第276号黒岩検閲済 2026年7月2日 発行(不定期刊/前号:7月2日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|実在企業の名を借りるマイニング投資の型

「経営再建で話題」——実在企業の名前を看板に借りるマイニング投資勧誘の型を、お金の流れで調べた

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黒岩警戒度

検索すればニュースが何本も出てくる、海外の暗号資産マイニング企業。その名前を看板に掲げて、「経営再建中の今こそ仕込みどき」「マイニング投資で毎日報酬」とうたう勧誘が、SNSや広告で流れてくる。今号で扱いたいのは特定の案件ではない。会社は実在し、報道も本物。だが投資を受け付ける窓口だけが、その会社と何の関係もない——この組み合わせの型だ。

報道は本物、窓口は別物——この型の骨格

この型の入口には、たいてい本物のニュース記事の切り抜きが貼られている。株価の急落、破産手続き、再建計画。数字も日付も報道のとおりで、調べれば裏が取れる。だからこそ、読んだ側は「実在する話だ」と感じる。

問題はその次だ。「この再建局面に個人でも投資できる」「特別枠を案内する」と話が続き、申込みの窓口はSNSのDMやチャットアプリ、見慣れない海外サイトになる。上場企業への投資なら、本来は証券会社の口座を通じて株式を買う。その会社の公式サイトにもIR資料にも載っていない「投資窓口」が、なぜか個人のチャットにだけ現れる——ここで報道と窓口が切り離れている。

実在の名前を看板に借りる手口自体は、この型に限らない。金融庁は「SNSで著名人の写真を無断掲載し、証券会社や日本証券業協会の広告を装う」偽広告に注意を出している。名前と肩書は、本人や本社の許可なく看板に使える。つまり、看板が本物かどうかは、話の中身の保証にならない。で、その窓口は、会社の決算書のどこにつながっているのか。

で、その利益の出どころは?——数字でほどく

マイニングというのは、大量の計算機と電気代で報酬を掘る商売だ。つまり、機材費と電気代を報酬が上回らなければ赤字になる。実際、専業の上場企業ですら、相場の低迷期には株価が9割近く下がり、法的整理に至った例が報道されてきた。プロが大規模設備で挑んでも採算割れする局面がある。それがこの事業の実態だ。

そこへ「個人がスマホから数万円で参加すれば、日利1%」という話が来る。まず、割り算をしてみてほしい。日利1%は、単利でも1年で元手の3.6倍あまり。複利で回せば計算上は約37倍になる。設備を持つ本業の会社が赤字と再建に苦しむ横で、設備を持たない個人にだけ、その利回りが約束される——出どころの説明がつかない。

「元本は返金保証」「必ず戻る」という言葉が添えられていたら、そこにも線がある。証券取引等監視委員会は、「金融商品取引法(38条)は、証券会社やその役職員が、有価証券の価格等が必ず騰貴する、又は必ず下落するといった断定的な判断を示して勧誘することを禁止しています」と説明している。正規の業者ほど「必ず」とは言えない。迷いなく言い切る宣伝は、正規の枠の外を疑う目印になる。

お金の流れに出る、3つの目印

看板や物語は精巧に作れる。だが、お金の通り道には型が出る。私が見るのは次の3点だ。

目印1:支払いが暗号資産の送付になっている

金融庁の相談室は、SNS経由の投資勧誘の事例として「個人名義の口座に入金を指示されたり、暗号資産を送らせたりするケースもあります」と紹介している。暗号資産の送付は、銀行振込と違って組戻しの仕組みがなく、送った先をこちらから追いにくい。上場企業への出資が、なぜ匿名性の高い送金手段でなければならないのか。理由が説明されないなら、その一点で立ち止まっていい。

目印2:振込先が個人名義の口座になっている

警察庁は特殊詐欺対策ページで、「一般的に、投資話が本物であれば、①振込先として個人名義の口座を指定されること②振込先の口座が振込のたびに変わることはまずありません」と明記している。会社への投資なのに、振込先が会社名義でない。あるいは払うたびに口座が変わる。どちらか一つでも当てはまれば、疑ってかかるのが順当だ。

目印3:出金の段になって、手数料・税金・保証金を求められる

国民生活センターには、「暗号資産の取引口座やアプリ上では利益が出ているように見えていても、出金しようとすると『手数料』『税金』『保証金』などの名目で請求されるケースもみられます」という相談事例が寄せられている。画面の残高は、運営側がいくらでも書き換えられる数字にすぎない。増えて見える残高を人質に、引き出す側から追加で取る——これがこの型の出口だ。

被害は「型」のまま積み上がっている 警察庁の統計では、SNS型投資詐欺の認知件数は令和8年5月末時点(暫定値)で5,099件、被害額は700.4億円。前年同期からいずれも2倍を超えた。手口の看板は流行のニュースごとに掛け替わるが、お金の流れの型はほとんど変わっていない。

立ち止まる手順と、すでに送ってしまった方へ

予防の側は、難しいことをしなくていい。社名ではなく、窓口を調べる。それだけで大半は判別できる。

  • その投資の申込先が、会社の公式サイト・IR資料に載っている窓口かを確かめる
  • 勧誘してきた業者名を、金融庁の登録業者一覧で照らす(載っていなければ日本で営業できない立場だ)
  • 支払方法が「暗号資産の送付」「個人名義口座への振込」なら、その場で止まる
  • 「今日中」「特別枠」と急かされたら、いったん持ち帰って調べます、と返す

すでに送金してしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。「出金手数料を払えば戻る」は、追加で取るための言葉だと考えてほしい。順序はこうなる。①追加で払わない ②やり取りの画面・送金記録を残す ③振込やカードの決済元に連絡する ④警察相談専用電話「#9110」か消費者ホットライン「188」に相談する。私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。

迷ったとき用の一言 「その話、御社のIRのどこに載っていますか」。本物の投資機会なら、公式の文書のどこかに必ず痕跡がある。答えが「ここだけの案内なので」だったら、それはそれで答えだと思う。

この記事のまとめ

  • 実在企業の報道を切り貼りして信用を作り、無関係の「投資窓口」へ誘導するのがこの型の骨格
  • 暗号資産での送付・個人名義口座・出金時の追加請求——お金の流れに出る3つの目印で判別できる

報道が本物かどうかではなく、窓口が本物かどうかを調べる。確かめる先は、勧誘してきた相手ではなく、公式のIRと金融庁の登録一覧だ。