第297号黒岩検閲済 2026年7月5日 発行(不定期刊/前号:7月5日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|権威監修×検証不能実績の型

「東大教授監修」を掲げるAI銘柄選定ツールが、無料登録の見返りに検証不能な騰落率実績を見せる型を、投資助言業の登録制度で調べた

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黒岩警戒度

「AIが24時間365日、東証全銘柄を自動監視。〇〇大学教授監修のロジックで、急騰間近の銘柄をお知らせします」。そんな触れ込みの株の銘柄選定サービスを見かけた。登録に必要なのはメールアドレスだけ。クレジットカード番号も電話番号もいらない、と念まで押している。詳細を見てみると、「A社+348%」「B社+293%」といった、過去の値上がり実績が並ぶ。今号で扱うのは、特定のサービスではない。大学教授監修という肩書と、検証しようのない値上がり実績を並べて、無料登録の垣根を極限まで下げる——この、AI銘柄選定ツール勧誘の型である。

この型の骨格──「無料」「監修」「実績」の三点セット

広告の作りは、いつも似ている。まず、メールアドレスだけで完全無料という間口の広さ。クレジットカードも電話番号も求めない、とわざわざ書いてある。次に、権威ある肩書の登場。「〇〇大学教授監修」というような一文が、ロジックの信頼性を裏づける形で添えられる。最後に、過去に的中したという個別銘柄の値上がり率が、具体的な数字で示される。三つを重ねることで、「無料だから損はない」「専門家が見ているから大丈夫」「これだけの実績があるなら」という三段の安心材料を、読み手にあらかじめ用意しておく——というのが、今号の見立てだ。それぞれの中身を一つずつ確かめると、少し様子が違って見えてくる。

「教授監修」という肩書に、なぜ心が動くのか

権威のある肩書を見ると、人は疑いを弱める。国民生活センターの機関誌『国民生活』2025年1月号で、関西大学経済学部の教授はこう指摘している。「SNS型投資詐欺の被害者の多くは、有名人や権威のある肩書の人が登場する広告や、知り合いを通じて連絡を取った、まったく面識のない人とSNSを通じてつながったことが、詐欺被害のきっかけになっています」(国民生活センター『国民生活』2025年1月号)。同じ寄稿はこうも述べる。「特に若い人や高齢者は、有名な人や肩書のある人に疑いを持たない傾向があることが分かりました」。実際、著名人になりすました投資勧誘の消費生活相談は、2021年度52件から2023年度1,629件へ、約9.6倍に急増している(国民生活センター発表情報)。「〇〇大学教授監修」という肩書も、同じ心理に働きかけていると私は見ている。で、その利益の出どころは?——監修者本人・所属先に直接照会できるかどうかを、まず基準にしたい。

銘柄を教えるだけでも「投資助言業」にあたるのか——金融商品取引法で調べる

無料だから問題ない、と思う人もいるだろう。ただ、調べてみると話はそう単純ではない。金融商品取引法は、有価証券の価値等の分析に基づく投資判断について助言を行う契約を「投資顧問契約」と定め、これに基づいて助言を行う業を「投資助言・代理業」として、内閣総理大臣の登録を義務づけている(金融商品取引法第2条第8項第11号・第29条)。無登録でこれを行えば、個人には5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、法人には5億円以下の罰金が科されうる。金融庁も「日本で登録を受けずに金融商品取引業……を行うことは違法です」と注意を促している(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」)。「AIが自動で判断している」「無料サービスだ」という説明は、反復継続して個別銘柄の投資判断に関する助言を行っているという実態を、変えるものではない。銘柄を継続的に教えるサービスに出会ったら、私はまずこの登録の有無を確かめることにしている。

「+348%」の実績は、そのまま信じていい数字なのか

値上がり実績を見せられると、それだけで説得力を感じてしまう。ただ、消費者庁の考え方はもう少し慎重だ。景品表示法は、実際よりも著しく優良だと示す表示を「優良誤認表示」として禁じており(消費者庁「優良誤認とは」)、効果や実績を示す表示について消費者庁から求められた場合には「客観的に実証された内容」の資料を提出しなければならないと定めている(不実証広告規制、同法第7条第2項。消費者庁「不実証広告規制」)。いつ・どの銘柄群を対象に・どんな条件で計測した数字なのか。これが説明できて初めて、「実績」は実績と呼べる。うまくいった個別銘柄だけを抜き出して並べる見せ方は、その裏にある含み損や見送り銘柄を確かめる余地を、読み手に残さない。数字を見たら、私はまず母集団をたずねることにしている。

SNS経由の投資詐欺は、依然として高水準で続いている 警察庁の確定値によれば、令和7年のSNS型投資詐欺は認知件数9,523件、被害総額1,288.0億円にのぼる(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」)。同資料は、著名人の画像や動画を無断使用したバナー広告による被害が令和7年7月以降に増加し、広告からLINEへ誘導される割合が約9割にのぼると指摘している。無料の銘柄情報サービスも、その入口の一つになりうると私は見ている。

巻き込まれないための確認ポイント

予防の側でやることは、実績の華やかさを疑うことではない。監修と数字の中身が、確かめられる形で示されるかどうかだ。

  • 「〇〇大学教授監修」という肩書は、監修者本人・所属先に直接照会できるかを基準にする
  • 値上がり実績を見たら、対象銘柄の母集団・計測期間・計測条件をたずねる
  • 個別銘柄の売買タイミングを継続的に勧められたら、投資助言・代理業として登録されているかを確認する
  • 無料登録の先でLINEや電話への誘導を急がされたら、その場で決めず持ち帰る

すでに登録し、有料プランへ進んでしまった方へ。まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。順序はこうなる。①追加で払わない ②広告・登録画面・やり取りの記録を残す ③相手が無登録の金融商品取引業者でないかを金融庁のウェブサイトで確かめる ④消費者ホットライン「188」に相談する。私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。

迷ったとき用の一言 「監修されている先生のお名前で、直接照会していいですか」。この一言に淀みなく答えられる相手とだけ、次の話をすればいい。話をはぐらかされたら、それはそれで答えだと思う。

この記事のまとめ

  • 「無料登録」「権威監修」「検証できない値上がり実績」の三点セットが、この型の骨格である
  • 継続的な銘柄助言は投資助言・代理業の登録制度、値上がり実績の表示は景品表示法の不実証広告規制、権威便乗はSNS型投資詐欺の統計と、それぞれ一次情報で照らせる

確かめるのは実績の華やかさではなく、監修者への照会可否・登録の有無・数字の母集団だ。迷えば188へ。それが一番確かだ。