第342号黒岩検閲済 2026年7月14日 発行(不定期刊/前号:7月14日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|元被害者アピール×多方面誘導の型

"投資で騙された経験"を語る無料の株情報サイトが、日次更新の実績演出とともに複数の外部有料サービスへ読者を振り分ける型を、表示規制の一次情報で調べた

公開 最終更新 読了 約6分
黒岩警戒度

今号はこの件を洗いました。毎日「注目銘柄」「材料株」を無料で紹介するサイトをいくつか見比べていて、運営者プロフィールの書き出しが妙に似ていることに気づいた。「私自身、かつて投資商材で痛い目に遭いました」。この一文がほぼ決まって置かれている。被害に遭った側が、今度は情報を無料で配る側に回った——という筋書きは、確かに信頼できそうに読める。ただ、その先で何が起きているのかは、プロフィール欄には書かれていない。特定のサイトは名指しせず、案件をまたいで現れる型として、お金と広告の流れで調べた。

「私も、かつて投資詐欺に遭いました」という自己紹介

この型の運営者プロフィールには、たいてい共通の構成がある。まず自分も投資商材や情報商材で損をした経験を語り、「その経験を活かして、100サイト以上を検証してきました」のように実績の数を添える。読者からすれば、同じ立場を経験した人の発信のほうが、業者からの一方的な売り込みより信じやすい。この"同じ痛みを知っている"という前提が、以降のすべての発信に対する警戒を、あらかじめ一段下げてしまう。

ただ、被害に遭った経験を語ること自体は、何ら問題のある行為ではない。問題は、その語りが実際に確かめようのない自己申告である点と、その語りが後段の"誘導"の効き目を上げる装置として機能している点にある。国民生活センターも、著名人や第三者の体験談・成功談を使って信頼を得たうえで投資勧誘に持ち込む手口について、「消費者がそういった勧誘内容の真偽を判断することは難しく、言われるがままに…振り込んでしまう事例が多く見受けられます」と注意を促している(国民生活センター「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」、令和6年5月29日)。語りの対象が著名人か運営者自身かの違いはあるが、"信頼できそうな語り"を先に置いてから本題に進む、という構造そのものは同じだと私は見ている。

日次更新という"勤勉さ"の演出

もう一つ共通するのが、更新頻度の高さだ。毎日欠かさず「本日の材料株」「注目セクター」を無料で発信し続ける。これ自体は地道な作業で、悪いことではない。ただ、この"毎日欠かさず働いている"という見た目が、運営者への信頼をじわじわ積み増していく効果を持つ。SNS(X・Facebookなど)でも同じ調子で市況をつぶやき、接点を切らさない。無料で有益な情報を出し続ける人、という印象が固まったところで、次の段階が始まる。

無料記事の先で枝分かれする、複数の外部有料サービス

この型で特徴的なのは、誘導先が一つに絞られていないことだ。記事の末尾やサイドバーには、株の売買シグナルを配信する有料級ツール、投資顧問への申し込み窓口、LINE登録の案内など、複数の外部サービスへのリンクが並ぶ。読者は自分の関心に応じてどれかを選んでクリックする格好になり、運営者は紹介の成果に応じた収益(アフィリエイト報酬)を、その先の事業者から受け取る。無料情報サイトという体裁の裏側に、複数の紹介先を持つ広告のハブという実態がある、という見立てになる。

"元被害者"の語りに立ち止まりたい一点 体験談そのものの真偽は、読者の側からは確かめようがない。確かめられるのは、その先で紹介されている個々のサービスの実態だけだ。信頼は語り口ではなく、誘導先の一つ一つで測ってほしい。

それは「広告」だと、読者にわかる形になっているか

複数の有料サービスへ誘導し、その紹介料を受け取っているのなら、それは実質的に広告である。問題は、読者がクリックする時点で「これは広告だ」と分かるように示されているかどうかだ。消費者庁は2023年10月から、広告であることを一般消費者が判別できない表示を景品表示法違反(ステルスマーケティング規制)として扱うことを明確にしている(消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」)。

アフィリエイトサイトについても、消費者庁は「表示内容全体からみて、一般消費者にとって『事業者の表示』であることが明瞭となっているかどうかが重要となります」と説明している(消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」)。ページの隅に小さく「PR」と書いてあれば足りる、という単純な話ではない。文字の大きさや色、置き場所まで含めて、読者が広告だと気づける形になっているか——で、その"無料の情報提供"は、本当に広告だと分かる形で渡されているだろうか。

有償の助言に進むなら、登録の有無を確かめたい

誘導先で「必ず上がる」「確実に利益が出る」に近い言い切りが出てきたら、もう一段注意したい。証券取引等監視委員会は、有価証券の価格等が「必ず騰貴する、又は必ず下落するといった断定的な判断を示して勧誘すること」を金融商品取引法38条が禁じていると説明している(証券取引等監視委員会「投資をされる方へ」)。

さらに、報酬を受け取って株の売買判断を助言する契約は投資顧問契約にあたり、これを業として行うには投資助言・代理業の登録が必要になる。登録を受けていない業者について金融庁は「投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず」と注意を促し(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」)、無登録で営業していたとして警告書が出された業者名を一覧で公表している(金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」)。誘導先で有償の話が出た時点で、この一覧に相手の名称があるかどうかを確かめる。それだけで、かなりの割合を見分けられる。

  • 「私も被害に遭った」という語りは、それだけでは信頼の根拠にしない
  • 誘導先のリンクが複数あるなら、それぞれを個別に、広告だと分かる表示になっているか確かめる
  • 「必ず」「確実に」に近い言い切りが出た時点で、黄信号として扱う
  • 有償の助言・サポートの話が出たら、相手の名称を金融庁の登録業者一覧で確認する
  • その場で登録・入金を決めず、いったん持ち帰って調べる
迷ったとき用の一言 「私も昔は騙されました」という言葉は、相手への警戒を下げるためにも使える。語り口ではなく、その先で紹介されているものの実態を見てほしい。(黒)

この記事のまとめ

  • "元被害者"を名乗る語りで信頼を得て、日次更新の勤勉さを演出し、複数の外部有料サービスへ読者を振り分ける型がある
  • 広告であることが読者に分かる表示になっているかは、景品表示法のステルスマーケティング規制の対象になりうる
  • 有償の投資助言を業として行うには金融商品取引法上の登録が必要で、相手の名称は金融庁のサイトで確認できる

語り口の信頼できそうな印象と、誘導先の実態は別物として、それぞれ確かめてほしい。