無料で配布される自動売買システムの月次実績画像から、LINE個別相談を経て出金手数料の要求へ進む型を、金融庁と国民生活センターの一次情報で調べた
特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れで調べた。個人のブログ形式で、FXの自動売買システム、いわゆるEAを「無料で配布します」と発信しているものをいくつか見比べていた。ツールそのものに料金はかからない。月ごとの運用実績らしき画像も、たしかに並んでいる。ただ、その画像には具体的な金額が書かれていないことが多い。見せているようで、見せていない。そこが気になった。
「無料」の入り口は、個別のやり取りへ進むための扉
自動売買システムを無料で配ること自体は、珍しい話ではない。問題は、その先に何を置くかだ。この型の発信は、たいてい「相談はこちら」「URLを送るだけでOK」というLINEへの導線を、記事の複数箇所に置いている。無料の入り口は、個別のやり取りへ進むための扉として機能している、というのが私の見方だ。
国民生活センターには、知人から「FX自動売買システムを買えば何もしなくてももうかる」と勧められ、借入まで勧められた相談が寄せられている。同センターは「借金をしてまで投資等のためにお金を支払うことはやめましょう」と呼びかけている(国民生活センター「『何もしなくてももうかる』とFX自動売買システムの購入を勧められた」)。無料であっても有料であっても、自動売買という仕組みそのものが利益を保証するわけではないという点は変わらない。
月ごとの実績画像に、金額が書かれていないのはなぜか
気になったのは、実績の見せ方だ。数か月分、月ごとのスクリーンショットらしき画像が並ぶ。ただ、そこに書かれているのは口座の推移らしき絵だけで、「何円増えた」という数字そのものは本文に明記されない。見た人の印象には残るが、あとから確かめようとすると、何を根拠に照合すればいいのか分からない。
消費者庁は、実際のものより著しく優良だと示す表示を優良誤認表示として景品表示法の規制対象に挙げ、事業者が表示の裏付けとなる合理的な根拠資料を提出できない場合、「当該表示は、措置命令との関係では不当表示とみなされ」ると説明している(消費者庁「不実証広告規制」)。画像による実績の提示も、同じ理屈の範囲にある話だと思う。数字を明記しない見せ方は、結果として根拠を求められにくくする効果も併せ持っている。
「投資助言ではない」という言葉が、どこまで通用するか
LINEでの個別相談について、この型の発信者は「投資助言ではなく、公開情報ベースのチェックです」と説明することがある。ここは境界の話になる。
金融庁のガイドブックは、投資助言・代理業の登録が必要になるのは「投資家との間で投資顧問契約を締結し、有価証券の価値分析に基づく投資判断について助言を行う場合」であり、登録が不要となりうるのは「助言の内容がマーケット等に係る一般的な情報提供にとどまる場合や、投資助言業務に対する実質的な報酬も支払われないなどの場合」だとしている(金融庁「投資運用業等 登録手続ガイドブック2」)。つまり、個別の口座を見て具体的な判断に踏み込めば投資助言に近づき、そこに対価が発生すれば登録の要否が問われる。「公開情報ベース」という言葉だけで、この境界の外にいられるとは限らない。
LINEでの個別接触、その先で起きていること
警察庁は、SNSのダイレクトメッセージで接触したあとLINEなど他のSNSへ誘導し、「『株や暗号資産に投資すれば利益が得られる』などと言葉巧みに被害者を信用させ」、最終的に「投資金」や「手数料」などの名目で金銭を振り込ませる手口を「SNS型投資詐欺」として説明している(警察庁「SNS型投資詐欺」)。国民生活センターにも、LINEグループで運用実績を聞かされてFX取引を始め、出金の段になって「税金が必要」などと追加送金を求められた相談が寄せられている(国民生活センター「SNS上の投資グループで勧誘される詐欺的なFX取引トラブル」)。
無料ツールの配布そのものが、この手口に当たると決めつけるつもりはない。ただ、無料の入り口からLINEでの個別接触に進むという導線の形は、この種の相談で繰り返し語られている構図と重なる。では、その個別相談は、誰の利益のために開かれているのか。国民生活センターの集計では、SNSをきっかけとする金融商品・サービスの消費者トラブルの相談件数は、2022年度170件から2023年度1,629件へと急増している(国民生活センター「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」)。この数字はEA配布に限った集計ではないが、SNS発の個別接触型トラブル全体が広がっていることを示す一つの目安にはなる。
出金の段になって、初めて分かること
金融庁は、無登録で金融商品取引業を行う者について、「投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず……登録を受けている業者と同等の態勢が整っていない可能性が高い」と説明し、実際に起こりうる事態として「出金の拒否や法外な出金手数料を請求されたりする」ことを挙げている(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」)。同庁は、無登録で警告書が出された業者の名称を一覧で公表してもいる(金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」)。相手の名前が挙がった時点で、この一覧に照らして確かめるだけの手間はかけてほしい。
- 実績画像は、金額まで書かれているか。書かれていないなら、何を根拠に判断すればいいのか自分に問う
- 「投資助言ではない」という説明を、対価の有無・個別具体性の有無で確かめる
- LINEでの個別相談は、その場で決めず、いったん持ち帰って調べる
- 出金の話が出たら、相手の名称を金融庁の登録業者情報・無登録業者一覧で確かめる
- 「税金」「手数料」名目の追加送金は、正規の取引ではまず求められないと知っておく
この記事のまとめ
- 無料の自動売買システム配布は、その先の個別相談・出金までの入り口の一つにすぎない
- 金額を伴わない実績画像は、消費者庁の不実証広告規制の観点から根拠を確かめたい対象になる
- 「投資助言ではない」という説明は、対価と個別具体性の有無で境界が変わる
- 出金時の追加請求は、金融庁・国民生活センターが繰り返し注意を促している型と重なる
無料であることは、その先の適正さを保証しない。数字を見せてもらえるか、まずそこだけ確かめてほしい。