「資産の価値が目減りする」という試算グラフから、50万円弱のAI投資スクールへ進む勧誘の型を、不安を煽る手口の統計で確かめた
今号はこの件を洗った。無料のオンライン講座に登録すると、まず「このまま銀行に置いておくと、お金の実質的な価値は目減りする」という試算のグラフが出てくる。何年か前の1000万円が、いまの価値に直すと何百万円か目減りしている、という見せ方だ。この不安の起こし方から、数十万円規模の有料コースへ進むまでの流れを、個別の事業者は名指しせず「型」として調べた。
「資産が目減りする」という数字は、どこから来るのか
物価が上がれば、同じ金額で買えるものは減る。これ自体は間違った説明ではない。ただ、その数字だけを大きく見せて「だから投資を始めるべきだ」という結論に一足飛びで連れていく構成には、注意しておきたい。数字が正しいことと、その数字の使われ方が公正であることは、別の話だからだ。
典型的な流れはこうなる。まず無料のオンライン講座を広告で告知する。次にメールアドレスを登録すると、目減り試算のグラフやAIツールの使い方といった無料コンテンツが届く。そのうえで何回かのやり取りのあと、有料の個別コースが案内される。私が見た型では、価格は数十万円台後半、一括払いだと数万円ほど割り引かれる、という提示のされ方だった。広告の入口の段階では、金額はどこにも書かれていない。
公的機関は、この型をどう見ているか
「AI投資スクール」そのものを名指しした統計は、今回の調査では見つからなかった。ただ、近い型については、いくつかの公的な記録が残っている。
国民生活センターは、無料の入口から始まり、オンラインでのやり取りを重ねたのち高額な契約に進むという型について、「無料カウンセリングを受けるだけのつもりでWeb会議に参加したところ、高額なセミナーやビジネススクール等の勧誘を受けて、断り切れずに契約したというトラブルが多くみられます」と注意を呼びかけている。これは学生の就職活動をめぐる事例であり、投資スクールそのものの事例ではない。ただ、無料入口からオンラインの継続的なやり取りを経て高額契約へ進むという骨格は、今回調べた型と重なる。同じ資料では、契約金額は50万円以上100万円未満が最も多く(36.4%)、平均は約48万円だったと記録されている。
「AI」を名乗るサービス名を掲げた業者が、金融商品取引法に基づく登録をせずに投資助言的な営業を行っていたとして、金融庁・財務局から複数回にわたり警告を受けていることも確認できた。投資の助言を業として行うには、投資助言・代理業としての登録が要る。「AI」という言葉が付いているかどうかは、登録の有無とは関係がない。
もう一つ、数字だけ置いておく。国民生活センターの集計では、契約当事者が65歳以上の消費生活相談は2024年度に304,130件、相談全体に占める割合は38.6%となり、2020年度以降で最も高くなったという。投資に限った数字ではないが、年配の層をめぐる消費生活相談そのものが、いま増えているという背景として書き残しておく。
立ち止まるための、いくつかの確認
無料の講座や「AI」という言葉そのものが悪いわけではない。私が見たいのは、その先の設計だ。
- 広告や無料コンテンツの中に、有料コースの金額が具体的に書かれているか
- 「投資助言」「投資顧問」に当たる内容なら、金融庁の登録一覧に名前があるかを確かめる
- 不安を煽るグラフが出てきたら、その場で判断せず、いったん保留にする
- 家族や、利害関係のない第三者に、一度話してみる
この記事のまとめ
- 「資産が目減りする」試算から、無料講座→数十万円の有料コースへ進む型がある
- 「AI」を名乗る業者でも、投資助言には金融商品取引法上の登録が要る
で、その不安を煽る数字は、何のために見せられているのか。まずそこを確かめてほしい。