賛否両論を並べる「評判レビュー」記事が、無料マンツーマンレッスンへ橋渡しする型を、SNS投資勧誘の一次情報で調べた
「〇〇の評判はどうですか」というタイトルの記事を、いくつか読み比べてみました。良い評判と悪い評判、両方をきちんと並べているので、一見すると公平な検証記事に見えます。ただ、中盤から後半にかけて、判で押したように同じ形の一文が挟まっているのに気づきました。「マンツーマンレッスンを受けたら、資金が数倍になったと口コミで話題」という体験談と、その先へのリンクです。今号はこの「両論併記のあとに橋渡しする」という型を調べました。
なぜ、いったん「賛否両論」を並べるのか
いきなり褒めるだけの記事だと、読む側も身構えます。だから、先に悪い評判・懸念点も並べておく。「再現性が難しい」「実績が非公開」といった弱点まで書いてあると、この記事は中立で誠実そうだ、と思わせやすくなります。消費者庁は2023年10月から、広告であることを隠した表示(ステルスマーケティング)を景品表示法の不当表示に指定しました。両論併記そのものが違反というわけではありませんが、「これは広告ではなく、公平な第三者の検証だ」と読者に思わせる作り方には、注意が必要だと私は見ています。
型を3つの段階に分けてみる
段階1:中立な体裁で信頼をつくる
まず対象について、良い点・悪い点の両方を並べます。批判的な意見まで載せていると、「ちゃんと調べている記事だ」と読者は安心してしまう。ここまでは、普通のレビュー記事と見分けがつきません。
段階2:検証できない実績を挟む
記事の折り返し地点あたりで、話が少しずつ変わります。「マンツーマンレッスンを受けた人が、半年で資金を数倍に増やした」といった体験談が、口コミという形で紹介される。ただ、この数字は元の対象そのものの実績ではなく、別のサービスを使った"誰か"の話です。裏を取る手段は読者にはありません。国民生活センターも、SNS上で「体験談」を見て興味を持ちメッセージアプリへ登録したことをきっかけとする金融トラブルの相談が急増していると報告しており、2022年度と比べて相談件数は約9.6倍に増えたとしています。「体験談を読んで興味を持つ」という入り口そのものが、公的機関の注意対象になっている構造です。
段階3:「無料」を入口に、話を前へ進めさせる
最後は「無料のマンツーマンレッスン」「無料相談」といった言葉で、外部のリンクへ誘導します。無料という言葉は判断のハードルを大きく下げますが、国民生活センターが集計する情報商材関連の相談では、無料の入口から有料の継続サポート契約へ進み、解約や返金をめぐるトラブルに発展する相談が毎年一定数寄せられています(2024年度で4,118件)。「無料だから、とりあえず話だけ聞いてみよう」という一歩目こそ、型の中でいちばん軽く見えて、いちばん設計されている部分だと思います。
巻き込まれないための、ゆるい行動ルール
レビュー記事を読むこと自体が悪いわけではありません。私が気にしているのは、「両論併記」という体裁を、そのまま信用の証にしてしまわないことです。そのうえで、
- 紹介されている体験談が、記事の主役(評価対象そのもの)の実績なのか、別サービスの実績なのかを分けて読む
- 「無料」の先に、個別の連絡先(LINE・メッセージアプリ)を渡す動線がないか確認する
- 数字(〇倍・〇%)の根拠が、自分の手で確かめられるものかどうかを基準にする
- その場でリンクを踏まず、「いったん持ち帰って調べます」を一度はさむ
この記事のまとめ
- 賛否両論を並べる体裁は、記事の中立性を演出する効果を持つ
- その中に挟まる「検証できない実績」と「無料の入口」が、外部サービスへの橋渡し役になっている
体験談は誰の実績なのかを分けて読み、無料の連絡先交換を急がない。この2点を覚えておくだけでも、だいぶ違います。なお、投資の勧誘を行う業者が登録を受けているかどうかは、金融庁の無登録業者リストで確認する方法もあります(掲載がないことが安全の証明にはならない点に注意、とのことです)。