X・Instagram・Threadsで発信を続けるアカウントが、海外の有名銀行の名をかたってLINEへ誘い、出金の直前で条件を追加してくる勧誘の型を、警察庁・金融庁の一次情報で調べた
今号はこの件を洗った。特定の事業者・特定のブランドは名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として見ていく。X・Instagram・Threadsで華やかな投稿を続けるアカウントが、海外の有名な銀行を思わせる名前を掲げ、コメント欄やDMで親身に相談に乗ってからLINEへ案内する。そこまでは、よくある構図だ。この型が厄介なのは、その先にある。入金した当初は普通に出金できるのに、まとまった額を動かそうとした途端、条件が増えていく。その仕組みを順に見ていきたい。(黒)
SNS上の“発信”が、まず信用の土台になる
いきなり投資の話はしない。まず日々の投稿で、生活ぶりや実績らしきものを見せて親近感を作る。ここで使われる小道具の一つが、実在の有名企業を連想させる名前だ。金融庁は「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」(金融庁)の中で、「誘導された先のアカウント名に「◯◯証券」、「◯◯運用会社」や「◯◯投資クラブ」といった名称のほか著名人の名称や画像が使われている」と指摘している。実在の金融機関そのものではなく、それを連想させる名前や肩書きを借りる。この“借り物”の信用こそが、最初の関門を通り抜けるための道具になっている。
X・Instagram・Threadsから、LINEという“関所”へ
投稿を眺めているだけでは、お金のやり取りまでは進まない。次の段階として使われるのが、個別のやり取りへの誘導だ。同じ金融庁の資料は「投資関連の投稿をフォローするとDMが届き、最終的にクローズドチャットへ誘導される」と説明する。警察庁のSOS47特殊詐欺対策ページ「SNS型投資詐欺」(警察庁)も、「SNSのダイレクトメッセージで接触後、被害者をLINEなどの他のSNSに誘導し」と記している。SNSは入口、LINEは本番。この役割分担は、公的機関の注意喚起にもはっきり表れている。
出金の直前で、条件が増える
この型の核心は、出金の場面にある。金融庁の資料は、「最初のうちは出金できるが、まとまった金額を出金しようとすると理由をつけて断られ、その後出金できなくなる」と説明する。少額のうちは通してみせて信用を積み、大きく動かそうとした瞬間に条件を足してくる。タイミングを計った拒否、と言っていいだろう。
そもそも、無登録の相手ではないか
SNSで見かけた相手が、日本で正規に金融商品を扱う資格を持っているとは限らない。金融庁は「無登録業者との取引は要注意!!~無登録業者との取引は高リスク~」(金融庁)で、「日本で登録を受けずに金融商品取引業や暗号資産交換業を行うことは違法です」と明記している。有名な銀行の名前を借りていること自体が、むしろ逆のサインだと私は見ている。本物の金融機関が、SNSのDMやLINEだけで個人に直接営業をかけてくることは、まずない。
数字で見る、急増ぶり
この型がどれだけ広がっているか、数字で押さえておきたい。警察庁が2026年5月に公表した「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(警察庁)によれば、2025年のSNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数は9,523件、被害額は1,288.0億円。前年からそれぞれ+48.5%、+47.9%の増加だという。国民生活センターの資料でも、著名人になりすました勧誘に関する相談は「2022年度と比べて約9.6倍と急増しています」と報告されている。件数も金額も、右肩上がりのまま止まっていない。
- SNSの発信内容と、実際にお金を扱う相手が同一人物・同一法人だと確かめられるか
- 名乗っている金融機関・証券会社の名前で、金融庁の登録業者一覧を自分で検索したか
- LINEへの案内は、その場で即決を求めていないか
- 「まず少額で試す」段階を過ぎても、いつでも全額を出金できると自分の目で確認したか
この記事のまとめ
- SNSでの発信と著名な金融機関名は、信用を借りるための“外装”にすぎない
- 出金は最初のうちだけ通り、まとまった額を動かそうとすると条件が増える型がある
- 2025年のSNS型投資・ロマンス詐欺は認知件数・被害額とも前年比+47〜48%で急増中
「いったん持ち帰って調べます」を、LINEに移る前にこそ使ってほしい。急いで返事をする理由は、こちら側にはない。