第301号黒岩検閲済 2026年7月5日 発行(不定期刊/前号:7月5日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|無料メール登録×好意的な声演出の型

「完全無料・メールアドレスだけ」のAI株情報サービスを勧める紹介記事が、値上がり実績と好意的な声を並べて信頼を演出する型を、オプトイン規制とお金の流れで調べた

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黒岩警戒度

「AIが24時間、東証全銘柄を自動解析。エントリー目安と目標株価つきで、急騰候補を無料でお知らせします」。そんな触れ込みのAI株情報配信サービスを、好意的な利用者の声とともに勧める紹介記事を見かけた。登録に必要なのはメールアドレスだけ、クレジットカード番号は不要と念まで押してある。過去の推奨銘柄には「+348%」のような値上がり率が並び、利用者の声も「迷わなくなった」「個人情報を教える必要がなく安心」といった好意的なものが中心で、ごく小さな注意点がひとつだけ添えられている。今号で扱うのは特定のサービスでも記事でもない。無料の入口と、好意的な声を並べる紹介の仕方——この組み合わせがくり返し使われる型を、お金の流れの側から調べた。

「完全無料・メールアドレスだけ」が入口に選ばれる理由

クレジットカードも電話番号もいらない、メールアドレスだけで今すぐ登録できる——この間口の広さは、読み手の警戒をゆるめるためだけの工夫ではないと私は見ている。消費者庁は、事業者が電子メール広告を送るための制度についてこう説明する。「改正後は電子メール広告を送信する前にあらかじめ消費者の『請求や承諾』を得ることが義務付けられ、こうした請求や承諾を得ていない電子メール広告の送信は原則禁止されます(オプトイン規制)」(消費者庁「電子メール広告規制(オプトイン規制)のポイント」)。つまり事業者が繰り返しメールを送るには、まず読み手からこの「請求・承諾」を得る必要がある。「無料でメールアドレスだけ」という登録画面は、値上がり実績の見返りという体裁を取りながら、実はこの承諾を得るための入口としても機能している。登録後にどんな配信が続くのか、私はまずそこを確かめることにしている。

「情報」を売るという手口自体は、今に始まった話ではない

好意的な声を並べて信頼を演出する紹介記事の先で、閲覧者が案内される場所は一様ではない。無料の情報配信で終わる場合もあれば、その先で有料の会員プランや個別相談へ進む場合もある。国民生活センターは、若者向けの注意喚起の中でこんな相談事例を紹介している。「株取引で1年後に2,000万円もうかるというサイトを見つけた。もうかる株の情報をメールで提供するとのことで、20万円で情報を購入するよう勧められた」(国民生活センター「情報商材や暗号資産(仮想通貨)のトラブル」、2021年6月)。同資料は、情報商材に関する消費生活相談が2018年度の約8,700件をピークに全体では減少傾向にある一方、10歳代・20歳代の若者が契約当事者になっている相談は件数・割合ともに増加しているとも指摘する。「無料の情報配信」と「有料の情報商材」は、紹介記事の一枚のページの中では地続きになっていることがある。

値上がり実績を教える行為そのものにも、登録制度がある 金融庁は「日本で登録を受けずに金融商品取引業……を行うことは違法です」と注意を促し(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」)、無登録で金融商品取引業を行っているとして警告書を発出した業者の名称等を公表している。個別銘柄のエントリー目安や目標株価を継続的に配信することが、この登録の対象にあたる場合もある。無料か有料かは、登録の要否を決める基準ではない。

無料の先で、LINEなど個別のやり取りへ進んだときに何が起きるか

紹介記事や無料配信そのものが問題という話ではなく、その先で個別のLINEやグループチャットへ案内された場合に、何が起きうるかを知っておきたい。金融庁は投資詐欺等の相談事例として、「LINEのグループ内では、犯人たちがいわゆるサクラとして複数のアカウントを使って投資が成功しているかのように装い、参加者が投資を行いたくなるように仕向けるケースもあります」と説明している(金融庁「投資詐欺等に関する利用者からの相談事例等」)。好意的な声が並ぶ紹介記事から、個別のやり取りへ進んだ先に同じ構図が待っていないか。そこは自分の目で確かめるほかない。

数字でほどく——統計に見る規模

国民生活センターは、SNSをきっかけに著名人を名乗る、あるいはつながりがあるとして勧誘される金融商品・サービスのトラブルについて、相談件数が2021年度52件から2023年度1,629件へ約9.6倍に急増し、「いったん振込してしまうと、被害回復が困難です」と注意を呼びかけている(2024年5月発表)。警察庁の暫定値によれば、令和7年上半期のSNS型投資・ロマンス詐欺は認知件数2,884件・被害額351.2億円で、前年同期からは件数・被害額とも減少しているものの、依然として高水準が続いている。無料の紹介記事は、この統計の入口の一つになりうると私は見ている。

紹介記事に出会ったときの確認ポイント

華やかな値上がり実績や好意的な声を疑うより、確かめられる事実を先に見る方が早い。

  • 値上がり実績を見たら、対象銘柄の母集団・計測期間・計測条件が示されているかをたずねる
  • 紹介記事や登録画面に、運営事業者の氏名・住所・電話番号などの表示があるかを確かめる(特定商取引法第11条の表示義務
  • 個別銘柄の売買タイミングを継続的に勧められたら、投資助言・代理業として登録されているかを金融庁の無登録業者の公表で照らす
  • 登録後にどんなメール・LINEが届くようになるかを、登録前に一度確認する
  • 無料登録の先で個別のLINEやグループチャットへ誘導されたら、その場で決めず持ち帰る
迷ったとき用の一言 「この値上がり実績、いつ・どの銘柄群を対象に計測したものですか」。淀みなく答えられる相手とだけ、次の話をすればいい。はぐらかされたら、それはそれで答えだと思う。迷えば消費者ホットライン188へ。

この記事のまとめ

  • 「完全無料・メールアドレスだけ」という入口は、電子メール広告のオプトイン規制における「請求・承諾」を得るための入口としても働きうる
  • 「無料の情報配信」と「有料の情報商材」は地続きになっていることがあり、国民生活センターは同種の相談事例を報告している

確かめられるのは、値上がり実績の母集団・運営事業者の表示・登録の有無、そして登録後にどんな配信が続くかだけだ。好意的な声の華やかさは、その代わりにはならない。