評判のいい投資教育系YouTube配信者の名前を検索すると浮かぶ「LINE」というサジェストの正体を、なりすまし広告の一次情報で調べた
先日、こんな相談が届いた。「よく見ている投資解説の動画チャンネルがある。中身は淡々としていて、怪しいと感じたことは一度もない。それなのに、チャンネル名で検索すると、候補に『LINE』という言葉が浮かぶ。これはどういうことか」というものだ。(黒)配信者本人を疑う話ではない。今号は、この現象そのものを名指しせずに調べた。
「配信者名」と「LINE」が並ぶ、二つの理由
検索候補に出る言葉には、たいてい理由がある。今回のケースを整理すると、混ざっている理由は大きく二つあると私は見ている。
一つは、視聴者側の警戒心だ。投資系の発信者を見るとき、多くの人がまず「怪しくないか」を確かめようとする。その確認行動そのものが、検索の語尾に残る。
もう一つは、もっと実務的な理由になる。本人とは無関係な誰かが、その配信者の名前や画像を借りて、別のLINEへ人を誘い込んでいる場合があるということだ。こちらは、公的機関が繰り返し注意を呼びかけている、実在の手口である。
動画からSNSのクローズドチャットへ、という手口の型
金融庁は、動画投稿サイトを入口にした手口を具体的に挙げている。「動画投稿サイトの広告等からSNSのクローズドチャットへ誘導され、投資への勧誘が行われる事例」があるというものだ(金融庁「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」)。
この型の特徴として、同庁はこう続けている。「誘導された先のアカウント名に「◯◯証券」、「◯◯運用会社」や「◯◯投資クラブ」といった名称のほか著名人の名称や画像が使われている」(同上)。中身が本人と無関係でも、名前と画像さえ借りれば、見た目の信頼感は簡単に作れてしまう。
著名人は、無料で投資教室を開かない
警察庁も、同じ構図に触れている。「著名人が無料で投資教室を開催したり、確実に利益が出る投資話を無料で教えたりすることは基本的にありません」(警察庁 SOS47「SNS型投資詐欺」)。
淡々とした解説を無料で続けている配信者が、裏で個別にLINEへ勧誘するというのは、そもそも噛み合わない話だと私は思う。では、その「LINE」は、いったい誰が管理しているのか。答えは、本人の公式チャンネル概要欄を見ればたいてい分かる。
数字で見る、なりすまし型の広がり
この型は、印象だけの話ではない。
消費者庁は「著名人・有名人のなりすましと考えられる事例が令和5年度下半期以降、増加傾向にあります」と報告している(消費者庁「SNSなどを通じた投資や副業といった『もうけ話』にご注意ください!」)。
警察庁の令和7年11月末時点の集計では、著名人をかたる「バナー等広告」経由のSNS型投資詐欺だけで、認知件数3,202件(前年同期比+453件、+16.5%)、被害額440.9億円(前年同期比+63.9億円、+16.9%)にのぼるという(警察庁「令和7年11月末における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」)。前年から2桁の伸びである。
同じ資料には、「バナー等広告」でかたられた著名人と連携した被害防止広報を実施した、ともある。名前を使われた著名人自身が、警察と一緒に注意を呼びかける側に回っている。名前を使われた本人もまた、無関係な被害者だという構図が、ここでも裏づけられている。
総務省も2024年、SNS等でのなりすまし型「偽広告」の広がりを踏まえ、プラットフォーム事業者側に対応を要請している(総務省「SNS等におけるなりすまし型『偽広告』への対応に関する要請の実施」)。手口が個人の注意力だけでは追いつかない規模になっている、ということでもある。
- 届いたLINEの入口が、配信者本人の公式チャンネル概要欄・公式サイトに書かれた窓口と一致するかを確認する
- 誘導先のアカウント名に「◯◯証券」「◯◯投資クラブ」といった名称や、著名人の名称・画像が使われていないかを見る
- 投資の勧誘を受けたら、相手が登録を受けた金融事業者かどうかを金融庁の「金融事業者一括検索機能」で確かめる(金融庁「金融事業者一括検索機能の運用開始について」)
- 無登録業者リストに載っていなくても、無登録営業に当たる場合があるという留保を忘れない(金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」)
この記事のまとめ
- 投資解説系の動画配信者の名前で検索すると「LINE」という言葉が浮かぶのは、視聴者側の警戒心と、本人になりすました偽広告という二つの理由が混ざっているためと考えられる
- 金融庁・警察庁は、動画投稿サイトの広告からSNSのクローズドチャットへ誘導し、著名人の名称や画像を借りたアカウントで勧誘する手口を具体的に指摘している
- 著名人をかたるバナー広告経由のSNS型投資詐欺は前年から2桁増となっており、名前を使われた著名人自身が被害防止広報に協力する側に回っている
結局のところ、「LINE」という言葉そのものではなく、その入口が本人の公式窓口と一致するかを確かめるしかない。