「何年も無敗」を謳う投資塾の実績表示が、自社公開の月次成績表そのものと食い違う型を、金融商品取引法の禁止行為で確かめた
無料のメール講座に登録すると、いくつかの投資塾から似た形の広告が届く。「何年も無敗」「累計で1000%を超えた」という見出しに続いて、月ごとの成績を並べた表がついてくる。今号で洗ったのは、この表そのものの中身を、見出しの主張と突き合わせるだけで見えてくる食い違いについてである。受講した人の口コミを待たなくても、広告主が自分で公開している資料の中だけで、話が合わなくなる型がある。
「無敗」の見出しと、同じ資料の中の月次成績表
典型的な作りはこうだ。ページの上のほうに「20年間、マイナスなし」というような太字の見出しがある。そのすぐ下、あるいは少し下にスクロールした先に、月ごとの損益を並べた実績表が置かれている。この表を上から下まで、一行ずつ丁寧に読んでみてほしい。マイナスの月が、普通に混ざっていることがある。
見出しと表が、同じページの中で矛盾している。これは第三者による検証を待たなくても、公開されている資料だけで気づける食い違いだ。私はこの「見出しと詳細データの不一致」を、まず最初に確かめる項目にしている。つまり、疑うための特別な調査は要らない。表を最後まで読むだけでいい。
「無敗」「必ず儲かる」は、実は勧誘の中でやってはいけない言い方
ここは仕組みの話になる。投資の助言や勧誘の場面で「不確実なことを確実であるかのように告げる」行為は、印象の問題ではなく、法令で名指しされた禁止行為である。金融商品取引法第38条は、不確実な事項について断定的判断を提供したり、確実だと誤解させるおそれのある告げ方で勧誘したりすることを禁じている。「無敗」「必ず儲かる」という言い切りは、まさにこの「断定的判断」に近い型だと私は見ている。
加えて、投資助言業を営むには本来、金融庁への登録が要る。金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」は、無登録業者について「投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず」と述べている。つまり、登録の有無すら、読者が自分で確かめられる項目だということになる。金融庁は無登録で金融商品取引業を行った者の名称等の一覧も公表している。名前を検索してみるだけで、一つの判断材料になる。
広告表示そのものにも、根拠を示す義務がある
実績の表示は、法律上も「言いっぱなし」が許される場所ではない。通信販売の広告について、特定商取引法第12条は「著しく事実に相違する表示」「実際のものより著しく優良であると誤認させる表示」を禁じている。さらに景品表示法の運用では、表示の裏付けとなる根拠を事業者に示させる制度がある。消費者庁の不実証広告規制によれば、事業者が合理的な根拠資料を提出できない場合、その表示は不当表示として扱われる。自社で作った成績表は、この「合理的な根拠」に当たるかどうか、私にはかなり怪しく見える。証券会社が発行する取引報告書とは、重みがまったく違う。
入口は無料、出口は高額。段階を踏ませる型
もう一つの型は、入口の作りにある。まず無料のメール講座や説明会に登録させ、いくつかの動画を段階的に見せたうえで、最後に有料の本講座へ案内するという流れだ。似た構造は投資分野に限らない。消費者庁は2022年、「簡単な作業で稼げる」と勧誘してガイドブックを買わせ、その後の電話勧誘で高額なサポートプランを契約させる事業者への注意喚起を出している。無料や低額の入口から、段階を踏んで高額な契約へ進ませる型は、こうした行政の注意喚起で繰り返し名指しされてきたパターンでもある。
この種の「もうけ話」に関する相談は、決して過去の話ではない。国民生活センターの報道発表資料は、副業や投資の情報商材に関する相談件数が「2013年度に比べ7倍超」に増えたと報告している。件数の推移自体が、この型がいまだに一定数の人を巻き込んでいることを示している。警察庁のSNS型投資詐欺の解説も、著名人や講師が無料で確実に儲かる話を教えることは基本的にない、と注意を促している。
- 実績表の「合計」だけでなく、月ごとの内訳をすべて数えたか
- その実績は証券会社発行の取引報告書か、自社作成の資料かを見分けたか
- 講師・運営者の投資助言業登録の有無を、金融庁の無登録業者リストで確かめたか
- 「今日中」「今だけ」と、比較検討する時間を奪う言葉が使われていないか
- 無料の入口から、最終的にいくらの契約へ進む設計になっているかを事前に確認したか
この記事のまとめ
- 「無敗」「累計1000%超」の見出しと、同じ資料内の月次成績表が食い違う型がある
- 断定的な実績表示は金融商品取引法・特定商取引法上の禁止行為に触れうる
- 無料の入口から段階を踏んで高額契約へ進む構造は、行政の注意喚起で繰り返し指摘されている
合計の見出しではなく月次の内訳を数えること、実績が自社資料か公式な取引履歴かを見分けること。この2つだけでも、契約前に立ち止まる材料になる。