第229号黒岩検閲済 2026年6月25日 発行(不定期刊/前号:6月25日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
詐欺アラート研究所詐欺アラート研究所の角印

FRAUD ALERT LAB ── 投資詐欺・悪質商法 調査報

一面縮刷版・記事一覧 > 副業スクール勧誘の型
調査報告|副業スクール勧誘の型

「無料セミナーから入って、料金は申込後」という副業スクールの型を、お金の流れで調べた

公開 最終更新 読了 約6分
黒岩警戒度

「インスタ運用代行で月30万」「1日1時間で稼げる」。そういうSNS広告から無料セミナーへ案内され、いざ申し込もうとすると、肝心の受講料は申込の後でしか出てこない——そんな副業スクールの相談を、ときどき見かける。今回は特定の業者を名指しせず、案件をまたいで現れるこの“無料で入口を開け、料金は後出しにする”型を、お金の流れと、自分で確かめられることから調べた。先に言っておくと、副業を学ぶこと自体を否定するつもりはない。問題にしたいのは、順序のほうである。

この型の流れ——「無料」から「料金は申込後」まで

観察していると、入口から契約までの段取りはおおむね決まっている。まずSNSの広告で気を引き、メールアドレスを登録させ、そこからLINEの友だち追加へ。無料セミナーや無料相談で「やれそうだ」という気持ちを温め、申し込みの段になって初めて受講料が示される。一つひとつは小さな一歩だが、進むほど断りにくくなる設計になっている。

国民生活センターも、こうした流れを一般的な手口として整理している。「無料・少額のアプリやサービス利用で誘い、高額な契約へ誘導する手口」(国民生活センター「新たな“もうけ話トラブル”に注意−オンラインサロンで稼ぐ!?−」2021年)という記述がそれだ。つまり「無料」は親切ではなく、入口を低くして高額契約まで運ぶための段取りである場合がある、ということになる。

この型に共通する狙い 段階を細かく刻むのは、考える時間と、外に相談する間合いを少しずつ奪うためだと私は見ている。「ここまで来たのだから」と引き返しにくくなったころに金額が出てくる。順序が逆——本来は金額を見てから進むかどうかを決めるはずだ。

数字でほどく——先に出すべきは「料金」のほうではないか

この型の不自然さは、出てくる順番に表れている。「月30万」「1日1時間」といったこちらに都合のいい数字は先に、受講料というこちらが負担する数字は後に。判断に必要な材料の順序が、逆になっている。

見せられる実績も、たいていは自分で裏が取れない。受講生の成功談やスクショは、こちらから検証する手立てがない以上、根拠としては弱いと考えていい。確かめられない数字は、いったん脇に置く。これは投資の勧誘でも副業の勧誘でも同じだ。で、その「月30万」はどこから出てくるのか。広告に並ぶ収益例の出どころが説明されないなら、そこは一度立ち止まる場所だと思う。

副業・スクール契約のトラブルは、実際に増えている

これは印象論ではない。副業に関する相談は、公的な統計でもはっきり増えている。国民生活センターによれば、副業トラブルの相談件数は2020年度末1,341件から2023年度末3,694件へ(国民生活センター「スキマ時間に気軽に稼げる等とうたう副業トラブル!」2024年)と、約2.7倍に増えた。きっかけもSNSが目立つ。同センターは、SNSで見かけた副業に「十分な説明のないまま勧誘されるケースが多発」していると述べている。

若い世代向けにも、同じ趣旨の注意が出ている。国民生活センターは「広告の内容はしっかり確認! 知り合った相手が本当に信用できるか慎重に判断を!」(「【若者向け注意喚起シリーズ<No.6>】SNSをきっかけとした消費者トラブル」2021年)と呼びかける。入口がSNSで、説明が後回し——という構図に、公的機関も繰り返し注意を向けている。

契約前に、自分の手で確かめられること

難しい目利きは要らない。専門でない人でも、その場でできる確認がいくつかある。まず、運営している会社が実在し、いつからあるのかを見る。国税庁の法人番号公表サイトでは、法人の商号・本店所在地・法人番号を誰でも検索できる。設立して間もない会社かどうか、住所が実体のある場所かどうかは、ここで一次的に確かめられる。

迷ったとき用の一言 「料金を先に教えてください」と聞いて渋られたら、それ自体が一つの答えだと思う。健全な講座なら、受講料を先に示すことを嫌がる理由がない。金額を見てから決める——順序を、こちらが取り戻したい。
  • 受講料の総額(分割なら回数×月額の合計)を、申し込む前に文書で出してもらう
  • 運営会社の名称・所在地・設立時期を法人番号公表サイトで確かめる
  • 「月30万」などの収益例は、自分で裏が取れるかどうかを基準にする
  • 解約・返金の条件を、契約書面の文言で確認する(口頭の説明だけで信じない)
  • その場で決めず、利害のない誰かに一度話してから返事をする

もし契約してしまっても——解約できる場合がある

すでに申し込んでしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つ。追加の支払いを求められても、いったん止めて確認するのが先だ。そのうえで、契約の種類によっては、法律でクーリング・オフや中途解約が認められる場合がある。

たとえば学習や役務の提供を継続して受ける契約(特定継続的役務提供)なら、消費者庁の特定商取引法ガイドは「書面を受け取った日から数えて8日以内であれば…契約の解除(クーリング・オフ)をすることができます」とし、期間経過後も「将来に向かって…中途解約することができます」と説明している。副業・仕事のあっせんを伴う形(業務提供誘引販売取引)なら、クーリング・オフ期間は20日以内とされる。どの類型に当たるかは契約の中身しだいなので、ここは決めつけない。

順序としては、こうなる。①追加で払わない ②契約書面・やり取りの記録を残す ③決済した会社(クレジット会社など)に連絡する ④消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談する。私には個別の解決はできない。最終的な判断は、正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。

この記事のまとめ

  • 「無料セミナー→料金は申込後」は、判断材料の順序が逆になっている型
  • 副業の相談は2020年度末1,341件→2023年度末3,694件と増加(国民生活センター)
  • 契約前に「総額・運営会社の実在・解約条件」を自分の手で確かめる

結局のところ、金額を見てから決める・自分で確かめる・第三者に話す。この3つに尽きる。もう契約していても、まず追加で払わない、が先だ。