第275号黒岩検閲済 2026年7月2日 発行(不定期刊/前号:7月2日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|“AI運用”無敗実績うたいの型

「AIが運用、5年間マイナスなし」とうたいLINE登録へ誘導する投資勧誘の型を、お金の流れで調べた

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黒岩警戒度

「AIが自動で運用します」「5年間マイナスなし」。SNSやWeb広告でそううたい、詳しくはLINEの友だち登録へ、と誘う投資の勧誘を見かける。今号で扱いたいのは特定のサービス名ではない。名前を伏せても残る一点、つまり「その無敗の実績は、こちらから確かめられるのか」と「で、その利益の出どころは?」を、勧誘を受けた側が自分で問えるかどうかだ。

先に断っておくと、AIを使った資産運用そのものは、登録を受けた事業者が正規に提供しているものもある。問題は技術の名前ではない。実績の根拠が示されず、運用の主体が確かめられないまま、話がクローズドな場へ運ばれていく――その流れのほうだ。順に見ていく。

「5年間マイナスなし」は、どうすれば確かめられるのか

この型の看板は、期間の長さと無敗の組み合わせである。「5年間マイナスなし」と言われると、長く続いている分だけ確かに見える。だが立ち止まって考えたいのは、その成績表を誰が検算したのか、という一点だ。運営者自身が作った画像や表は、第三者の監査や公的な開示にひも付いていないかぎり、こちらからは裏が取れない。検証できない実績は、判断の材料としては「ない」のと同じだ。私はそう見ている。

もう一つ、言い切り方そのものにも法律の線がある。証券取引等監視委員会は「金融商品取引法(38条)は、証券会社やその役職員が、有価証券の価格等が必ず騰貴する、又は必ず下落するといった断定的な判断を示して勧誘することを禁止しています」と説明している。正規の登録業者ほど「マイナスなし」「必ず増える」とは言えない仕組みになっている、ということだ。つまり、迷いなく言い切ってみせる宣伝文句は、信頼の印というより、むしろ正規の枠の外にいる可能性を示す目印になる。

数字でほどく:無敗の運用が本当にあるなら 仮に控えめに「月利3%でマイナスなし」だとする。1.03を12回かけると1年で約1.43倍。60回かければ5年で約5.9倍になる(電卓で1.03を60回かけるだけなので、確かめてみてほしい)。元手100万円が5年で約590万円。この成績を本当に持っているなら、銀行から借りてでも自分の金で回すほうが早く、広告費を払って見知らぬ他人を募る理由が見当たらない。で、その利益の出どころは?――この割り算に答えられない話は、いったん近づかないでおきたい。

なぜ、話はLINEの中へ移るのか

この型では、広告そのものは入り口にすぎず、本題は決まってLINEの友だち登録の先で始まる。金融庁は「SNS(Facebook、Instagram等)上の偽広告やURLをクリックすると、LINEのグループへの参加や詐欺サイトへのアクセスを誘導されます」と注意を出しており、同じ資料には、グループ内で複数のアカウントが投資に成功しているそぶりを見せ、参加者が投資したくなるよう仕向けるケースがあることも記されている。

閉じた場に移す理由は、仕組みで考えると分かりやすい。検索で比較される場所から、1対1で語りかけられる場所へ。第三者の目が届かず、家族に相談する前に次の案内が届く場所へ。移動しているのは会話の場所ではなく、考える時間と相談の余地のほうだ。被害の規模も小さくない。警察庁の集計では、SNS型投資詐欺は令和7年に9,538件・被害額約1,274.7億円(暫定値)と、前年から件数・金額とも5割近く増えている。登録した瞬間に何かが起きるわけではない。ただ、その先の会話が「型」に沿って進むことは、頭の隅に置いておきたい。

「AIが運用」の中身と、運営の実体をどう確かめるか

「AIが運用する」と言われたら、確かめたいことは二つに絞れる。一つは中身だ。何を判断材料に、どの市場で、誰の名義の口座で売買するのか。ここが説明されないなら、AIという言葉は仕組みの説明ではなく、説明を省くための飾りとして使われている。

もう一つは主体だ。他人のお金を預かって運用したり、売買の助言をしたりする商売には国の登録が要る。金融庁は「日本で登録を受けずに金融商品取引業や暗号資産交換業を行うことは違法です」と明記し、無登録業者との取引では出金の拒否や法外な手数料、突然の連絡不能といったトラブルが多いことを挙げている。相手が登録業者かどうかは、金融庁の「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」で名称を検索すれば、その場で照らせる。あわせて、運営者として示される住所や電話番号が、実体を確かめられるものかどうかも見ておきたい。所在や連絡先をたどりにくい相手は、何かあったときに追いにくい相手でもある。

この型の目印(3点) ①実績が「マイナスなし」「勝率○%」と検証できない形で言い切られている ②仕組みの説明より先にLINE登録を求められる ③運用の主体が金融庁の登録一覧で見つからない。3つそろえば、乗る・乗らない以前に、確かめる材料がそろっていない話だと考えていい。

立ち止まるための手順と、相談の窓口

気合いで見抜く必要はない。順序を決めておけば足りる。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにして、次の点だけ確かめてほしい。

  • 示された実績を、運営者以外の情報で確かめられるか(確かめられないなら根拠にしない)
  • 運営者の名称を金融庁の登録一覧で検索したか
  • 「マイナスなし」「必ず」の言い切りが入っていないか
  • LINE登録や入金を、その日のうちに済ませるよう急かされていないか
  • 家族や友人など、利害のない誰かに一度話したか

すでに登録し、入金の案内を受けている方は、追加で払わないことを先に決めてほしい。やり取りの記録を残したうえで、迷えば消費者ホットライン188へ。緊急でない相談は警察相談専用電話#9110という窓口もある。判断は正規の窓口に委ねるのが一番確かだ。

この記事のまとめ

  • 「AIが運用」「○年間マイナスなし」は、検証できる根拠が示されないかぎり判断材料にならない
  • 断定的な言い切りでの勧誘は金融商品取引法38条が禁じており、言い切る宣伝ほど正規の枠の外を疑う
  • LINEへの誘導は、考える時間と相談の余地を狭める方向に働く。登録業者かどうかは金融庁の一覧で照らせる

対策は結局、その場で決めない・登録の有無を照らす・利害のない誰かに話す。この3つに尽きる。