第363号黒岩検閲済 2026年7月20日 発行(不定期刊/前号:7月19日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|物販FC勧誘の型

物販フランチャイズの「無料相談→即決」と広告数字の乖離を、一次情報で調べた

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黒岩警戒度

「加盟金は百五十万円台、月々のロイヤリティは数万円」——物販フランチャイズの勧誘は、まず「無料相談」というかたちで始まることが多い。SNS広告からフォームに申し込むと、その日のうちに面談の場が組まれる。相談自体は無料でも、面談の先には金額の話が待っている。今号はこの流れを、特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れと公的データで調べた。

広告で見せられる利益の目安と、契約後に案内される数字が、同じ言葉のはずなのに大きく違って見える——そういう相談の型がある。この落差を、お金の流れで分解しておきたい。

なぜ入口を「無料相談」で軽くするのか

物販フランチャイズの勧誘は、たいてい「無料相談」という軽い言葉から始まる。仕入れも在庫も要らない、まずは話を聞くだけでいい、費用は一切かからない——そう案内されて、面談の予約に応じる。ここまでは確かに一円も動かない。

商売である以上、どこかで誰かが人件費や資料の費用を払っている。無料で相談に乗って成り立つ商売があるなら、その原資は別の場所から出ているはずだ。では、その相談の原資は、最終的に誰の懐から出ることになっているのか。答えはこの節では置かず、先の分解で確かめたい。

入口が軽いほど、次の段階への移動もまた軽くなる。無料相談から本部説明会、契約の打診まで、話は一度も途切れずに進んでいくことが多い。

私見だが、「フランチャイズ」という言葉には、本部の積んできたノウハウを分けてもらえる、という安心感がある。だが、その安心感と、面談一回で契約書に判を押させようとする急かし方は、私には釣り合って見えない。ノウハウの値打ちを一度で見極められる人は、そう多くない。

個別の案件名は伏せる。だが、この型を、お金の流れで分解していく。

型を、お金の流れで分解する

寄せられた話を並べると、流れはおおむね同じ順序をたどる。順を追って見ていく。

入口:SNS広告から「無料相談」への一歩

最初の接点は、SNS広告であることが多い。動画や画像の広告から専用フォームに進み、名前と連絡先を入れると、無料相談への申込みが完了する。ここまでは一円もかからない。

申し込んだその日か、遅くとも数日以内には、面談の日程が組まれる。手元にあるのはまだ広告で見た数字だけなのに、次の場がすでに用意されている、という順番になっている。

物販副業の勧誘には、近い型がすでにある。無料の動画から入り、価格も社名も伏せたまま実績数字だけを掲げる別の型を、私は以前にも調べている。

面談:その場で条件を出し切り、即決を迫る

面談は、その日のうちに一気に進む。仕入れ・撮影・発送まで代行するという「楽さ」がひとしきり説明され、契約の条件が畳みかけるように出そろう。そして、その場での返事を求められる。

この面談の型そのものについて、「簡単な副業をうたい高額なサポートプランを契約させる事業者に関する注意喚起」(消費者庁・2025年6月26日)という公表がある。これは今回扱っている型とは別の事業者を対象にした注意喚起であり、同一の主体を指すものではない。

ただし、そこで指摘されている順序には重なりがある。LINEでの個別誘導から電話でのクロージングに進み、将来の利益を言い切る「断定的判断の提供」——将来のもうけが不確かなのに、確実であるかのように言い切ること——が行われる、という順序だ。型が違っても、順序は似る。

請求:加盟金150万円台と月額ロイヤリティ数万円

面談の終盤、あるいは契約直前になって、初めて具体的な金額が示される。相談で聞く限りでは、加盟金は150万円台、そのほかに月額ロイヤリティとして数万円が継続してかかる、という構成が目立つ。

特定商取引法には、事業者が「仕事を提供する」と持ちかけ、その仕事に必要だとして金銭を負担させる取引を規律する区分がある。業務提供誘引販売取引と呼ぶ。「業務提供誘引販売取引」(消費者庁・特定商取引法ガイド)によれば、この区分に当てはまる取引では、勧誘時に事実と違うことを告げたり、解除を妨げるために威迫したりする行為が禁止されている。また、契約書面を受け取ってから20日間はクーリング・オフ——契約を白紙に戻せる仕組み——を使える、とされている。

ただし、これは一般論だ。加盟金や月額の金額だけを見て、この型の契約が業務提供誘引販売取引に確定的に該当すると決めつけることはできない。あくまで、当てはまり得る取引形態の一つとして押さえておきたい。

提示:広告の「月利300万円」が、契約後は「月利MAX30万円」に変わる

広告の段階で見せられる数字と、契約前の面談で案内される数字は、同じ言葉を使っていても中身が違うことがある。SNS広告では「月利300万円」という額が踊っていたのに、面談まで進むと「月利は最大30万円です」という言い方に変わる、という相談を私は聞いている。

「最大」「MAX」という言葉は、そこまで届いた人がいるという意味であって、誰もが届く数字だという意味ではない。広告の数字も契約時の数字も、私の側では実際に確かめられていない。この落差については、次の章で割り算にかけて確かめたい。

「無料相談」と即決の順番 この型の核は、無料相談で判断のハードルを下げ、面談というその場限りの場で条件を出し切り、答えを急がせることだ。「先に無料、後から高額な即決」という順番になっている勧誘は、それ自体を一度疑っていい。

「月利300万円」と「月利MAX30万円」を数字でほどく

広告で見た数字は「月利300万円」。契約後に示される上限は「月利MAX30万円」。300万円÷30万円は10——広告の期待値は、契約後に示される上限の、実に10倍にあたる数字だったことになる。

次に、初期費用を見る。加盟金は150万円台、初月のロイヤリティは数万円という幅で語られることが多く、合計するとおおよそ155万円前後になる。仮に、月利がMAXの30万円を毎月出し続けられたとすると、155万円÷30万円≒5.2か月で、単純計算上は回収できる計算になる。

ただし、これは「MAXが毎月続いた場合」の数字にすぎない。ロイヤリティは、稼げた月も稼げなかった月も、固定でかかる。仮にMAXの半分程度——月15万円前後にとどまる月が続いたとすると、そこからロイヤリティ分を差し引いた手取りはさらに目減りする。単純計算でも、1年以内の回収は難しくなる——これは編集部が一般的な条件を置いて試算した数字であり、特定の企業の主張を転記したものではない。

「MAX」という言葉は、上限であって、毎月保証された平均値ではない。月によっては、それに届かない月もある——という含みをあらかじめ持つ言葉だ。この一語の意味を、契約の場でどこまで説明されたか。私はそこを確かめたい。

なお、実際より著しく有利だと誤認させる表示は、景品表示法上の考え方としても問題になりうる。「有利誤認とは」(消費者庁)は、同法第5条第2号にもとづき、取引条件について実際のものより著しく有利だと一般消費者に誤認させる表示を、規制の対象としている。ただし、これは一般的な考え方の紹介にすぎない。将来の収益見込みを誇大に示す表示への直接適用の実例は、今回確認できていない。

「MAX」という言葉の出どころ 「MAX」は上限であって、平均ではない。広告の「月利300万円」と、契約後に示される上限「月利30万円」の間には、10倍の落差がある。言い切る数字ほど、その言葉が「平均」なのか「上限」なのかを、私は確かめたい。

本部にとっての「月利300万円」は、加盟者が実際に稼いだ金額なのか。それとも、加盟金とロイヤリティという、加盟者の成果に関係なく入ってくるお金のことなのか。で、その利益の出どころは?

運営会社の若さと本店移転履歴を、自分で確かめる

物販フランチャイズの本部を名乗る運営会社を調べると、設立からまだ日が浅い、いわゆる新興企業であることが少なくないように見える。中には、短期間のうちに本店所在地を複数回移している例も見受けられる。

もちろん、設立が新しいこと自体は悪いことではない。本店を移すことも、事業の拡大や事情に応じて普通に起こる。だが、加盟金や初期費用という重い支払いを、まだ実績の短い相手に預ける以上、その相手が「どれくらいの年数、どこで事業を続けてきたのか」を確かめる価値はある。パンフレットや面談で語られる説明を鵜呑みにせず、契約書に書かれた社名で、公的な記録に当たってみてほしい。

ここで使えるのが、国税庁の法人番号公表サイトだ。同サイトでは、法人の商号(社名)や本店所在地を、誰でも無料で検索・閲覧できる。しかも「変更履歴情報」欄には、商号や所在地が変わった日付や変更前の情報が、直近5件分表示される(国税庁法人番号公表サイト「ご利用方法」)。契約を検討している会社の社名で検索し、変更履歴の有無や回数を確かめるだけで、パンフレットには出てこない移転の跡をたどれる。

ただし、この検索には届かない範囲がある。同サイトは、変更履歴情報について「変更履歴情報は、法人番号指定後……の変更履歴のみを表示するため、法人番号を指定する前……の変更履歴情報は、表示されません」と説明している(同ページ)。つまり、法人番号の指定を受ける前に本店を移していたとしても、その履歴はここには出てこない。直近5件という上限も含め、この検索で分かるのは「分かる範囲まで」だと割り引いて使いたい。

実際の検索手順や、登記簿までさらに遡って確かめる方法は、以前の号で詳しく調べた。気になる方はそちらも読んでほしい。

迷ったとき用の一言 「登記簿上の正式な商号と、設立からの年数、現在の本店所在地を教えてください」。この一言に、面談の場で淀みなく答えられる相手とだけ、次の話をすればいい。答えを保留するなら、その場で契約せず、「いったん持ち帰って調べます」と言って席を立ってほしい。

すでに契約・加盟金を払ってしまった方へ

すでに加盟金を払い、契約書に判を押してしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ言っておきたい。お金を取り戻すこと以上に、これ以上の追加ロイヤリティや増額提案に応じない・これ以上借りないことが先だ。順序はこうなる。

  • 追加のロイヤリティ・増額提案・借入れの勧めに、その場で応じない
  • 契約書面・やり取りの記録(LINEやメール、振込明細など)を残す
  • 分割払いにしたクレジットカード会社など、決済元に状況を連絡する
  • 消費者ホットライン「188」・最寄りの消費生活センターに相談する

この物販フランチャイズという形は、業務提供誘引販売取引に当たる場合がある。当たるなら、「業務提供誘引販売取引」(特定商取引法ガイド・消費者庁)が定めるとおり、契約書面を受け取った日から20日間は、クーリング・オフ——契約を無条件で解除できる仕組み——を使える可能性がある。すでに日にちが経っていても、まず消費者ホットライン「188」(消費者庁)にかけて、当てはまるかどうかを聞いてみてほしい。

私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。

この記事のまとめ

  • 「無料相談」は入口の軽さであって、その場での即決契約とセットになっている型があること
  • 広告の期待収益と契約後案内の数字には大きな差があることがあり、「MAX」は上限であって平均ではないこと
  • 運営会社の設立の新しさ・本店移転履歴は、国税庁法人番号公表サイトで自分で確かめられること

確かめる順番は同じだ。その場で決めない。加盟金とロイヤリティの出どころを、契約前に聞いてみてほしい。(黒)