「無料動画を見るだけで分かる」というFX自動売買の紹介が、実績を動画と画像だけで示したまま高額な参加費へ進ませる型を、金融庁の注意喚起と特定商取引法の誇大広告禁止規定で調べた
「無料の動画を見るだけで、FXの自動売買システムの中身が分かります」。この誘い文句をきっかけにした相談が、編集部にも届くようになった。動画は段階的に配信され、最後に高額な有料コミュニティへの参加が案内される、という流れが多い。今号で扱うのは、特定の商品名や運営会社ではない。「無料動画→実績提示→高額な参加費」という設計そのものが、行政の注意喚起や相談事例の中で、すでに繰り返し確認されてきた型であるという点だ。
「なにもしなくても儲かる」という言葉自体、金融庁がすでに注意してきた
金融庁は「FX取引・暗号資産投資の勧誘」にご注意!!と題したページで、こう説明している。「『自動売買ソフトを使えば、なにもしなくても儲かる』などと言って、FX・バイナリーオプション・暗号資産等への投資を一方的に勧めてくるケースが以前より発生しています」(金融庁「FX取引・暗号資産投資の勧誘」にご注意!!)。「自動」「なにもしなくても」という言葉自体が、行政の注意喚起の中ですでに定型句として扱われている。今、目の前で自動売買システムを勧められている人にとっては初めて聞く話でも、監督官庁の記録の上では見慣れた文句だ、ということになる。
実績として示されるのは、動画と画像だけだった
この型を裏づける相談事例が、国民生活センターにも記録されている。「SNSで毎月高額な利益を得られるFXの情報商材や指導の宣伝をしていた。月利50%で月あたり20~30万円稼いでいるという動画広告もあった」(国民生活センター「簡単に高額収入を得られるという副業や投資の儲け話に注意!」2018年)。月利50%を謳う動画広告と、実際の取引口座の開示は別物だ。動画も画像も、編集して見せることができる。第三者機関の検証を経た実績かどうかは、動画を見ているだけでは判断できない――ここが、この型の急所だと私は見ている。
「無料」から始まり、気づけば数十万円という設計は、めずらしくない
高額な費用をいきなり提示すると、警戒されて終わってしまう。だから、多くの型は無料や少額から始まる。国民生活センターは2018年の時点で、「近年みられる手口では、初めから高額契約を勧誘するのではなく、無料や少額の情報商材を販売してから高額契約を勧誘する事例があります」と説明している(国民生活センター「簡単に高額収入を得られるという副業や投資の儲け話に注意!」2018年)。消費者庁も2024年5月、「投資や副業といった儲け話をきっかけにした消費者トラブルが年齢を問わず依然として続いています」として、SNS経由の誘いに注意を呼びかけている(消費者庁「SNSなどを通じた投資や副業といった『もうけ話』にご注意ください!」)。無料の入口と、有料の出口の間にどれだけの段差があるか。ここを事前に聞かず、動画を追いかけているうちに次の画面へ進んでしまう、というのがこの型の運び方だ。この価格の跳ね上がり方自体は、前号(「通常1万円が今だけ無料」という早期リタイア系ウェビナーが、本登録で数十万円に跳ね上がる型を、価格の見せ方で調べた)で詳しく調べている。
「必ず」「絶対」と広告は言い切るのに、その脇には正反対の一文がある
将来の利益を断定的に約束する説明は、そもそも法律の想定の外にある。消費者契約法第4条第1項第2号は、事業者が将来の変動が不確実な事項について「断定的判断を提供すること」を、契約取消しの対象となる行為として定めている(消費者契約法第4条(e-Gov法令検索))。特定商取引法第12条も、通信販売において「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」を禁じている(特定商取引に関する法律第12条(e-Gov法令検索))。景品表示法第5条第1号も、商品・役務の内容について「実際のものよりも著しく優良であると示し」一般消費者を誤認させる表示を優良誤認表示として規制している(景品表示法第5条(e-Gov法令検索))。「必ず」「絶対」という広告の言葉と、契約書面の隅に置かれた「利益を保証するものではありません」という注記は、同じ商品についての説明のはずなのに、向いている方向が逆だ。この矛盾に気づいたら、それ自体を一つの警告として受け取ってほしい。
高いリターンを狙う手法ほど、資金が一気に溶ける仕組みになっていることがある
自動売買システムの「戦略」として、負けた分を次の取引の金額に上乗せして取り返そうとする手法が使われることがある。この手法名そのものを名指しした公的な注意喚起は、今回調べた範囲では確認できなかった。ただし金融庁は、外国為替証拠金取引について「比較的少額で取引できる反面、差し入れた証拠金以上の多額の損失が生じるおそれのある非常にリスクの高い商品です」と説明している(金融庁「いわゆる外国為替証拠金取引について」)。取り戻すための取引が、逆にまとまった資金を一度に失う設計になっていないか。「必ず稼げる」という言葉の裏に、この種の仕組みが隠れていないかを確認したい。この自動売買ツールの実績表示という論点は、前々号(日経平均の市況ニュースという体裁が、投資顧問ランキングと自動売買ツールの実績表示への入口に変わる型を、表示の根拠で調べた)でも扱った。
- 「自動売買ソフトを使えば、なにもしなくても儲かる」という言葉が出てきたら、金融庁の注意喚起に当てはまっていないか調べる
- 実績として示されているのが動画・画像だけで、第三者機関の検証や実際の取引口座の開示がないか確認する
- 「無料」「今だけ」の入口から、最終的にいくらまで請求される可能性があるのか、参加前に総額を聞く
- 広告の「必ず」「絶対」という言葉と、契約時に渡される書面の注記が矛盾していないか読み比べる
- 負けを取り返す設計の売買手法を勧められたら、最大でいくら失う可能性があるかを自分で計算する
すでに参加費を支払ってしまった方へ。まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上支払いを増やさないことが先だ。順序はこうなる。①追加の支払い・上位プランへの案内に応じない ②契約書・広告動画のスクリーンショット・やり取りの履歴を残す ③勧誘のされ方(誰から、どこで、どんな文句で)を書き出しておく ④消費者ホットライン「188」に相談する。私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。
この記事のまとめ
- 「なにもしなくても儲かる」という自動売買ソフトの勧誘文句は、金融庁がすでに注意喚起してきた型と一致する
- 実績が動画・画像だけで示され、無料から始まり気づけば高額な参加費へ進む設計、広告文言と契約書面の注記が食い違う点も、行政の資料で繰り返し確認できる型の一部だ
確かめるのは、動画の熱量ではなく、その実績を動画の外側で確認できるかどうかだ。迷えば188へ。それが一番確かだ。