第304号黒岩検閲済 2026年7月6日 発行(不定期刊/前号:7月6日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|SNS好意的投稿×出金凍結の型

SNSで見かける「儲かった」投稿をきっかけに近づく投資コミュニティ勧誘が、少額の出金には応じながら高額出金だけを止める型を、金融庁の注意喚起と警察庁のSNS型投資詐欺確定値で調べた

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黒岩警戒度

SNSのタイムラインに、「この取引所で結果が出た」「コピートレードを試したら本当に増えた」といった投稿が流れてくる。フォローしている発信者や、フォロワーの多いアカウントがそう書いているのを見て、興味を持って近づく——そういう入り方をする投資勧誘がある。招かれた先の投資コミュニティは、しばらくは少額の出金にも応じてくれる。だが、まとまった金額を動かそうとした途端、様子が変わる。今号で扱うのは特定のサービスでも案件でもない。SNS上の「儲かった」という投稿を入口に、少額の出金には応じながら高額出金だけを理由をつけて止める勧誘——この型を、金融庁の注意喚起と警察庁の最新確定値から調べた。

「儲かった」という投稿は、なぜタイムラインに流れてくるのか

警察庁の確定値によれば、令和7年の「SNS型投資詐欺」は認知件数9,523件・被害総額1,288.0億円で、既遂1件あたりの被害額は1,358.2万円に上る(令和6年は6,413件・871.1億円)。同資料は当初接触ツールも集計しており、最多は「Instagram」で、次いで「YouTube」が前年の約21倍に増えたと記録されている(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」令和8年5月22日発表)。誰かに直接誘われたわけでもなく、流れてきた投稿を見て自分から近づく——そういう受け身の入り方も、この統計の裏にある動線の一つだと私は見ている。

「コピーするだけ」という誘い文句の実際

金融庁は、この種の勧誘の実態をこう説明している。「セミナーで勉強すれば、勝てるようになる」「自動売買ソフトを使えば、なにもしなくても儲かる」などと謳い、外国為替証拠金取引(FX取引)や暗号資産に関する取引等への投資を勧誘する事例がある(金融庁「『FX取引・暗号資産投資の勧誘』にご注意!!」令和5年4月4日)。「プロの取引をそのままコピーするだけ」という言い方も、この「自動売買ソフトを使えば知識不要で儲かる」という説明と、実質は同じ構造だと考えている。勧誘の運び方についても金融庁は触れており、「情報交換や勉強会などから始まり、その後、虚偽の成功談をもとに投資話を持ち掛ける」としている(金融庁「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」令和7年12月23日公表・令和8年3月5日更新)。好意的な投稿という一見中立な入口の先に、この運びが控えている。

投稿の「実績」は、外部から確かめようがない タイムラインの投稿も、招かれた先のコミュニティで共有される報告も、こちらから裏を取る手段がない。金融庁が「虚偽の成功談をもとに投資話を持ち掛ける」ケースを説明しているとおり、見せられる実績は最初から検証できない前提で受け止めたほうがいい。

誘導先が無登録なら、日本の投資家保護の外に出る

誘導先の取引所が日本の登録を受けていない場合、その時点で日本の投資家保護の枠外に出ることになる。金融庁は「海外所在業者であったとしても、日本の居住者のために又は日本の居住者を相手方として金融商品取引を業として行う場合は、金融商品取引業の登録……が必要」であり、無登録での営業は違法だと明記している(金融庁「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」平成21年7月31日公表・令和6年6月28日更新)。「登録を受けていない『無登録業者』は、投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず……」とも述べている(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」令和5年6月30日公表・令和6年6月28日更新)。海外の認可の重さそのものの見極め方は、前号(「プロの取引を真似するだけ」と誘うコピートレード勧誘が、緩い海外ライセンスを盾に閉鎖チャットで含み益を見せ、出金の段で拒む型を、無登録営業の違法性で調べた)で扱った。今号はその先、「出金」の局面に絞って調べる。

少額は通り、高額だけ止まる——出金の壁

金融庁はこの局面をこう説明している。「最初のうちは出金できるが、まとまった金額を出金しようとすると理由をつけて断られ、その後出金できなくなる」。さらに「しばらくは利益が出たように装い、少額の出金ができることもあります」としつつ、「高額な出金要請をすると、突然、連絡が取れなくなったり、口座凍結を解除するためと称して、手数料、保証金や税金の支払いといった名目で、さらに高額な入金を要求されるケースが多くみられます」と記している(前掲・金融庁「それ詐欺です!」)。少額の出金にいったん応じるのは、信頼させるための仕込みにすぎない、と読める。では、その少額出金の裏で、まとまった金の出どころはどう説明されていただろうか。

数字でほどく——「投資詐欺」単独と「投資・ロマンス詐欺」合算の違い

先に挙げた9,523件・1,288.0億円は「SNS型投資詐欺」単独の確定値だ。恋愛感情を利用する手口まで合わせた「SNS型投資・ロマンス詐欺」全体では15,168件・1,834.3億円になるが、これは別の集計であり、混同しないほうがいい(前掲・警察庁確定値)。投資の話だけを取り出しても、件数・金額とも前年から大きく伸びている、という規模感は変わらない。

  • SNSで見かけた「儲かった」投稿は、投稿者自身が確かめたものではないと考える
  • 「知識不要」「コピーするだけ」という誘い文句は、自動売買の勧誘と同じ型だと知っておく
  • 誘導先の取引所が日本の金融商品取引業登録を受けているか、契約前に確かめる
  • 少額の出金ができたことを、まとまった金額を入れる根拠にしない
  • 出金の際に「手数料」「保証金」「税金」名目の追加入金を求められたら、それ以上払わない
迷ったとき用の一言 「この取引所は、日本の金融商品取引業に登録されていますか」。淀みなく答えられない相手とは、そこで終えていい。すでに入金し、出金を拒まれている方は、金融庁「金融サービス利用者相談室」(投資詐欺等に関する相談窓口)、消費者ホットライン188、または警察相談専用電話「#9110」へ。188は「地方公共団体が設置している身近な消費生活センターや消費生活相談窓口を案内するもの」であり、専門の相談員につながる窓口だ。

この記事のまとめ

  • SNSの「儲かった」投稿をきっかけに近づく投資コミュニティ勧誘は、警察庁の統計でもInstagram経由の接触が最多という形で裏づけられている
  • 誘導先が無登録業者の場合、少額出金に応じたあとで高額出金だけを理由をつけて止める「出口」も、金融庁が繰り返し注意喚起している型に一致する

確かめられるのは、誘導してきた取引所が日本の登録を受けているかどうか、それだけだ。「少額なら出金できた」という実績は、その代わりにはならない。