無料相談から始まるスキル系副業講座が、解約を申し出ると法外な手数料を課してくる型を、業務提供誘引販売取引の清算ルールで調べた
動画編集などのスキルを教える副業講座が、無料相談から個別相談を経て高額なプランへ進む型は、これまでも何度か洗ってきた。今号はその先を見ておきたい。契約した後、いざ「やめたい」と申し出た人に何が起きるか、という段のほうが、実は見えにくく、重い。(黒)
入口はいつも同じ。無料の登録から、個別相談へ
SNSやYouTubeで発信する人が、まず無料のLINE登録を案内する。特典として小冊子や動画がいくつか配られ、次に「限定シェア会」のような動画セミナーへ招かれる。ここで受講者の収益実績が示され、最後に一対一の個別相談で、初めて具体的な金額が提示される。数万円の入門プランから、100万円を超えるプランまで、いくつかの段が用意されているのは以前も見た型と同じだ。今号で見ておきたいのは、この先——実際に契約したあと、解約を申し出た場面である。
発信者の実在感を、まず確かめる
個別相談に進む前に、私が見ておきたいのは金額よりも先に、相手の実在感だ。連絡先が個人の携帯番号だけで、事業所の電話がない。所在地がバーチャルオフィスで、実際にどこで運営しているか分からない。発信しているチャンネルの登録者数に比べて、動画の再生数が極端に少ない——こうした食い違いは、実績を見せる側の言葉より雄弁だと思う。実在感が薄い相手に、高額な前払いをする理由はない。
解約を申し出ると、何が起きるか
高額なプランでも、「合わなければやめられる」と思って契約する人は多いだろう。ところが、解約を申し出た段になって、契約時には目立たなかった条件が出てくることがある。「解約手数料」として数万円、それに加えて「利用日数に応じた日割り精算」を差し引く、という組み合わせだ。かりに契約金額を100万円・契約期間を12か月とし、日割り単価を単純に「契約金額 ÷ 365日」で計算すると、1日あたり約2,740円になる。ほとんど手をつけないうちに30日で解約を申し出ても、日割り分だけで8万円超、これに解約手数料が加わる。使った実感がほとんどないまま、十万円前後が戻らない計算になりうる、ということだ。
似た型は、副業講座以外にもある
解約を申し出た後に請求が膨らむ運びは、動画編集の講座に限らない。国民生活センターは、副業を持ちかけられた相談者が「返金手数料には15万円必要」と言われて支払ったところ、その後「返金には40万円必要」、さらに「70万円必要」と請求額が段階的に膨らんでいった事例を紹介している(国民生活センター「スキマ時間に気軽に稼げる等とうたう副業トラブル」)。同資料によれば、この種の相談件数は2020年度の1,341件から2023年度には3,694件へと増え、請求された金額の平均も2020年度の279,519円から2023年度は763,117円に膨らんでいる。名目や商材が違っても、「まず少額を払わせ、それを取り戻そうとするとさらに大きな金額を要求する」という骨格は共通している。
法律で決まっている、清算の上限
この手の副業講座の多くは、「仕事を提供するので収入が得られる」という説明を伴う。特定商取引法では、こうした取引を「業務提供誘引販売取引」として扱い、法律で決められた書面を受け取った日から20日以内であれば、書面または電磁的記録による契約の解除(クーリング・オフ)ができると定めている。役務の提供が始まった後に解除する場合でも、事業者が請求できるのは「提供した役務の対価に相当する額」に法定利率の遅延損害金を加えた額までで、これを超える請求は認められない(消費者庁「特定商取引法ガイド/業務提供誘引販売取引」)。同ガイドは、利益が生じることが確実であるかのように誤解させる「断定的判断の提供」による勧誘も、禁止行為として差止請求の対象になるとしている。日割り精算と称する金額が、実際に提供された役務の対価を大きく超えているなら、その超過分は法律上そもそも請求できない金額だ、という理屈になる。もっとも、目の前の契約がこの類型に当たるかどうかは契約の形態によって変わるため、個別の当てはめは消費生活センターに確かめてから動きたい。
- 個別相談に進む前に、連絡先が個人携帯だけ・所在地がバーチャルオフィスでないかを確かめる
- 「解約手数料」「日割り精算」の金額根拠を、契約前に書面で確認する
- 解約時に請求された金額が、実際に受けたサービスの対価を超えていないか計算してみる
- 請求額が段階的に膨らんだら、その時点でそれ以上は払わない
- 契約の類型(業務提供誘引販売取引にあたるか等)とクーリング・オフの可否を、消費生活センターに確かめる
この記事のまとめ
- 無料相談・動画セミナーから高額プランへ進む副業講座は、解約時に「解約手数料+日割り精算」を理由に高額な請求をしてくる型がある
- 請求額が段階的に膨らむ手口は、副業トラブル全般に共通して報告されている
- 業務提供誘引販売取引には20日間のクーリング・オフと、中途解約時の請求上限(役務対価相当額まで)が法律で定められている
で、その利益の出どころは? そして、その解約手数料の根拠は? 両方を確かめてから判を押しても、遅くはない。(黒)