SNS広告の「3問診断」からLINE登録、個別面談へ進むスクール勧誘が、料金を最後まで明かさない型を、特定商取引法の価格表示義務で調べた
SNS運用を教えるという触れ込みのスクール広告を、いくつか並べて眺めていた。特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、この入り口を調べておきたい。共通しているのは、料金がどこにも書かれていないという一点だ。「まずは無料相談から」を経て個別の面談に進むまで、金額は一度も出てこない。この“最後まで値段を隠す”という入り口だけにしぼって、法律上どう扱われるのかを調べておきたい。(黒)
型の骨格:診断からLINE登録、個別面談まで金額は出てこない
流れはこうだ。公式サイトにある「3問ほどの簡単な診断」に答える。結果を見るには、まずLINEの友だち登録が求められる。登録すると、次に案内されるのは無料相談の予約。ここまで一貫して「無料」しか出てこない。金額が初めて示されるのは、一対一の個別面談の場だけだ。「ライトプラン」「スタンダードプラン」といった名称と期間は用意されていても、具体的な数字はその場に行くまで分からない。つまり、複数の選択肢を並べて比べるという行為が、構造として最初から成立しない仕組みになっている。
なぜ、料金を最後まで隠せるのか
通信販売の広告には、本来、価格を表示する義務がある。特定商取引法は、通信販売の広告について「商品若しくは特定権利の販売価格又は役務の提供条件」などを表示しなければならないと定めている(消費者庁「特定商取引法ガイド」逐条解説)。ところが同じ条文には、ただし書きがある。「請求により、これらの事項を記載した書面を遅滞なく…交付する旨の表示をする場合には…これらの事項の一部を表示しないことができる」。つまり「請求すれば書面で教えます」という一文さえ広告に添えれば、価格を出さないままでも形式的には成立してしまう。この抜け道の存在が、値段の見えない広告を可能にしていると私は見ている。
個別に呼び出して契約させる時点で、別のルールが動き出す
ただし、話はここで終わらない。LINEで個別に日時を指定し、面談の場に呼び出して、その場で契約させる——この進め方は、通信販売というより「アポイントメントセールス」に近づく。消費者庁は、電話やSNS等で販売目的を明示せずに呼び出したり、有利な条件を強調して営業所等に呼び出したりして契約させる場合を、訪問販売の一類型として扱うとしている(消費者庁「特定商取引法ガイド/訪問販売」)。この型に当たれば、書面交付義務やクーリング・オフの対象になりうる。さらに、「仕事を紹介する・収入が得られる」ことを勧誘の材料にしている場合は、業務提供誘引販売取引という別の類型にも当てはまる余地がある。この類型には、法定書面を受け取った日から20日間のクーリング・オフが用意されている(消費者庁「特定商取引法ガイド/業務提供誘引販売取引」)。「通信販売だから仕方ない」という理屈は、実際の勧誘の進め方次第で崩れる、ということだ。
「月収50万円」を割り算してみる
金額の出し方と同じくらい確かめたいのが、収益の見せ方だ。「月収50万円」「誰でも稼げる」といった表現は、景品表示法が定める「優良誤認表示」の対象になりうる。同法は、実際のものよりも著しく優良であると示し、消費者の自主的かつ合理的な選択を妨げるおそれがある表示を禁じている(消費者庁「優良誤認とは」)。表示の裏付けが疑われる場合、消費者庁は事業者に「合理的な根拠を示す資料」の提出を求めることができ、期間内に出せなければ、その表示は不当表示とみなされる、あるいは推定される仕組みになっている(消費者庁「不実証広告規制」)。つまり法律の建て付けとしては、「月収50万円」と言うなら根拠を示す責任は言った側にあり、示せなければ示さない方が悪いということになる。実際、消費者庁は2025年6月、「このプランなら、月50万が当たり前になる」といった言い回しを用いた副業サポートプランの勧誘について、注意喚起を公表している(消費者庁「簡単な副業をうたい高額なサポートプランを契約させる事業者に関する注意喚起」)。同種の言い回しがすでに公的な注意の対象になっている、という事実は覚えておいていいと思う。
相談件数を、数字でほどく
国民生活センターの集計によると、SNS(広告)がきっかけとなった副業関連の相談の割合は、2023年度は63.4%、2024年度は7月31日までの時点ですでに70.1%に達している(国民生活センター「スキマ時間に気軽に稼げる等とうたう副業トラブル」)。同資料の集計表では、相談件数は2020年度の1,341件から2023年度には3,694件に増え、平均の契約購入額は2020年度の27万9,519円から2024年度(7月31日まで)は105万9,658円に膨らんでいる。単純に割ると、4年でおよそ3.8倍だ。金額が大きくなるほど、「個別面談まで料金を明かさない」という入り口の重みも増す、と私は見ている。
- 公式サイトや広告に、具体的な金額が一切書かれていないか確認する
- 「診断」「LINE登録」の先が、個別の呼び出し面談になっていないか確かめる
- 「月収◯万円」等の収益表示に、根拠となる資料が示されているか尋ねる
- その場で契約せず、書面やメールでの見積もりを一度持ち帰る
- 契約の類型(業務提供誘引販売取引・アポイントメントセールス等)とクーリング・オフの可否を、契約前に消費生活センターに確かめる
この記事のまとめ
- 「診断→LINE登録→無料相談→個別面談」という型は、金額を個別面談まで明かさないことで比較検討の余地を奪う
- 通信販売の価格表示義務には「請求すれば書面で」というただし書きの抜け道があるが、個別に呼び出して契約させる進め方はアポイントメントセールスや業務提供誘引販売取引に該当しうる
- 「月収50万円」等の収益表示は、景品表示法の優良誤認表示・不実証広告規制の対象になりうる
で、その利益の出どころは? そして、その金額の根拠は? 個別面談の場で即答を求められても、まず持ち帰ってから答えを出したい。(黒)