「会社概要はあるのに、仕事の中身だけが最後まで分からない」副業勧誘の型を、特定商取引法・消費者庁の一次情報で調べた
副業の広告や求人票を眺めていると、運営会社の名前・住所・電話番号までは律儀に書いてあるのに、肝心の「何をする仕事なのか」だけがどこにも書かれていない、という案件にときどき出くわす。話の続きを聞くには、まずLINEに登録してほしいという。今号はこの型を洗った。仕事の中身より先に、まず何を差し出させているのか——そこから見ていきたい。
会社概要はある。仕事の中身だけがない
特定商取引法は、通信販売などを行う事業者に、社名・住所・電話番号といった表示を義務づけている。今回洗った型の広告ページにも、その欄はきちんと埋まっている。だから一見、まともな事業者の体裁が整って見える。
ただ、表示義務がある項目と、読者が本当に知りたい項目は別だ。「何をする仕事で、何にいくらかかるのか」——ここだけが、会社概要のどこにも書かれていない。消費者庁「業務提供誘引販売取引」の解説は、この手の取引を「『仕事を提供するので収入が得られる』という口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引」と説明している。仕事の中身より先に期待だけを見せる、という順番そのものが、法律が名前をつけて警戒している型に近い。
LINE登録という関所
広告から先に進もうとすると、たいていLINEの友だち追加を求められる。ここを通らないと、仕事の詳細どころか料金の話にもたどり着けない。つまりLINE登録は、情報を受け取るための入口ではなく、相手が次の勧誘をかけるための連絡先を確保する関所になっている。
登録した時点では、まだ何も知らされていない。それでも「相談してみるだけ」のつもりで進んでしまう人は多い。国民生活センターの発表によれば、副業に関する相談のうちSNSがきっかけとなった割合は2020年度の23.0%から2023年度には63.4%まで増え、平均の契約購入金額も2020年度の27万9,519円から2023年度は76万3,117円まで上がっている。窓口がSNSやLINEに移るほど、後から出てくる請求額も大きくなっている、という数字だ。
「詳しくは個別サポートで」から始まる金額
LINE登録のあと、個別の面談やメッセージのやり取りに移る。ここで初めて「実は稼ぐには個別サポートが必要」という話が出て、数万円から、案件によっては数十万円規模のサポート費用・教材費が段階的に提示される。消費者庁が公表した同種の注意喚起でも、「当社が案内する副業はアフィリエイトである、この副業をサポートする」などと勧誘されたのち高額なサポートプランを契約したが報酬が得られなかった、という相談が各地の消費生活センターに数多く寄せられていると報告されている。最初の広告には、この金額はどこにも書かれていない。
で、その利益の出どころは?――サポート料を払った先に約束されている収入は、誰が、何によって生み出しているのか。広告にも、LINEでの説明にも、そこへの答えはない。答えのない期待に、後から金額だけが積み上がっていく。
巻き込まれないための、ゆるい行動ルール
会社概要が書いてあること自体は、悪いことではない。問題は、仕事内容と料金がそこに並んでいないときだ。私は、この3つが揃って初めて検討の土台に乗る、という順番で見るようにしている。
- 仕事内容と料金の両方が、LINE登録より前に文章で示されているかを確かめる
- 「詳しくは個別で」と言われたら、その場で答えず、いったん持ち帰って調べます、と伝える
- 提示された金額を、家族や友人など利害のない誰かに話してみる
- 業務提供誘引販売取引にあたる契約は、概要書面・契約書面を受け取った日から20日間、書面によるクーリング・オフができる。契約してしまっても、まずこの期間を確認する
この記事のまとめ
- 会社概要は書いてあっても、仕事内容と料金が書かれていない副業広告は、まず立ち止まる
- LINE登録は情報を受け取る入口ではなく、次の勧誘への関所になっていることがある
- 業務提供誘引販売取引に当たれば、契約後でも20日間はクーリング・オフができる
仕事内容と料金を、契約前に文章で確認する。それだけで、後から積み上がる金額をだいぶ防げる。