第350号黒岩検閲済 2026年7月16日 発行(不定期刊/前号:7月16日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|個人実績ブログ×複数EA段階配布の型

投資家を名乗る個人ブログが月次の運用実績を語りながら、複数の無料EAを友だち追加特典として段階配布する型を、景品表示法のステマ規制と金融庁の一次情報で調べた

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黒岩警戒度

今号はこの件を洗った。個人が自分のFX運用実績を綴る、資産形成ブログという体裁の発信がある。数か月分の運用実績らしき画像が並び、そのブログの「友だち追加特典」として、複数の自動売買システム(EA)が無料で配られていく。特典が一つで終わらず、読み進めるほど増えていく作りに、少し引っかかった。(黒)

「個人の資産形成日記」という体裁が、まず何を隠しているか

運用実績を綴るブログという形式そのものは、珍しくない。ただ、その体裁が「広告ではなく、個人の率直な体験談」に見えるよう機能している場合は、一度立ち止まって確かめたい。

消費者庁は2023年の景品表示法の運用告示で、「広告であるにもかかわらず、広告であることを隠すことがいわゆる『ステルスマーケティング』」だと説明し、「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります」としている(消費者庁「ステルスマーケティングは景品表示法違反となります」)。同庁のQ&Aでは「広告には、企業がインフルエンサー等の第三者に依頼・指示するものも含まれます」とも整理されている(消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」)。個人名義の発信であること自体は、規制の外にいる理由にはならない。

この型が必ずステルスマーケティングに当たると決めつけるつもりはない。ただ、「体裁は個人の日記、実質はツールへの登録導線」という二重構造になっていないかは、読む側が自分で確かめられる数少ない手がかりの一つだと思う。

数字は具体的なのに、増えた金額そのものは書かれていない

運用資金100万円、ロット0.01(1回の取引量の単位)、期間は数か月間――という数字の並びは、一見すると具体的で、信頼できそうに見える。ただ、実際に「何円増えたか」という結果の数字そのものは、本文には明記されない。示されるのは画像だけで、こちらの手で照合する方法がない。

将来の運用益を匂わせる語り口は、消費者契約法が定める「断定的判断の提供」の考え方にも照らしておきたい。同法は、「将来における……変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること」を、消費者契約の取消事由の一つに挙げている(消費者契約法第4条(e-Gov法令検索))。「順調です」「コツコツ増えています」という言葉が、具体的な金額の裏付けなしに積み重なっていくとしたら、それは印象であって、検証可能な実績ではない。

「友だち追加特典」が、段階的に増えていく設計

この型では、EAが一つではなく、複数、段階的に紹介されている。特典が一つで終わらないことで、読み手の側には「もう少し読み進めれば、また何かもらえる」という期待が積み重なっていく。

特典の数は、信頼の証明ではない 「友だち追加特典」がいくつあっても、それは運用そのものの再現性を保証しない。特典を分割して並べる設計と、実際に利益が出るかどうかは、別の話だ。

警察庁は、SNSでの接触に始まり、「『株や暗号資産に投資すれば利益が得られる』などと言葉巧みに被害者を信用させ」た末に金銭を振り込ませる手口を、「SNS型投資詐欺」として整理している(警察庁「SNS型投資詐欺」)。無料でツールを配ること自体がこの手口に当たると決めつけるつもりはない。ただ、無料の入口から個別のLINE接触へ進むという導線の形は、この種の相談で繰り返し語られる構図と重なる。

「投資助言ではない」という説明は、どこまで通用するか

個別のLINE相談について、この型の発信者は「投資助言ではなく、公開情報ベースのチェックです」と説明することがある。ここは境界の話になる。

金融庁の監督指針は、投資助言業の登録が不要となりうる行為を、「不特定多数の者を対象として、不特定多数の者が随時に購入可能な方法により……投資判断……を提供する行為」に限って整理している(金融庁「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」)。友だち追加した相手への個別のLINEでのやり取りは、この「不特定多数・随時購入可能」という条件には当てはまりにくい。「公開情報ベース」という言葉だけで、登録の要否から外れられるとは限らない。

金融庁は無登録業者との取引について、「出金時に高額な手数料や税金の支払いといった名目の口座入金を要求され、入金した直後に連絡が取れなくなることもあります」と注意を促している(金融庁「SNS・マッチングアプリ等で知り合った者や著名人を騙る者からの投資勧誘等にご注意ください」)。

数字でほどく――で、この特典は誰の得になっているのか

私の口癖はいつも同じだ。で、その利益の出どころは?

EAというツール自体を無料で配ることに、配る側の金銭的な持ち出しはほとんどない。コストがかかるとすれば、それは受け取った側が個別相談へ進んだあとの時間と関係だ。「モノ」は無料でも、その先のLINEでのやり取りにこそ、この型の本体があると私は見ている。

国民生活センターは、SNS上の投資グループを通じたFX取引トラブルについて、2023年度の相談件数が前年度の同時期比で約1.5倍になったと公表し、「消費者は投資グループ内での指示通りに、指定された個人名義の口座に次々とお金を振り込みますが、最後はお金を一切引き出せなくなる」相談が寄せられているとしている(国民生活センター「SNS上の投資グループで勧誘される詐欺的なFX取引トラブル」)。同資料には、「FX取引アプリが無料で提供され、取引を進めると利益が出たので徐々に投資額を増やし」た末に総額500万円を振り込んだという相談事例も記録されている。無料ツールの提供が入口になるという構図そのものは、この型に限った話ではない。

  • 実績画像に、増えた金額そのものが明記されているかを確かめる。画像だけで数字が書かれていないなら、それはそれで一つの答えだと考える
  • 「特典」が複数あることを、信頼の証明と読み替えていないか、自分に問い直す
  • 「投資助言ではない」という説明を、対価の有無・個別のやり取りかどうかで確かめる
  • 個別のLINE相談は、その場で決めず、いったん持ち帰って調べる
  • 出金や追加費用の話が出たら、金融庁の登録業者情報・無登録業者一覧で相手の名称を確かめる
迷ったとき用の一言 「この実績、いつ・いくら増えたか、数字で見せてもらえますか」。画像だけで、数字を出したがらないなら、それはそれで一つの答えだと思う。(黒)

この記事のまとめ

  • 個人の資産形成ブログという体裁でも、広告と実質が一致しているかは景品表示法のステルスマーケティング規制に照らして確かめられる
  • 具体的な数字が並んでいても、増えた金額そのものが明記されなければ、読む側からは照合できない
  • 「投資助言ではない」という説明は、対価と個別のやり取りの有無で境界が変わる

特典が無料であることは、その先の個別のやり取りが適正だという保証にはならない。まずは、増えた金額を数字で見せてもらえるか、そこだけ確かめてほしい。