第376号黒岩検閲済 2026年7月23日 発行(不定期刊/前号:7月23日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|権威付け×海外未登録法人の実物資産投資の型

著書やスクールで信用を積んだ発信者が誘う海外の実物資産投資が、出金の直前に名目を変えて追加送金を求めてくる型を、金融庁・国民生活センターの一次情報で調べた

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黒岩警戒度

特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れで調べた。著書やオンラインスクールで専門家としての信用を積んだ発信者が「王道の投資はもう古い」と説き、海外の実物資産投資へ誘う。出金の場面になると、名目を変えた追加送金を求めてくる。今号はこの型を洗った。(黒)

著書やスクールという“信用の作り方”

この型の入口は、いきなりの勧誘ではない。まず本を出す。YouTubeで発信する。オンラインスクールを開く。

そうやって「教える側」の立場を先に作ってから、投資の話を始める。読者や受講者からすれば、いきなり知らない相手に声をかけられるのとは違い、すでに何度も情報に触れて信用を積んだ相手からの提案に見える。この距離の詰め方自体が、他の勧誘手口と一線を画す。

SNSを起点に、著名人やインフルエンサーの発信をきっかけとした投資勧誘トラブルは、公的な統計でも増加が確認されている。

著名人発信の勧誘トラブルの急増 「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」——国民生活センター「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」より

消費者庁も同時期に同じ傾向を注意喚起している。「著名人・有名人のなりすましと考えられる事例」が増えているという説明だが、なりすましでなくとも、本人の発信という体裁が信用の担保として使われる構図は同じだと私は見ている(消費者庁「SNSなどを通じた投資や副業といった『もうけ話』にご注意ください!」)。肩書きや発信歴の長さは、その先の投資話が健全であることの証明には、そのままはならない。

「王道の投資はもう古い」の先にあるもの

スクールや動画でまず語られるのが、広く定着している堅実な投資手法への否定である。「それはもう古い」「本当に資産を作れる人はやっていない」という言い方で、いったん読者の持っている前提を崩す。そのうえで案内されるのが、海外不動産、貴金属、コレクション性のある現物資産といった、値動きも仕組みも自分では確かめにくい投資先だ。

ここで私が気になるのは、堅実な手法を否定する理由そのものより、「では、その利益の出どころは?」という一次質問に、誰が答えているかである。実物資産の価格が上がる根拠、運用の実態、手数料の構造——そうした説明を欠いたまま「もう古い」という否定だけが先に立つなら、それは検証ではなく、次の一歩を踏み出させるための言葉にすぎない。

海外・未登録という、もう一つの壁

この型でもう一つ共通するのが、実際に資金を預ける先が、海外に拠点を置く法人だという点である。日本の居住者を相手に金融商品取引を業として行う場合、拠点が海外にあっても日本の法律に基づく登録が必要だ、と金融庁は明記している。

海外所在業者にも登録は必要 「海外所在業者であったとしても、日本の居住者のために又は日本の居住者を相手方として金融商品取引を業として行う場合は、金融商品取引業の登録(日本の『金融商品取引法』に基づく登録)が必要です」——金融庁「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」より

登録の有無が、なぜそこまで重要なのか。金融庁は、無登録業者の性質についてこう説明している。「無登録の海外所在業者は、業務の実態等の把握が難しく、仮にトラブルが生じたとしても業者への追及は極めて困難ですので、無登録業者との契約は行わないようにしてください」(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」)。登録は単なる手続きではなく、トラブルになったときに追及できる相手かどうかの分かれ目である。スクールの肩書きや実績の見た目に気を取られて、この一点を確かめないまま資金を送ってしまうと、あとから頼れる先がなくなる。

出金の直前で、名目が変わっていく

入金までは順調に進んでも、出金の段になってつまずく。これがこの型の終着点である。対象とする資産は違っても、出金の直前に名目付きの追加送金を求められるという構造は、国民生活センターに寄せられる相談でも繰り返し確認できる。

名目を付けて追加送金を求める手口 「出金するためには税金や手数料等の支払いが必要などとして振り込みを要求され、請求通り支払っても結局出金できなかった」——国民生活センター「マッチングアプリで知り合った人から勧められた暗号資産の投資サイトに手数料を支払ったが、出金できない」より

この事例で扱われているのは暗号資産の投資サイトであり、今回の実物資産の話とは対象が異なる。それでも「出金の直前に、税金や手数料という名目を付けて追加の送金を要求する」という型そのものは、対象が不動産であれ、貴金属であれ、暗号資産であれ、繰り返し現れている。海外送金にかかる手数料や税金は、本来なら契約や送金の前に説明されているべきものだ。出金の局面になって初めて追加を求められること自体が、私にはすでに答えだと見えている。

迷ったとき用の一言 「もう古い」と言われて崩れるのは、王道の手法が古いからではなく、こちらの前提のほうだ。で、その否定の根拠は、誰がどう説明しているのか。そこを自分に問い直してほしい。
  • 著書・スクールの肩書きや発信歴の長さは、その先の投資話が健全である証明にはならないと考える
  • 「王道の投資はもう古い」と言われたら、その否定の根拠こそ自分で確かめる
  • 資金を預ける法人が、日本の金融商品取引業の登録を受けているか確認する
  • 出金前に「送金手数料」「税金」など名目を変えた追加送金を求められたら、その場で止める
  • 家族や友人など、利害のない誰かに一度話してみる

この記事のまとめ

  • 著書・スクールで信用を積んだあと、堅実な手法を「もう古い」と否定して海外の実物資産投資へ誘う型がある
  • 預け先が海外拠点の未登録業者だと、トラブル時に追及する手だてがそもそも用意されていない
  • 出金の直前で名目を変えた追加送金を求められたら、そこで止めることが先になる

私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。(黒)