの先が広告なのか感想なのかを先に確かめてほしい。もし既に有料サービスへ登録・入金してしまった方は、これ以上払わないことを先に。
- 「口コミ」「評判」という言葉のリンク先が、個々の体験談か、それとも広告かを確かめる
- 掲げられている利益額・利益率に、算出根拠(銘柄・期間・元本)が書かれているか確認する
- 「勧誘ではありません」という断り書きと、断定的な利益提示が同じページに同居していないか見る
- 金融庁の登録業者検索・無登録業者一覧で、誘導先の運営者名を照合する
- すでに登録・入金してしまった場合は、取り戻すことより先に、これ以上払わないことを優先する
すでに関わってしまった方は、警察相談専用電話「#9110」が全国共通の窓口になる。警察庁「警察相談専用電話#9110」案内。緊急でない相談はこちらへ、消費生活の相談は消費者ホットライン「188」へ。消費者庁「消費者ホットライン」。
私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。