第285号黒岩検閲済 2026年7月4日 発行(不定期刊/前号:7月3日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
詐欺アラート研究所詐欺アラート研究所の角印

FRAUD ALERT LAB ── 投資詐欺・悪質商法 調査報

一面縮刷版・記事一覧 > 経歴紹介記事→高収益レッスンの型
調査報告|経歴紹介記事→高収益レッスンの型

実在のエコノミストの経歴紹介記事が、無関係な「億り人の無料レッスン」への入口に変わる型を、リンクの流れで調べた

公開 最終更新 読了 約5分
黒岩警戒度

テレビやラジオ、ウェブメディアで経済の動向をわかりやすく解説してくれるエコノミストやアナリスト。その人の経歴や専門性をていねいに紹介する記事そのものには、何の問題もない。ただ、今号で調べたいのは特定の記事や人物ではない。実在する専門家の経歴紹介という体裁が、記事の末尾やバナーリンクから、その専門家自身とは無関係な「億り人が資産の増やし方を無料で教えてくれるマンツーマンレッスン」への入口として使われる、という導線の型だ。

なぜ「経歴紹介」が入口として機能するのか

経歴紹介記事を読み終えた読者は、たいてい「この人の話は信頼できそうだ」という感覚を積み上げている状態にある。そこで記事の続き、あるいは同じページのバナーから別サイトへのリンクに触れると、直前まで読んでいた専門家への信頼の余韻をまとった状態でクリックすることになる。リンク先が、紹介されていた専門家自身のサービスなのか、まったく無関係な第三者の勧誘なのかを、読者はその場では区別しにくい。経歴が具体的で立派であるほど、この「信頼の持ち越し」は起きやすくなる

で、その利益の出どころは?

経歴紹介記事の先にある「無料レッスン」やLINE相談は、紹介されている専門家自身が提供しているとは限らない。国民生活センターは2024年5月、SNSをきっかけに著名人や専門家を騙る勧誘についての消費者トラブルが急増していると発表し、「著名な投資家や経済学者等を名乗っていても、本人に無断で写真や氏名等を使用した勧誘が横行しています」と説明している。この報道発表の対象には「有名評論家や学者、投資家、アナリストなどに加え、これらのアシスタント、弟子、親族などといった関係者を名乗る相談」も含まれると明記されており、経済アナリストの肩書がそのまま信用の材料に使われる構図は、この統計が対象とする範囲そのものだ。「運用資金が7.7倍になった」「億り人になれる」といった断定的な収益の匂わせは、金融商品取引法第38条が禁じる「不確実な事項について断定的判断を提供」する勧誘に触れうる一般論であり、報酬を得て投資助言を行う事業には内閣総理大臣の登録が要る。で、その利益の出どころは?――経歴紹介記事を読んだ余韻ではなく、リンク先で誰が何を売っていて、その事業者が何者なのかだ。

数字で見る、著名人・専門家便乗の広がり

印象だけの話ではないことを、数字で見ておく。国民生活センターの集計では、著名人を名乗る・つながりを示す投資勧誘についての相談件数は2021年度52件から2023年度1,629件へ、約9.6倍に急増している。同資料は「いったん振込してしまうと、被害回復が困難です」と注意を促す。金融庁も著名人を騙る者からの投資勧誘に繰り返し注意を呼びかけており、経歴・肩書を借りる手口が一時的な流行ではなく、継続して観測されている型だとわかる。

数字でほどく 著名人・専門家を名乗る/つながりを示す投資勧誘の相談件数は2021年度52件→2023年度1,629件(約9.6倍、国民生活センター2024年5月発表)。対象には「アナリスト」を名乗る・その関係者を名乗る相談も含まれる、と同資料は明記している。

確認しておきたい3つのこと

経歴紹介記事の内容そのものを疑う必要はない。確かめるべきは、その記事とリンク先が、本当に地続きなのかどうかである。

確認1:経歴紹介記事とリンク先は、同じ運営者・同じドメインか

経歴紹介記事のURLと、そこからリンクされている「無料レッスン」のURLを見比べてみてほしい。運営者名やドメインが違うなら、その専門家自身が運営・監修している情報ではない可能性が高い。

確認2:リンク先が、具体的な運用成果を断定的に謳っていないか

「運用資金が◯倍になった」「億り人になれる」というような、確実性を装った収益の表現は、それ自体が立ち止まる合図になる。本当に再現性のある話なら、無料で見知らぬ相手に教える理由を、一度考えてみたほうがいい。

確認3:紹介されている本人が、この先のレッスンや商材との関係を公式に認めているか

経歴紹介記事に出てくる専門家本人の公式サイトやSNS、出演番組の概要欄などに、同じレッスンや商材の告知があるかどうかを確認する。見当たらないなら、経歴と勧誘の間には何の関係もない、と考えたほうが安全だ。

迷ったとき用の一言 「この経歴紹介、本人はこの先のレッスンのことを知っていますか」。この一問に、経歴紹介記事の外側でも答えが確認できるかどうか。確認できないなら、それはそれで答えだと思う。

この記事のまとめ

  • 実在する専門家の経歴紹介という体裁は、それ自体とは無関係な勧誘への信頼の「持ち越し」を起こしやすい
  • 著名人・専門家を名乗る/つながりを示す投資勧誘の相談は2021年度52件→2023年度1,629件へ急増(国民生活センター)

確かめるのは経歴の立派さではなく、経歴紹介記事とリンク先が同じ運営者かどうか、そして紹介されている本人がその勧誘を公式に認めているかどうかだ。