第346号黒岩検閲済 2026年7月15日 発行(不定期刊/前号:7月15日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|格安オンラインサロン×高額サポートプラン契約の型

格安オンラインサロンの入会案内から、無料説明会を経て高額なAI副業サポートプラン契約へ進む型を、消費者庁とオンラインサロン相談事例の一次情報で調べた

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黒岩警戒度

特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れで調べた。LINEで案内が届き、月額2,000円弱のオンラインサロンに誘われる。会費自体は、コーヒー数杯分と言っていい額だ。ただ、そこで終わらない。無料の説明会に参加すると、AIの活用や副業ノウハウをうたう、数十万円から百万円弱の追加講座が案内される。安い入口と、高い出口。この落差がどう作られているかを、一つずつたどってみたい。

月額2,000円弱が、なぜ「入口」になるのか

会費が数千円以下だと、決断のハードルはかなり下がる。「合わなければ辞めればいい」くらいの軽さで入会できてしまう。だが、この軽さこそが仕掛けの半分だと私は見ている。

国民生活センターは、低額のセミナーから高額な勧誘へ進んだ相談事例を公表している。「動画内でWEB会議を使った数千円のセミナーで詳しい話をすると紹介があり申し込んだ。そのセミナーで、オンラインサロン経営についての高額なセミナーの勧誘を受けた」という事例だ(国民生活センター「新たな“もうけ話トラブル”に注意-オンラインサロンで稼ぐ!?-」)。安価な入口の先に、また別の高額な勧誘が置かれている構造は、今回の型とそのまま重なる。

情報商材やオンラインサロン関連の相談自体、件数は膨らんできた。同センターは2018年、情報商材に関する相談が「2017年度の相談件数は6,593件と2013年度に比べ7倍超となり」と報告している(国民生活センター「簡単に高額収入を得られるという副業や投資の儲け話に注意!」)。数千円の入口が珍しい手口ではなく、繰り返し使われてきた型であることが、この数字からもうかがえる。

説明会では、何が「断定」されているか

無料説明会そのものが悪いわけではない。問題は、そこで語られる言葉の中身だ。消費者庁は、簡単な副業をうたい高額なサポートプランを契約させる事業者について注意喚起を出し、「副業によって当該報酬を得ることができるかどうかは、消費者のアフィリエイトの成功報酬に左右される不確実なものでした」としたうえで、これを断定的判断の提供に当たると整理している(消費者庁「簡単な副業をうたい高額なサポートプランを契約させる事業者に関する注意喚起」)。

「AIが自動でやってくれる」「このプランなら誰でも結果が出る」——本来は不確実なはずの話を、確実であるかのように語る。その言い切りが規制の対象になりうるということは、逆に言えば、言い切られた時点でいったん立ち止まる理由になる。

この型の核 安い会費は、警戒心を解くための入口にすぎない。説明会で語られる「確実に稼げる」という言葉こそが、確かめるべき本体だ。

その高額講座、法定のクーリング・オフは効くのか

ここが、この型でいちばん見落とされやすい点だと思う。エステや語学教室のような契約なら、特定継続的役務提供という制度で中途解約が手厚く保護されている。だが、消費者庁の特定商取引法ガイドを見ると、対象となるのは「エステティック・美容医療・語学教室・家庭教師・学習塾・パソコン教室・結婚相手紹介サービス」の7業種に限られる(消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」)。AIの活用や副業ノウハウをうたうオンライン講座は、この7業種のどれにも当てはまらない。つまり、この制度に基づく法定クーリング・オフは、そのままでは使えない場合があるということになる。

それでも残っている、もう一つの扉

ただし、道が完全に閉じているわけではない。消費者庁は訪問販売の一形態として、アポイントメントセールスを説明している。「電話や郵便、SNS等で販売目的を明示せずに消費者を呼び出したり、『あなたは特別に選ばれました』等、他の者に比べて著しく有利な条件で契約できると消費者を誘って営業所等に呼び出したりして契約を締結させる場合」がこれに当たるという(消費者庁 特定商取引法ガイド「訪問販売」)。無料説明会という体裁で呼び出し、その場や直後に高額契約へ進めた場合、この要件に当てはまれば、書面受領日から8日間のクーリング・オフが使える余地がある。契約の経緯がこの形に沿っているかどうか、まず確かめてほしい。

やり取りの記録を、消させようとする動き

もう一つ、確認しておきたい動きがある。先の消費者庁の注意喚起は、勧誘に使われたLINEのやり取りについて「本件事業者から、前記(1)から(3)までで本件事業者が使用してきたLINEアカウントのメッセージ削除を要求されます」と述べている(消費者庁「簡単な副業をうたい高額なサポートプランを契約させる事業者に関する注意喚起」)。やり取りを消させることは、後から第三者に相談・検証させないための動きだと私は見ている。

SNSやLINEでの1対1の勧誘そのものについても、内閣府消費者委員会は「SNSのメッセージにも不意打ち性や密室性等の問題があると考えられ、訪問販売や電話勧誘販売に類似した特徴を有している」と指摘している(内閣府消費者委員会「チャットを利用した勧誘の規制等の在り方に関する消費者委員会意見」)。画面の中の会話だから安全というわけではなく、密室性という点では対面の勧誘と同じ性質を持つ、という評価だ。

対面の説明会そのものにも、似た構造がある。国民生活センターは若者に広がる勧誘の型について、「複数の人に囲まれたり長時間勧誘されて契約しなければならない雰囲気にのまれ、契約してしまうケースが多くみられます」と注意を促している(国民生活センター「友だちから誘われても断れますか?若者に広がる『モノなしマルチ商法』に注意!」)。無料説明会の会場でも、同じ空気が生まれうる。

  • 月額の安さと、その先で提示される追加講座の金額を、切り離して考える
  • 説明会で「確実に稼げる」「誰でも結果が出る」と言い切られたら、その場で契約しない
  • 契約する講座が特定継続的役務提供の7業種に当てはまるか、当てはまらないかを確認する
  • 呼び出されて即日・即時に契約させられた場合は、アポイントメントセールスとしてのクーリング・オフ(8日間)の余地を確認する
  • LINEやメッセージの削除を求められても、やり取りの記録は残しておく
迷ったとき用の一言 「その講座、7業種のどれかに当てはまりますか」。答えに詰まったら、それはそれで一つの答えだと思う。(黒)

この記事のまとめ

  • 数千円の入口は、警戒心を下げるための足がかりにすぎない場合がある
  • 「確実に稼げる」という言い切りは、断定的判断の提供に当たりうる表現
  • AI副業講座は特定継続的役務提供の7業種に該当せず、法定クーリング・オフが自動的には使えない場合がある。ただしアポイントメントセールスに当たれば8日間の解除余地がある
  • やり取りの記録を消させようとする動きは、外部への相談・検証を妨げる型として注意したい

安さは、その先の契約が適正である保証にはならない。7業種への該当有無と、契約の経緯を、まず自分の言葉で確かめてほしい。