「評判を多角的に分析」という体裁のレビュー記事が、断定的な体験談の数字とくり返しリンクで無登録の個別指導へ導く型を、登録の要否と警察庁統計で調べた
経済の動向をわかりやすく解説してくれる専門家を紹介する記事、それ自体は珍しくない。今号で扱いたいのは特定の記事や人物ではない。その中でも「この人の評判は本物か」というふうに、あえて多角的・批判的な視点を装って書かれた評価記事の先に、その専門家自身とは無関係な「短期間で資金が数倍になった」という体験談の数字とともに、投資の個別指導サービスへの同じリンクが、段落を変えて何度も差し込まれている——という型を、今号は調べた。
「多角的に分析」という体裁が、なぜ効くのか
経歴を一方的に持ち上げるだけの記事より、「楽観的すぎるという批判もある」といった一言を混ぜた記事のほうが、読者には中立に見える。批判的な視点を一つでも見せれば、書き手そのものへの警戒はゆるみやすい。国民生活センターの機関誌『国民生活』2025年1月号に寄稿された行動経済学の解説は、「有名人や権威のある肩書の人が登場する広告(中略)が、詐欺被害のきっかけになっています」と指摘し、特に若い人や高齢者は肩書のある人物を疑いにくい傾向があるとも説明している。「批判も交えて多角的に評価している」という体裁そのものが、権威性を疑わせない仕掛けとして働く、と私は見ている。
で、その利益の出どころは?
評価記事を読み終えた先に置かれているのは、たいてい同じ一つのリンクだ。しかも一度きりではなく、段落を変えるたびに同じ文言・同じリンク先へ何度も誘う作りになっている。誘導先で謳われるのは「短期間で資金が数倍になった」という体験談の数字と、個別のマンツーマン指導だった。だが、有償で特定の相手に投資判断を助言する行為には、本来登録が要る。金融庁は投資助言・代理業を「投資顧問契約に基づく、有価証券の価値等又は金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に関する助言」と定義している。関東財務局のQ&Aは、誰でも自由に見られるホームページの情報にとどまる場合はこの登録の対象外になりうるとする一方、特定の相手に一対一で有償の助言を行う形になれば、この適用除外には当てはまらないという一般的な整理を示す(個別の事案ごとに該当するかは変わりうる、とも書かれている)。「マンツーマン」という言葉の先にあるのが、この一対一の有償助言に当たるのかどうかは、当然だが確かめる価値がある。警察庁のSOS47は、この型そのものについて「著名人が無料で投資教室を開催したり、確実に利益が出る投資話を無料で教えたりすることは基本的にありません」と明記している。で、その利益の出どころは?――評価記事を読んだ余韻ではなく、リンク先で誰が何を、どういう立場で教えているかだ。
数字で見る、著名人便乗の広がり
印象だけの話ではないことを、数字で見ておく。国民生活センターの集計では、著名人を名乗る・つながりを示す投資勧誘の相談件数は2022年度170件から2023年度1,629件へ、約9.6倍に急増している(2021年度は52件)。同資料は「いったん振込してしまうと、被害回復が困難です」と注意を促す。警察庁の確定値でも、令和7年のSNS型投資詐欺は認知件数9,523件・被害総額1,288.0億円にのぼり、令和6年の6,413件・871.1億円から大きく増えている。当初の接触手段は「バナー等広告」が最多で、接触ツールはInstagramが最多、YouTube経由は前年の約21倍に増えたという。バナー広告に触れた後、LINEの「投資グループ」へ誘導される割合は約9割にのぼるとも記されている。
「批判めいた一言」と「くり返すリンク」という仕掛け
今回見た型に共通するのは二つの仕掛けだ。一つは、評価記事の中にあえて批判的とも取れる一文を混ぜ、中立を装う書き方。もう一つは、同じ勧誘リンクを、段落を変えて何度も置くという作り方だ。クリックする機会を増やすほど、どこかの段落で読者の心が動いた瞬間を捉えやすくなる、と私は見ている。加えて「短期間で資金が数倍になった」という体験談の数字が添えられていた。ただ、この数字が誰の、いつの、どういう条件での結果なのかを裏付ける資料は、記事のどこにも見当たらなかった。
確認しておきたい3つのこと
評価記事の内容そのものを疑う必要はない。確かめるべきは、その記事とリンク先が、本当に地続きなのかどうかだ。
確認1:評価記事とリンク先は、同じ運営者・同じドメインか
URLを見比べてほしい。運営者名やドメインが違うなら、紹介されている専門家自身が運営・監修している情報ではない可能性が高い。「批判も書いてあるから中立」という印象だけで、この確認を省かないでほしい。
確認2:「体験談の数字」に、確かめられる裏付けがあるか
「資金が数倍になった」という数字は、誰の、いつの結果か。裏付けとなる資料が示されないなら、その数字は検証のしようがない、というだけの話だ。
確認3:個別に投資の判断を助言する相手が、金融庁の登録を受けているか
マンツーマンでの指導や助言をうたうなら、その事業者が登録業者検索に載っているかを確かめてほしい。見当たらないなら、それ自体が答えになる。
この記事のまとめ
- 経歴紹介に批判めいた一言を混ぜる「多角的評価」の体裁は、中立に見せて警戒をゆるめる仕掛けになりやすい
- 著名人便乗の投資勧誘相談は2022年度170件→2023年度1,629件へ急増(国民生活センター)。警察庁の確定値でも令和7年のSNS型投資詐欺は9,523件・1,288.0億円にのぼる
確かめるのは評価記事の中立さではなく、リンク先の運営者と、金融庁への登録の有無だ。