SNSで海外資産形成の実績を発信するアカウントが誘う海外不動産投資が、出金の直前に「送金手数料」→「税金」と名目を変えて追加入金を求めてくる型を、金融庁・国民生活センターの一次情報で調べた
今号はこの件を洗いました。SNSで「海外に資産を置いている」「実物資産で資産形成をしている」といった発信を続けるアカウントが、フォロワーとの信頼を積んだうえでLINEなど個別のやり取りへ誘い込み、海外の不動産や希少資産への出資を持ちかける——という型がある。出金の段になると名目を変えながら追加の送金を求めてくる点は、これまでの号で扱ってきた型と同じ構造だ。特定の発信者や案件は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れで見ていく。
SNSでの発信が、まず信頼を作る
この型の入口は、たいてい派手な実績の発信だ。海外在住であること、独自の資産形成論を持っていること、著書やメディア掲載歴があることなどが、フォロワーへの信頼材料として積み上げられていく。こうした発信そのものは違法ではない。ただ、発信の内容が本当かどうかを、フォロワー側が自分で検証する手段はほとんど用意されていない。
信頼が積み上がったところで、SNSの外——LINEなど個別のやり取りへ誘導される。ここから先は公開の場では確認できないやり取りになる、という点も、この型に共通する特徴の一つだと私は見ている。
「実物資産だから安全」という説明の、その先
個別のやり取りで持ちかけられるのが、海外の不動産や希少資産への出資という話だ。「現物の資産だから、金融商品よりも安全」という説明のされ方をすることがある。ただ、実際に何にいくら出資し、その資産が誰の名義でどこにあるのかを、出資者自身が確かめられる形になっているかどうかは、まったく別の話だ。で、その利益の出どころは?——ここは変わらず疑ってほしい一点である。
持ちかけられているのが「不動産そのものを買う」ことではなく、「出資すれば配当や売却益が得られる」という運用スキームであれば、話は変わってくる。金融庁は、集団投資スキーム(ファンド)の持分を自ら募集したり、出資を受けた財産を自ら運用したりする業務を行うには、金融商品取引業の登録が必要だとしている。無登録のまま行われていれば、「投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず、登録を受けている業者と同等の態勢が整っていない可能性が高い」(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」、令和5年6月30日公表・令和6年6月28日更新)状態にある、ということになる。
出金の直前、名目が「送金手数料」から「税金」へ変わっていく
この型で特に見ておきたいのは、出金しようとした段階だ。近い型の相談事例として、国民生活センターにはSNSの投資グループを通じたFX取引のトラブルが報告されている。目標額に達して出金を申し出たところ、「500万円ほどの目標額に達したため出金しようとしたところ、500万円の出金には160万円が必要だと言われ、160万円を送金したが、その後も500万円は出金されなかった」(国民生活センター「SNS上の投資グループで勧誘される詐欺的なFX取引トラブル」、2024年1月24日)という経過が記録されている。
海外への送金という形を取る勧誘では、名目が「海外送金手数料」から始まり、次に「税金」へと変わっていくことがある。金融庁も、SNSやマッチングアプリで知り合った相手や著名人をかたる者からの投資勧誘について、「出金時に高額な手数料や税金の支払いといった名目の口座入金を要求され、入金した直後に連絡が取れなくなることもあります」(金融庁「SNS・マッチングアプリ等で知り合った者や著名人を騙る者からの投資勧誘等にご注意ください!」、令和5年1月6日公表・令和7年4月17日更新)と注意を呼びかけている。名目が何であれ、出金のために先に払う、という順番そのものが崩れていない点は、これまでの号で扱った型と変わらない。
「著名人」という肩書きが果たす役割
この型でもう一つ見ておきたいのが、「著名人・インフルエンサー」という肩書きが果たす役割だ。消費者庁は、SNSをきっかけに「もうけ話」を持ちかけられる相談が寄せられているとし、「中には、著名人・有名人のなりすましと考えられる事例もあります」(消費者庁「SNSなどを通じた投資や副業といった『もうけ話』にご注意ください!」)と注意を呼びかけている。
国民生活センターの集計では、SNSをきっかけに著名人を名乗る相手や、著名人とつながりがあるとする相手から勧誘される金融商品トラブルのPIO-NET相談件数が、2021年度52件、2022年度170件、2023年度1,629件と、この2年ほどで大きく増えている(国民生活センター「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」、2024年5月29日)。肩書きや実績の見た目が立派であるほど、私はかえって「その裏付けは、誰が確認したものか」を確かめたくなる。
- SNSでの発信内容(実績・在住地・経歴)は、出資の判断材料としては未検証のまま扱う
- 「実物資産だから安全」という説明も、出資の仕組み自体が無登録の金融商品取引業に当たらないかを別途確かめる
- 出金のために「送金手数料」「税金」などの名目で追加の送金を求められたら、その場で払わない
- 著名人・有名人を名乗る、または「つながりがある」とする発信ほど、裏付けを自分で確かめる
- すでに払ってしまった場合は、これ以上払わないことを最優先にする
この記事のまとめ
- SNSでの実績発信が信頼を作り、LINEなど個別のやり取りで海外不動産・希少資産への出資へ誘導する型がある
- 出金の直前になると、名目が「送金手数料」から「税金」へと変わりながら追加送金を求められることがある
- 著名人・有名人を名乗る、またはつながりを示唆する勧誘のPIO-NET相談件数は、2021年度52件から2023年度1,629件へ増えている
実物資産を理由にした説明も、著名人という肩書きも、出金の前払いという構造そのものを消してはくれない。まずそこを確かめてほしい。