動画編集の"無料共有会"から、段階的に100万円超のプランへ進む副業スクール契約の型を、相談統計と解約規定で調べた
動画編集を教えるYouTube発信者の案内から、LINE登録・無料の「ノウハウ共有会」を経て、契約金額が段階的に釣り上がっていく副業スクールを見かける。特定の発信者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、その値付けの上げ方とお金の流れを調べておきたい。
入口は数万円に満たない価格。出口は100万円を超える。この差がどこで生まれるのかを、今号は追う。
型を、値付けの上げ方で分解する
入口:呼び方は「相談」ではなく「共有会」
広告やDMの多くは、いきなり商品を売らない。まず無料の「ノウハウ共有会」「勉強会」への参加を促す。相談ではなく共有会という言葉を選ぶのは、たぶん偶然ではない。参加者は「売り込まれる場」ではなく「学びに行く場」だと思って足を運ぶ。警戒心がゆるんだ状態で、次の段階へ進む土台ができる。
中間:見せられる実績と、その裏の取り方
共有会の場では、収益のスクリーンショットや成功談が示されることが多い。ただ、画面に映る数字は、映す側が選んで見せられる数字でもある。こちらから裏を取るすべはない。見せられた実績は、自分の手で確かめられるかどうかを基準にしたい。
出口:数万円から、100万円を超える価格帯まで
共有会の終盤、あるいは後日の個別案内で、初めて具体的な金額が出る。価格帯は一つではなく、数万円に届かない入門コースから、100万円を超える上位コースまで、複数の段に分かれているのが目立つ運びだ。安いコースから話が始まるので、「まずはここから」と受け入れやすい。だが、その先に、より高い段が控えている。
数字でほどく:回収に必要な本数
かりに上位コースの金額を50万円、動画編集の受注単価を1本5,000円とすると、回収には100本以上の受注が要る計算になる。1件を受注するにも営業や実績づくりの手間がかかることを踏まえれば、始めたばかりの人がこの本数を安定して受け続けられるかどうかは、契約前に一度、自分の手で割り算しておきたい数字だ。「稼げる」という言葉の裏に、この割り算があるかどうかを見ておいてほしい。
一次情報で確かめる:相談件数と解約の壁
国民生活センターによれば、副業・情報商材に関する「2017年度の相談件数は6,593件と2013年度に比べ7倍超となり、2018年度も増加ペースが続いています」という。同資料が示す契約購入金額の分布では、「50万円未満」が最も多い層になっている。今回の型で見た価格帯の下限は、まさにこの層に重なる。
似た型は動画編集に限らない。国民生活センターが2021年に公表した資料には、WEBデザインを学べるオンラインスクールで契約金額約100万円、消費生活金融からの借入までさせられた事例が載っている。無料の入口から始まり、スキル系のスクール契約が高額化し、支払い手段まで踏み込んでくる運びは、業種が違っても同じ型に見える。
価格の見せ方についても、消費者庁は簡単な副業をうたう事業者について「このプランなら月50万が当たり前になります」などと持ちかけ、高額なサポートプランを契約させていたと注意喚起している。数字の大きさそのものよりも、その数字がどの段階でどう出てくるかを、私は見るようにしている。
「動画編集」は、中途解約権の対象になるとは限らない
高額な契約でも、後からやめられるはずだと思いたくなる。ただ、特定商取引法の特定継続的役務提供にもとづく中途解約権は、エステ・美容医療・語学教室・家庭教師・学習塾・パソコン教室・結婚相手紹介サービスなど、政令で指定された役務に限られる。動画編集や副業コンサルの契約は、この指定に含まれていない場合が多いと見ておいたほうがいい。該当するかどうかは契約の形態によって変わるため、断定はできない。特定商取引に関する法律には、電話勧誘販売などにあたる契約であれば書面受領後8日以内のクーリング・オフが定められている条文もある。自分の契約がどの類型にあたるのか、消費生活センターに確かめてから動きたい。
- 「共有会」「勉強会」という名前でも、その先に価格の話が出る前提だと踏まえておく
- 見せられた収益画像・実績は、自分の手で確かめられるかどうかを基準にする
- 「まずは低価格のプランから」と言われたら、その先により高い段が控えていないか確認する
- 回収に必要な作業量・受注件数を、自分で割り算してから判断する
- 契約前に、中途解約・返金の条件を書面でもらい、家族や消費生活センターに見せてから決める
この記事のまとめ
- 副業スクールの型は「無料共有会 → 実績提示 → 段階的な高額プラン」の順で信頼を積み上げてから金額を見せることが多い
- 副業・情報商材の相談は増加傾向にあり、契約購入金額は50万円未満の層が最も多い
- 動画編集やコンサル契約は特定継続的役務提供の対象外であることが多く、中途解約権を安易に期待しないほうがいい
うまい話は、まず数字でほどく。契約書に判を押す前に、一晩置いて、利害のない誰かに見せてほしい。(黒)