大手銀行の株価解説記事に、実績を強調した無料マンツーマン投資レッスンへの誘導リンクが仕込まれる型を、表示規制で調べた
大手銀行の株価がなぜ安いのか、を解説する無料記事を読んでいたら、本文の合間に「億り人が教える無料マンツーマンレッスン」への誘導リンクが3回ほど出てきた——という話を聞いた。特定の記事・発信者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れと表示の面から調べる。で、その「億り人」とやらの実績は、誰が確かめたものなのか。まずそこから見ていく。
なぜ「企業分析」の体裁が選ばれるのか
低金利環境の影響、PBR(株価純資産倍率)の水準、成長性への懸念——実在する企業の株価が「なぜ安いのか」を、既存の公開情報を並べて説明する記事は、それだけで中立的な情報に見える。銀行株の分析記事なら検索する人も多く、読者の警戒心はそう高くない。むしろ「きちんと調べて書いている記事だ」という信頼が先に立つ、というのが厄介なところだと私は見ている。
誘導の型を三段で分解する
第一段階:客観的な数字で信頼を積む
金融政策の転換、自己株式取得や増配といった株主還元、海外事業の成長——これらはいずれも公開されている事実であり、この段階では詐欺的な要素があるわけではない。読者は「よく調べられた記事だ」という前提で読み進めることになる。
第二段階:「視点が必要」という一般論を挟む
「投資には金融市場全体の大きな流れを読み解く視点が必要」——記事の結論としてこうした一般論が置かれると、読者は自然に「では、その視点はどこで身につくのか」と考える。ここが誘導の分岐点になる。
第三段階:実績を強調した無料指導へ、複数回リンクを置く
「資金が数倍になった」という具体的な倍率とともに、「億り人による無料マンツーマンレッスン」への誘導リンクが、記事の合間に3回ほど自然な形で挿入されている——というのが、今回聞いた話の中身だ。1回では読み飛ばされても、文脈の違う箇所で複数回目にすれば、クリックされる確率は上がる。
その「講師」は誰なのか、確認できることは何か
投資の助言を行う「投資助言・代理業」は、金融商品取引法に基づく登録制の業務だ。金融庁は無登録業者との取引について、無登録での金融商品取引業は違法と明記する(金融庁・2024年更新)。マンツーマンで具体的な売買や資産配分の助言を行うのであれば、この登録の有無は自分で確認できる情報のひとつになる。
著名性を借りた勧誘そのものも、近年目立って増えている。国民生活センターによれば、著名人らを名乗る金融商品トラブルの相談は2022年度170件から2023年度1,629件へ急増し、「いったん振込してしまうと被害回復が困難」だという(国民生活センター・2024年)。「億り人」という肩書きも、本人が名乗っているだけなのか、第三者が確認できる実績なのかは、記事を読むだけでは分からない。
- 記事中の実績表示に、期間・元本・再現性の条件が書かれているか確認したか
- 誘導先の「講師」「億り人」が投資助言・代理業の登録を受けているか確認したか
- 同じ誘導リンクが記事の中に複数回置かれていないか意識したか
- 「無料」の先で、連絡先の登録や個別面談を急かされていないか確認したか
- その場で決めず、一度持ち帰って調べたか
この記事のまとめ
- 企業の株価解説という中立的な体裁は、実績を強調した個別指導への誘導リンクを複数回置く土台として使われることがある
- 投資助言・代理業は登録制であり、「億り人」等の肩書きは記事を読むだけでは裏取りできない
数字を並べた解説記事そのものが悪いわけではない。ただ、その先に置かれたリンクの数と文言は、一度立ち止まって見直す価値がある。