「27万8,000円〜」としか書かれない高額投資塾の価格表示を、特定商取引法の必須表示事項で確かめた
個別の事業者は名指しせず、価格表示という一つの型として、お金の流れで調べた。無料の動画講座に登録すると届く、投資塾の申込みページを何本か並べてみた。ほとんどのページで、価格のところだけ書き方が妙に短い。「27万8,000円〜」。この「〜」の先が、どこにも見当たらない。今号で洗ったのは、この「〜」の中身と、法律が本来求めている表示の量との差についてである。
「〜円から」で止まる価格表示
典型的な作りはこうだ。無料の動画を数本見せたあと、個別相談やLINEでのやり取りに進む。そこでようやく金額の具体的な話になるのだが、事前にサイトへ載っている数字は「27万8,000円〜」のような、下限だけの表記にとどまる。上限がいくらなのか、追加のコースがあるのかどうかは、個別のやり取りに進まないと分からない。
似た型の講座では、最初に案内された金額に加えて、あとから約25万円ほどの追加コースが案内された例も見かける。つまり「〜」の中には、最初に示された額を超える金額が入っている余地がある。私はこれを、価格の高さそのものより「価格の見せ方」の問題として扱いたい。
通信販売の広告に、本来書かれているはずの項目
この「〜」の是非は、印象の話ではなく、法律が具体的に定めている。特定商取引法第11条は、通信販売の広告に「販売価格」「代金の支払時期及び方法」「商品の引渡時期又は役務の提供時期」「契約の申込みの撤回又は解除に関する事項」などを表示しなければならないと定めている。消費者庁の解説は「『返品についてはその都度ご相談に応じます』などの表示は、商品の購入前にあらかじめ返品の可否を告げることにはなりません」とも述べている。個別相談まで上限価格や解約条件を伏せる作りは、この表示義務の考え方とは方向がずれていると私は見ている。
もちろん、下限価格だけを示して詳細は個別見積りとする商売自体は、投資塾に限らず存在する。ただ、通信販売の広告として不特定多数に呼びかけている以上、価格・支払時期・解除条件は「聞かなければ分からない」ものではなく、「聞く前に読める」ものであってほしい。私はそう考えている。
入口は無料、金額の話は個別相談で。段階を踏ませる型
もう一つの型は入口にある。無料の動画講座やLINE登録を入口にして、段階を踏んで有料の案内へ進む設計そのものは、投資分野に限った話ではない。国民生活センターは、副業や投資の「情報商材」について、「情報商材そのものだけでなく、情報商材をきっかけに、電話やWeb会議で高額な副業コンサルティングやサポート契約、ビジネスセミナー等を勧誘されるケースが目立ちます」と整理している。無料の入口から高額な契約へ進む導線は、投資塾だけのものではなく、繰り返し観測されてきた型だということになる。
消費者庁も2025年6月、SNS広告からLINEへ誘導し、高額なサポートプラン契約を結ばせた事業者に関する注意喚起を出している。「儲けが出なければ返金保証がある」などと伝えて高額な契約を結ばせ、実際には報酬を得られなかったという相談が各地の消費生活センターに寄せられていた、という内容だ(対象は副業アフィリエイトを扱う事業者で、投資塾そのものの事案ではない)。それでも、SNS広告からLINEへ、そして金額が見えないまま高額な契約へという運び方そのものは、業種を問わず行政が名指しで注意を促してきた型だと、あらためて確認しておきたい。
巻き込まれないための、ゆるい行動ルール
気合いで見抜こうとすると疲れるので、私は「いつものクセ」にしてしまうのがいいと思っている。一番効くのは、金額を先に尋ねること。「上限はいくらですか」を口ぐせにしてしまえば、それだけで話の運び方が見えてくる。そのうえで、
- 申込みページに「〜円」より先の上限価格が書かれているかを確かめたか
- 支払時期・解約や返金の条件が、個別相談の前に文章で読めるかを確かめたか
- 「27万8,000円〜」の「〜」に、追加コースが隠れていないかを尋ねたか
- 無料の入口から、最終的にいくらの契約まで進む設計になっているかを事前に把握したか
- その場で契約せず、いったん持ち帰って調べる時間を確保したか
この記事のまとめ
- 「27万8,000円〜」のように下限だけを示し、上限を個別相談まで伏せる価格表示の型がある
- 通信販売の広告には、価格・支払時期・解約条件などを表示する法律上の義務がある
- 無料の入口から段階を踏んで高額契約へ進む導線は、業種を問わず行政の注意喚起で繰り返し指摘されている
個別相談の前に、上限価格と解約条件が文章で読めるかどうか。それだけを確かめる習慣が、契約前に立ち止まる材料になる。