「あの著名人も推薦」の偽ニュース広告からLINE投資へ誘う勧誘の型を、お金の流れで調べた
「あの著名人が推薦している投資が、ニュースで紹介されていた」——スマホに流れてくる広告をたどると、見慣れた新聞社やテレビ局のロゴが並ぶ、記事のような体裁のページに出る。そこに書かれているのは、実在する経営者や芸能人の名前と顔写真だ。今号で扱いたいのは、その広告に出ていた特定のサービス名ではない。実在する人と会社の名前を「借りて」信用を作り、その先で個人のLINEへ連れ込む——この、信用の借り方の型である。
借り物の看板と、偽のニュース——この型の骨格
入口はたいてい一枚の広告だ。有名企業の経営者、テレビで見る芸能人、ときには政治家。その顔写真と名前が「この方法で資産を増やした」と語っているように見せられる。だが、その多くは本人の許可を得ていない。金融庁は、偽アカウントや偽広告について「公式アカウントやウェブサイトで掲載されている写真を無断転載したりして本人を名乗ることもあります」と注意喚起している。看板に本物の顔が並んでいても、それは信用が本物であることを意味しない。
広告のリンクを押すと、大手メディアを装った「記事風」のページに飛ぶことが多い。ここも作り物だ。金融庁は、この種の手口について「政府要人や著名人の画像を利用したフェイクニュースを作成し、特定の投資プログラムへの投資を呼び掛けている」と、正面から指摘している。同じ資料は、その先で「投資関連の投稿をフォローするとDMが届き、最終的にクローズドチャットへ誘導される」という流れも記している。つまり、借り物の顔で信用させ、公開の場から個人のやり取りへ連れ出す。そこまでがワンセットの入口装置である。
で、その「必ず儲かる」の出どころは?——数字でほどく
LINEの先で語られるのは、たいてい「AIが自動で売買する」「勝率は高い」「元本は保証する」といった言葉だ。まず、言い切り方そのものに目を留めてほしい。金融庁は詐欺的な投資勧誘の典型的な誘い文句として「上場確実ですので、必ず儲かります!元本も保証します!」を名指しで例示している。投資に「必ず」も「保証」も本来なじまない。迷いなく言い切れること自体が、正規の枠の外を疑う目印だ。
次に、売る側の動機を考えてみる。本当に高い確率で増やせる仕組みを持っているなら、その人はなぜ、見ず知らずのあなたにそれを配るのか。黙って自分の金で回し続けるほうが、はるかに儲かるはずである。他人に勧めるという行動そのものが、「その仕組みでは自分の金を張り切れない」ことの裏返しに近い。私はそう見ている。
この型が生む被害は、もう小さな話ではない。警察庁によれば、SNS型投資詐欺の被害は令和7年に9,538件・被害額約1,274.7億円(暫定値)にのぼる。看板の顔ぶれが有名であるほど、この数字の一件になりやすい、というのが実際のところだ。
お金の流れに出る、3つの目印
広告の見た目や記事風ページの作り込みは、いくらでも立派にできる。だが、信用のたどり方とお金の通り道には型が出る。私が見るのは次の3点だ。
目印1:信用が、まるごと「借り物」でできている
推薦しているとされる人物、掲載したとされるメディア、実績を裏づけるという企業——出てくる名前がどれも有名で、どれも「本人発」ではない。上に引いたとおり、金融庁は写真の無断転載による本人なりすましに注意を促している。確かめ方は単純だ。その著名人や企業の公式な発信元をたどり、当人がその投資を推薦している事実があるかを見る。公式に一切出てこないなら、その推薦は借り物だと考えていい。
目印2:入口は誰でも見られるのに、本番は閉じたLINEに移る
広告や記事風ページは不特定多数に見せるのに、肝心の勧誘は一対一のLINEや、限られた人だけのチャットグループの中で進む。金融庁も「SNS上の偽広告やURLをクリックすると、LINEのグループへの参加や詐欺サイトへのアクセスを誘導されます」と指摘している。公開の場で比較させず、第三者に相談させないために、話を閉じた場所へ移す。「有名人の広告で来たのに、気づけば個人のLINEで話が進んでいる」と感じたら、その導線自体が目印だ。
目印3:最初は出金でき、大きく出そうとした瞬間に止まる
この型の出口には、共通のふるまいがある。少額なら出金でき、成功体験を持たせる。ところが、まとまった額を引き出そうとすると理由をつけて止められる。金融庁の資料も「最初のうちは出金できるが、まとまった金額を出金しようとすると理由をつけて断られ、その後出金できなくなる」と記す。あわせて、振込先が個人名義の口座なら、それだけで結論はほぼ出る。消費者庁は「投資資金の振込先に個人名義の口座を指定された場合、それは詐欺です」と明言している。会社を名乗る相手が、なぜ個人の口座で金を集めるのか。答えは、そこにある。
立ち止まる手順と、すでに払ってしまった方へ
予防の側は、難しいことをしなくていい。推薦している「顔」ではなく、勧誘している「相手」を見る。それだけで大半は判別できる。
- 推薦しているとされる著名人・企業の公式発信をたどり、本人がその投資を推薦している事実があるか確かめる
- ニュース記事に見えても、URLとドメインが本物のメディアのものか確認する
- 話が個人のLINEや限定グループに移ったら、そこで一拍おく。その場で入金を決めない
- 勧誘してきた相手が日本の登録を受けた事業者かを調べる。名前が出てこないなら、それ自体が答え
他人の資金を運用・助言する商売には登録が要り、金融庁は「日本で登録を受けずに金融商品取引業や暗号資産交換業を行うことは違法です」としている。相手が正規の業者かは無登録業者の名称一覧や登録業者の検索で照らせる。看板の有名さと、事業者としての登録の有無は、まったく別の話だ。
すでにお金を入れてしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。「手数料を払えば出金できる」「上位プランにすれば取り返せる」は、追加で取るための言葉だと考えてほしい。順序はこうなる。①追加で払わない ②広告・やり取りの画面・振込記録を残す ③カード会社や銀行など決済元にすぐ連絡する ④消費者ホットライン「188」、警察相談専用電話「#9110」、または金融庁の詐欺的な投資に関する相談ダイヤルに相談する。私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。
この記事のまとめ
- 実在の著名人・大手メディアの名前と写真は「借り物」。偽の記事風ページで信用させ、個人のLINEへ連れ出すまでが入口装置
- 「必ず儲かる」の言い切りと、少額なら出金でき大きく出すと止まる動き、個人名義口座への振込が、お金の流れに出る目印
確かめる相手は、広告の中の有名人ではない。推薦の出どころと、勧誘してきた事業者の登録だ。迷えば188へ。それが一番確かだ。