「15分で5,000円」の副業広告が、数千円の電子書籍を入口に数百万円のサポートプランへ段階的に引き上げる型を、消費者庁と特定商取引法の一次情報で調べた
特定の事業者名は挙げず、案件をまたいで繰り返し現れる型として調べる。「15分の作業で5,000円以上」――そう謳うSNS広告から、個人名のLINEアカウントへ登録すると、最初に届くのは高額な話ではない。千円前後の「電子書籍」や「案内ガイド」を買うよう勧められる。そこから電話がかかってきて、初めて金額が動き出す。今号はこの「安い入口」から始まる段階の作り方を、お金の流れで追った。
なぜ最初に「安い電子書籍」を挟むのか
いきなり数十万円を提示されたら、たいていの人は身構える。だから、最初は千円前後の少額だけを払わせる。これだけで話は変わる。一度お金を払った人は「ここまでやったのだから」という気持ちが働き、次の話を聞く姿勢になりやすい。現場20年で見てきたのも、たいていこの順番だった。
国民生活センターに寄せられた相談にも、同じ流れが記録されている。「電子書籍代2,000円をカード決済した。事業者から説明を聞くために予約したところ、後日、担当者から電話があり、予想収益を100万円とする約70万円のサポートプランを勧められた」(国民生活センター相談事例令和5年6月7日)。数千円の支払いは、次の電話を受けさせるための入口として機能している。
数字でほどく――副業トラブルの広がり方
「スキマ時間に稼げる」といった簡単な副業のトラブルは、公的な集計でも増えている。国民生活センターによれば、この種の相談件数は2020年度1,341件から2023年度3,694件へ増え、平均契約購入金額も27万9,519円から76万3,117円へ膨らんだ。きっかけがSNSだった割合も、23.0%から63.4%に上がっている(国民生活センター報道発表令和6年9月4日)。
情報商材に絞った集計でも、20歳代が契約当事者の68.7%を占め(2022年度)、平均既支払額は2018年度の約52万円から2022年度は約80万円へ増えたという(国民生活センター令和5年6月7日)。安い入口で始まった話が、最終的にまとまった金額へ育っていく――その伸び方が、数字にそのまま表れている。
電子書籍の先に待つもの――サポートプランと借入の勧め
電話の先で提示される金額は、一段階では終わらない。消費者庁が確認した例では、「利用金額が数十万円や百数十万円の9つのサポートプランが記載されたURLを送信し」、契約すればその金額を上回る収益が得られると電話で説明する、という段取りが記録されている(消費者庁の注意喚起令和6年2月29日)。数万円から数十万円、さらに百万円台へと、話は一段ずつ重くなっていく。
手元に払える金額がなければ、そこで終わりにはならない。同じ資料には、「皆さん、消費者金融からお金を借りて始めているのです」「利息がつかないうちに報酬で一括返済して、借入れを解除できる」という勧誘の言葉がそのまま記録されている(同資料)。実際の相談事例でも、「先行投資」と言われ、貸金業者3社から30万円ずつ借りる方法を提示され、遠隔操作アプリで画面を共有された状態で、各社に借金を申し込んだという例がある(国民生活センター相談事例令和5年6月7日)。稼ぐための元手のはずが、いつの間にか借金そのものが目的化していく。
「返金原則不可」は、どこまで効くのか
この種のページには、たいてい「返金は原則不可」と書いてある。私は法律家ではないので、個別の適法・違法は断定しない。ただ、整理はできる。まず、数千円の電子書籍だけを買った段階は、単純な通信販売にあたる可能性が高い。通信販売には法律上のクーリング・オフはなく、「事業者が広告であらかじめ……特約を表示していた場合は、特約による」(消費者庁・特定商取引法ガイド「通信販売」)。つまり「返金不可」という表示自体は、電子書籍の部分に限っていえば成立しうる。
一方、その先の高額なサポートプラン契約は別の話になりうる。「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で商品や役務を売る取引は、業務提供誘引販売取引にあたる場合がある(消費者庁・特定商取引法ガイド「業務提供誘引販売取引」)。これに該当すれば、法律で決められた書面を受け取った日から20日間はクーリング・オフができる。事業者が「返金不可」と表示していても、この法定の権利は特約で消せない。安い入口の返金ルールと、その先の高額契約の返金ルールは、同じ一枚のページに書いてあっても、法律上は別物として扱われうる、ということだ。
- 電話で提示される金額は一段階で終わらない前提で、契約前に「総額」と「段階の有無」を確認する
- 「消費者金融から借りて始めている人が多い」と言われても、その場で契約・借入をしない
- 「返金原則不可」の表示が、電子書籍側とサポートプラン側のどちらにかかっているかを切り分けて考える
- 迷ったら契約前でも契約後でも、消費者ホットライン188へ相談する
この記事のまとめ
- 数千円の電子書籍などを入口に、電話勧誘で数十万円から数百万円規模のサポートプランへ段階的に引き上げる型が、消費者庁の資料に記録されている
- 契約できなければ消費者金融からの借入を勧められる例があり、遠隔操作アプリで画面共有しながら複数社に申し込ませる手口も確認されている
- 「返金原則不可」の効き方は、通信販売部分と業務提供誘引販売取引部分とで法律上異なりうる
段階を追うごとに金額が重くなる話は、途中で一度、正規の窓口に持ち帰ってほしい。