第290号黒岩検閲済 2026年7月4日 発行(不定期刊/前号:7月4日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|市況ニュース体裁×実績表示誘導の型

日経平均の市況ニュースという体裁が、投資顧問ランキングと自動売買ツールの実績表示への入口に変わる型を、表示の根拠で調べた

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黒岩警戒度

「日経平均は反落」「TOPIXは堅調」――こうした相場の解説記事を読み進めていくと、途中から急に景色が変わることがある。今号で扱うのは特定のサイトや記事ではない。ふつうの市況ニュースという体裁の中に、投資顧問サービスのランキングページ、自動売買ツールの「実績」表示、LINEの友だち登録への導線がそのまま差し込まれている、という組み立ての型だ。

なぜ「市況ニュース」という入れ物が選ばれるのか

日経平均やTOPIXの値動きは、誰にとっても中立な事実である。数字を淡々と並べているぶん、読み手は「情報として読んでいる」という構えのまま、その先にある勧誘的な一文にも同じ姿勢で目を通してしまいやすい。広告だと気づかれにくい場所に広告を置く、という発想そのものは今に始まった話ではない。ただ、広告であることを示さずに広告的な表示をする点については、消費者庁が「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります」と定めた規制がある。この規制の対象は表示内容を決めた事業者(広告主)であり、今号で見た記事のどの部分が誰の広告にあたるかは、この場では確認していない。

3つの導線を分けて見る

今号で見た記事に差し込まれていたのは、大きく3つの導線だった。順に見ていく。

導線1:投資顧問サービスの「比較ランキング」

「独自の調査網を持つプロの投資顧問なら、一般には出回らない情報も網羅している」として、複数の投資顧問サービスを比較したランキングページへ誘導する形である。他人の資産運用について有償で助言する投資助言業は、内閣総理大臣(財務局)への登録が必要な業務だ。金融庁は無登録の業者について、「日本で登録を受けずに金融商品取引業を行うことは違法です」と説明している。ランキングに載っている投資顧問が、この登録を受けているかどうかは、紹介記事の中だけでは確認しようがない。

導線2:自動売買ツールの「実績」表示

「勝率80%超」「利益率297%」――個別銘柄の抽出日・安値・高値を並べた表は、一見すると根拠のある実績に見える。ただ、都合のよい銘柄だけを選んで並べているのか、抽出した全銘柄の平均なのかは、表からは読み取れない。金融庁の監督指針は投資助言業者に対し、「当該投資助言業者に有利なもののみを掲げる表示をしていないか」を確認するよう求めている。都合のよい実績だけを見せる表示は、業界の監督上も問題視されうる、ということだ。

導線3:LINE「友だち追加」で無料銘柄

「LINEで友だち追加すると、無料で急騰銘柄を教えてもらえる」という導線。無料であること自体は問題ではない。ただ、その先で何が起きるかは、友だち追加をした後にしか分からない。友だち追加は、読者の連絡先をこちらの管理下に置く、その最初の一歩でもある。

3つに共通する狙い ランキング誘導・実績表示・LINE登録。入口は違っても、狙いは「中立な情報を読んでいる」という構えのまま、読者を次の行動(クリック・登録・友だち追加)へ運ぶことで一致している。

で、その利益の出どころは?

投資顧問サービスも自動売買ツールも、「儲かった人がいる」ことと「あなたが儲かる」ことは別の話だ。有価証券の値動きについて断定的な判断を示して勧誘する行為は、証券取引等監視委員会が「有価証券の価格等が必ず騰貴する、又は必ず下落するといった断定的な判断を示して勧誘することを禁止しています」と説明する、金融商品取引法38条が定める禁止行為にあたりうる。「勝率80%」という表示そのものが直ちに違法というわけではないが、その数字を根拠に「儲かる」と思わせる勧誘には、この禁止規定が関わってくる。で、その利益の出どころは?――記事中の実績表ではなく、その先で実際に運用や助言を行う相手が、何を根拠にその数字を示しているかだ。

数字で見る、この型に注意したい理由

印象だけの話ではないことを、数字で見ておく。国民生活センターは「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」していると発表し、この種の相談件数は2021年度52件から2023年度1,629件へ約9.6倍に増えている。警察庁の確定値でも、令和7年のSNS型投資詐欺は認知件数9,523件・被害額1,288.0億円にのぼる。市況ニュースの体裁を借りた勧誘そのものの統計は、今号の調査では見つからなかった。ただ、入口の形が変わっても、その先にある投資勧誘という中身は、この統計が示す領域と地続きだと私は見ている。

数字でほどく 著名人を名乗る・つながりを示す投資勧誘の相談件数は2021年度52件→2023年度1,629件へ約9.6倍に急増(国民生活センター2024年5月発表)。令和7年のSNS型投資詐欺は認知件数9,523件・被害額1,288.0億円(警察庁確定値)。

確認しておきたい3つのこと

市況ニュース自体を疑う必要はない。確かめるのは、そこから先に置かれたリンクの中身だ。

確認1:ランキングに載っている業者は、登録を受けているか

投資助言・代理業として登録されているかどうかは、金融庁のウェブサイトで確認できる。ランキングの見た目のよさではなく、この一点を先に確かめてほしい。

確認2:実績表は、母数と期間が書かれているか

「利益率890%」の裏に、何銘柄中の何番目の実績なのか、いつからいつまでの数字なのかが書かれているかを見てほしい。書かれていないなら、それは検証できない数字だと考えていい。

確認3:友だち追加した後、どんな連絡が来るか自分で予測できるか

無料の先にどんな勧誘が来るか、登録前に一度立ち止まって考えてみてほしい。想像がつかないなら、それは情報の非対称そのものだと思う。

迷ったとき用の一言 「この実績、母数と期間を教えてもらえますか」。市況ニュースのふりをした勧誘は、たいていこの一問には答えない。

この記事のまとめ

  • 市況ニュースという中立な体裁の中に、投資顧問ランキング・自動売買ツールの実績表示・LINE登録という3つの導線が差し込まれる型がある
  • 著名人便乗を含むSNS投資勧誘の相談件数は2021年度52件から2023年度1,629件へ約9.6倍に急増している(国民生活センター)

確かめるのは記事の読みやすさではなく、ランキングに載る業者の登録状況と、実績表の母数・期間だ。