第370号黒岩検閲済 2026年7月21日 発行(不定期刊/前号:7月21日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|個別面談×資力別価格提示の型

SNSの無料動画セミナーが、個別電話相談で年収を聞き出したあと、相手ごとに金額を変える非公開制のFX自動売買サロン契約へ進める型を、消費者庁・金融庁の一次情報で調べた

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黒岩警戒度

今号はこの件を洗いました。SNSの広告から無料の動画セミナーに誘われ、そのあとの個別電話相談で「稼げるかどうか」ではなく「いくらなら払えるか」を尋ねられた——という相談が、うちにも届いています。仕組み自体は目新しいものではありませんが、料金の決め方に少し引っかかる型があったので、案件は名指しせず、お金の流れで見ていきます。

「無料の動画セミナー」から「個別電話相談」へ——この型の入口

この型の入口は、たいていSNSの広告から始まります。「AIが自動で売買するので、知識がなくても放置で増える」という趣旨の無料の動画セミナーに誘われ、そこで名前と連絡先を残す形です。動画そのものは無料なので、警戒心はさほど働きません。

動画を見終えると、次は「個別相談」という名目の電話がかかってきます。ここで聞かれるのは、運用したい金額だけではありません。年収や貯金額といった、こちらの経済状況そのものです。国民生活センターは、こうした聞き取りのあとに金額が変わる事例を報告しています。「消費者が支払える金額を聞き出し、金額にあわせて価格を減額するケースがあります」(国民生活センター「簡単に高額収入を得られるという副業や投資の儲け話に注意!」、2018年8月2日)とされ、同資料には「今日なら100万円が約40万円と言われ、コンサルティング委託契約書を交わした」という、FXセミナーの個別面談での価格提示の事例も載っています。

同じ内容のはずなのに、金額が人によって違う

この型で気になるのは、提示される契約金額が「商品やサービスの中身」ではなく「相手が払えそうな額」で決まっているように見える点です。最安値は10万円台、最高額は100万円という幅で語られることがあります。中身が同じなら、値段も一つに決まるのが自然なはずですが、非公開制にしておけば、その幅は外からは検証できません。

国民生活センターは、いきなり高額を提示するのではなく「無料や少額の情報商材を販売してから高額契約を勧誘する事例があります」とも述べています(前掲資料、2018年8月2日)。無料の動画→個別相談→非公開の金額提示、という三段構えは、この段階的な誘導の型に沿っていると私は見ています。

「月利25〜30%」を、まず割り算で確かめてみる

広告でよく見る数字が「月利25〜30%」です。月利10%の話は以前の号(article-1)でも触れましたが、ここでも同じように複利で計算してみます。月利25%を12か月複利で回すと、1.25の12乗でおよそ14.6倍。月利30%なら1.3の12乗でおよそ23.3倍になります。元手が1年で14倍にも23倍にもなる運用が本当に存在するなら、他人を勧誘して回る必要はなく、黙って自己資金で運用しているはずだ、と私は思います。

しかも、この利回りを裏付ける取引履歴や運用データは、広告でもセミナーでも公開されません。見せられるのは月次の実績画像だけ、というケースが多いようです。金融庁は、SNS上の投資勧誘について「国内に登録のない海外FX業者をSNS上で紹介している事例」があるとし、「AI診断を謳い文句に誘導され、投資への勧誘が行われる事例」も列挙しています(金融庁「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」)。契約の前に、その業者が金融商品取引業の登録を受けているかどうかを確認できるかどうかは、一つの分かれ目になります(金融庁「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」)。

金額が「人による」と分かった時点で、答えは出ている 同じ内容の契約なのに、提示される金額が相手によって変わる——それ自体が、価格ではなく「払える額」を見て決めている証拠だと私は見ています。その場で契約書にサインしないでください。

「返金保証」の文字を、もう一段めくってみる

この型では「返金保証」をうたっている場合があります。ただし、よく確かめると、保証の対象は「参加費」だけで、実際にFXに投じた投資金そのものは対象外、という限定が付いていることがあります。「返金保証」という言葉だけを見て安心するのは早い、と私は思います。

国民生活センターも、「事業者の『100%元が取れる』『返金保証がある』『儲かるまでサポートする』等の説明は守られない事例がみられる」と注意を促しています(前掲資料、2018年8月2日)。法律上のクーリング・オフ制度は、特定継続的役務提供にあたる契約であれば、書面を受け取った日から8日以内なら解除でき、「法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば…契約…の解除(クーリング・オフ)をすることができます」という枠組みです(消費者庁「特定商取引法ガイド/特定継続的役務提供」)。ただし、これは契約そのものを解除したときに支払済みの代金が戻る、という話であり、契約後にFXの取引で減った投資金までを取り戻す制度ではありません。「返金保証」という一言の中に、この2つがどこまで含まれているのかを、契約前に確かめてほしいと思います。

付け加えると、個別電話相談を経て契約に至るという流れそのものが、特定商取引法上の電話勧誘販売にあたりうる点も見ておきたいところです。同法は電話勧誘販売について「事業者が電話で勧誘し、申込みを受ける取引のこと」と定義しています(消費者庁「特定商取引法ガイド/電話勧誘販売」)。該当するかどうかは個別の契約内容によりますが、電話一本で高額契約に進む流れには、こうした法規制の網がかかりうる、ということは覚えておいて損はありません。

  • 「個別相談」で年収・貯金額を聞かれた時点で、一歩引いて考える
  • 提示された金額が、他の人と同じかどうかを確かめようがない非公開制になっていないか見る
  • 謳われている利回りを、複利で自分の手で計算し直してみる
  • 運用実績が、検証可能な取引履歴として示されているかを確認する
  • 「返金保証」が何を対象にしているのか(参加費だけか、投資金も含むか)を契約前に書面で確認する
迷ったとき用の一言 「同じ話のはずなのに、値段だけ人によって違う」——それに気づいた時点で、もう答えは出ています。(黒)

この記事のまとめ

  • SNS発の無料動画セミナー→個別電話相談→非公開制の金額提示、という三段構えの型がある
  • 相手の年収・貯金額を聞き出し、払える額に応じて契約金額を変える手口は国民生活センターも報告している
  • 「月利25〜30%」を複利で計算すると1年でおよそ14.6〜23.3倍という数字になり、取引履歴の裏付けもない
  • 「返金保証」は参加費のみが対象で、投資金そのものの保証ではないことがある

非公開制の金額提示そのものが、外からは確認のしようがない仕組みだと私は見ています。契約前に、一度持ち帰って確かめてください。