第281号黒岩検閲済 2026年7月3日 発行(不定期刊/前号:7月3日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|無料株情報→有料助言の型

毎日の“注目銘柄・決算速報”を無料で配る株情報サイトの型を、情報の出どころとお金の流れで調べた

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黒岩警戒度

「通期予想を上方修正」「1Qは48%増益」「30円増配」——そんな数字の並んだ「本日の注目銘柄」「株価材料一覧」を、毎日無料で配る株情報サイトがある。決算一覧、IPO一覧と体裁も整っていて、毎朝それだけ見れば相場が分かる気にさせてくれる。今号で扱いたいのは、特定のサイトや執筆者ではない。誰でも無料で見られる公開情報を並べ直して「専門家の目利き」の顔を作り、毎日の接触で信頼を積ませたうえで、有料の銘柄情報や投資助言サービスへ読者を送る——この、無料株情報の型である。

「毎日の速報」が作る専門家の顔——この型の骨格

この型の入口は、煽らない。「必ず儲かる」とは言わず、上方修正や増益率という事実の数字だけを、毎日淡々と並べる。むしろ堅実に見える。だが、そこが要点だ。毎日決まった時間にリストが届くと、人は「この人は相場を見続けている専門家だ」と感じるようになる。派手な広告より、毎日の接触の積み重ねのほうが、信頼としてはよほど深く効く。

そして信頼が育ったころ、リストの脇や末尾に出口が置かれる。「プロ厳選の急騰候補はこちら」「無料で銘柄相談」。たどると、有料の投資顧問や銘柄情報サービスの登録ページに着く。毎日の無料リストは、この出口へ人を運ぶための道だった、という形になる。

で、その情報の出どころは?——数字でほどく

まず、リストに並ぶ「材料」の出どころをたどってみたい。上場企業の決算や業績の上方修正は、企業が取引所を通じて開示する適時開示情報である。東京証券取引所の適時開示情報閲覧サービス(TDnet)で開示当日から誰でも見られるし、有価証券報告書などの法定開示書類は、金融庁のEDINETで「24時間無料で誰でも閲覧可能」だ。つまり、「2.4億円から2.8億円に上方修正」という数字そのものは、そのサイトだけが知る情報ではない。元をたどれば、誰でもタダで見られる公開情報の並べ直しである。

それ自体は悪いことではない。新聞も本誌も、公開情報を編集して読ませる商売だ。ただ、ここで一度だけ割り算をしてみてほしい。毎日リストを作るには人手がかかる。サイトの維持にも金がかかる。それを無料で配り続けて、その費用は、誰が、何のお金で払っているのか。広告だけで回っているなら分かる。だが、出口に有料の銘柄情報サービスへの「紹介」が置かれているなら、答えはそこにある。無料リストの読者が、有料サービスの申込者に変わったとき、初めてお金が流れる。で、その利益の出どころは?——リストの精度ではなく、送客の数だ、という見方ができる。

お金の流れと「登録」に出る、3つの目印

公開情報の編集と、有料助言への送客との間には、制度の線が引かれている。私が見るのは次の3点だ。

目印1:無料リストの出口に、有料の銘柄情報・投資顧問への「紹介」が置かれている

毎日のリストのそばに「この銘柄の先を知りたい方は」「プロの投資顧問を無料診断」といった導線が常設されているなら、そのサイトの収益源は読者の会費ではなく、送客である可能性を考えていい。紹介される側が払う報酬で回っている場合、リストの役目は「当てること」ではなく「信頼を作って送り出すこと」に変わる。読み物としては同じ顔をしていても、お金の流れが変わると、書かれる目的も変わる。そこは分けて眺めたい。

目印2:報酬を得て銘柄を助言する側に、金融商品取引業の「登録」があるか

ここが制度の急所だ。報酬を得て、特定銘柄の投資判断について助言する事業は、金融商品取引法の「投資助言・代理業」にあたり、「金融商品取引業は、金融商品取引法に基づく登録等を受けた者でなければ行うことができない」(関東財務局)。登録の有無は、金融庁の「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」で誰でも確かめられる。2026年1月30日からは、名称や電話番号を入れるだけで調べられる金融事業者の一括検索機能も動いている。金融庁は無登録で金融商品取引業を行う者の名称も公表しているが、同じページで「掲載されていない者であっても、無登録営業に該当する行為を行っていることがあり得る」と留保している点も覚えておいてほしい。リストに載っていないから安全、ではない。登録が確認できて、初めて土俵に上がる。

目印3:「急騰確実」「必ず上がる」と言い切る

送られた先の有料サービスが「この銘柄は必ず上がる」「急騰確実」と言い切っているなら、そこで話は終わりでいい。証券取引等監視委員会は、金融商品取引法38条が「有価証券の価格等が必ず騰貴する、又は必ず下落するといった断定的な判断を示して勧誘することを禁止」していると解説し、禁止される勧誘の例として「この銘柄は絶対に値上がりします。」を挙げている。登録業者ですら言ってはいけない言葉を、迷いなく言える相手は何者か。断定は自信の証拠ではなく、規制の外にいる証拠に近い。

投資名目の被害は、いまも増え続けている 警察庁によれば、SNS型投資詐欺の被害は令和7年の1年間で認知件数9,538件・被害額約1,274.7億円(暫定値)。前年から件数で48.7%、金額で46.3%増えた。消費者庁は投資名目の勧誘について「投資資金の振込先に個人名義の口座を指定された場合、それは詐欺です」と言い切っている。無料の情報配信そのものは詐欺ではない。だが、そこで作られた信頼が、こうした被害の入口に使われる場面がある。入口が堅実に見えるほど、出口の確認を省きたくなる——その心理ごと、覚えておいてほしい。

立ち止まる手順と、すでに払ってしまった方へ

予防の側は、道具がすべて無料でそろっている。確かめる相手は、リストの的中率ではない。情報の出どころと、送られる先の登録である。

  • リストの「材料」は、TDnetEDINETで元の開示を自分で開いてみる。同じものが無料で読めるなら、その配信の「独自性」の正体が分かる
  • 有料の銘柄情報・投資顧問へ誘われたら、契約の前に金融庁の登録業者一覧一括検索機能で登録を確かめる
  • 「必ず上がる」「急騰確実」と言い切られたら、その時点で候補から外す。登録業者にも禁じられている言葉である
  • 毎日届く無料情報でも、「この人をなぜ信頼しているのか」を一度だけ言葉にしてみる。理由が「毎日届くから」だけなら、いったん持ち帰って調べる

すでに有料プランへお金を払ってしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。「上位プランなら取り返せる」「次の急騰銘柄で挽回できる」は、追加で取るための言葉だと考えてほしい。順序はこうなる。①追加で払わない ②配信画面・契約内容・入金記録を保存する ③カード会社や銀行など決済元に連絡する ④消費者ホットライン「188」、または警察相談専用電話「#9110」に相談する。私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。

迷ったとき用の一言 「この注目銘柄の情報は、どこの開示から来ていますか」。出どころが適時開示なら、あなたも同じものを無料で読める。出どころを答えられない、あるいは「独自ルート」としか言わないなら、それはそれで答えだと思う。

この記事のまとめ

  • 毎日の「注目銘柄・決算速報」の材料の多くは、TDnetやEDINETで誰でも無料で見られる適時開示の並べ直しである
  • 無料配信で信頼を積ませ、有料の銘柄情報・投資助言へ送客する導線と、送られる先の「登録」の有無が、この型の見きわめ所

確かめるのは、リストの精度ではない。情報の出どころと、勧める側が登録を受けた事業者かどうかだ。迷えば188へ。それが一番確かだ。