第137号黒岩検閲済 2026年6月15日 発行(不定期刊/前号:6月15日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|無料セミナー商法

「無料セミナー」から高額な投資講座へ——受講料は何の対価なのか、お金の流れでほどく

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黒岩警戒度

「老後の不安をなくす」「NISAを基礎から」といった無料セミナーの案内を、SNSで見かけることが増えた。入口はたしかに無料である。だが、その先に控えているのは、年で数十万円という有料講座のことが少なくない。今号で洗ったのは、特定の講座ではなく、こうした「無料の入口 → 高額な本講座」という流れの型のほうだ。お金がどこから来てどこへ行くのかを、いつものように追ってみたい。

無料セミナーは、なぜ無料で成り立つのか

まず、素朴な問いから始めたい。会場を借り、講師が時間をかけて教える。それを無料で配って、事業として成り立つのはどうしてか。答えはたいてい一つで、無料セミナーは「商品」ではなく「入口」だからだ。本当に売りたいものは、その後ろにある有料の講座やサポートのほうにある。

つまり、無料で配られているのは知識そのものではなく、「次に進みたくなる気持ち」だと見ていい。広告で「売り込みはしません」と書かれていても、設計として後ろに有料コースが控えているなら、それは売り込みがないのではなく、売り込みの位置を後ろにずらしているだけ、ということになる。

では、その利益の出どころは?

ここが今回の本題だ。投資の話なので、つい「運用でいくら増えるか」に目が向く。だが、講座を運営する側のお金の流れを見ると、収益の柱は受講者の運用益ではない。受講料そのものが、事業者の売上になっている。これは投資の儲けとは別の話だ。

言い換えると、こうなる。受講者がその後の投資で得をしようが損をしようが、受講料はすでに支払われ、事業者の手元に残る。だから「実際に資産が増えた人がどれだけいるか」という肝心の部分が、外から確かめにくい。で、その利益の出どころは?――少なくとも事業者にとっての確実な利益は、運用の成果ではなく、あなたの受講料のほうだ。そう整理してから話を聞くと、見え方が変わってくる。

料金が「説明会で」しか分からない、という型

もう一つ、この型に共通して目につくのが、肝心の受講料が広告にも公式サイトにも書かれていないことだ。「まずは無料説明会へ」と案内され、金額は中に入ってからでないと分からない。

値段が後出しになるほど、その場の空気で判断させられやすくなる。比較する時間も、持ち帰って家族に相談する間も取りにくい。本来、健全な商品なら、値段を先に示すことを嫌がる理由はないはずだ。金額を聞くために説明会へ行かなければならない——その構造自体を、一拍おいて眺めてほしい。

「教えるだけ」と「助言」の境目

投資を教える行為そのものは、ただちに違法というわけではない。ただ、個別の銘柄や売買を助言・代理する業務になると、話は変わる。金融庁は、日本に住む人を相手に株やFXなどの金融商品取引業を行う者は、法律に基づく登録が必要だと説明している。登録のない「無登録業者」については、利用者保護の態勢が当局では確認できないと注意を促している。

「スクール」「講座」という看板でも、進んだ先で個別の助言にあたる中身が出てくるなら、相手に登録があるかは一度確かめておきたい。登録の有無は、契約の前に自分で引ける情報だ。「教えるだけ」と「助言」の境目は、受け手からは見えにくい。だからこそ、看板の言葉ではなく、相手の登録という事実のほうを見たい。

この型に共通する3つの特徴 ①入口は無料だが、後ろに年で数十万円規模の有料講座が控えている。②受講料が事前に開示されず、説明会に入って初めて分かる。③「資産が増えた」という肝心の成果が、外から検証しにくい。――どれも、それ自体が直ちに違法という話ではない。ただ、考える時間と確かめる材料を持ちにくい構造だ、という点は覚えておきたい。

数字で見る、相談と被害の規模

こうした「副業・投資のノウハウを高額で売る」たぐいの相談は、決して珍しいものではない。国民生活センターには、副業・投資などで高収入を得るための情報として売られる「情報商材」に関する相談が、近年も年に数千件の規模で寄せられている。ミニ講義や無料説明会の視聴をきっかけに、高額な講座やサポート契約へ勧誘される、という相談のかたちが目立つという。

入口がSNSになると、さらに数字は大きくなる。警察庁の統計では、令和6年のSNS型投資詐欺の認知件数は10,237件、被害額は約1,271.9億円にのぼった。これは「講座が詐欺だ」という意味ではない。SNSを入口にして投資のお金が動く場面に、どれだけのリスクが集まっているか——その背景の規模感として見てほしい数字だ。

あわせて、消費者庁も、SNSなどを通じた投資や副業の「もうけ話」に注意するよう呼びかけている。公的機関がそろって声を上げているのは、それだけ相談が積み上がっているからだ、と私は受け取っている。

契約前に、立ち止まるための持ち物

急いで結論を出さないために、その場で確かめられることをいくつか挙げておく。気合いで見抜こうとすると疲れるので、「いつものクセ」にしてしまうのがいい。

  • 受講料の総額・追加費用・解約条件を、契約前に書面で出してもらう
  • 「資産が増えた」という実績は、自分の手で裏が取れるかを基準にする
  • 個別の助言が出てくるなら、相手に金融商品取引業の登録があるか確かめる
  • 金額を聞いたその場で決めず、いったん持ち帰って家族や友人に話す
迷ったとき用の一言 「学ぶこと」そのものを否定したいのではない。ただ、いい学びの機会なら、値段を先に示し、こちらが調べる時間を取ることを嫌がったりはしないはずだ。値段が後出しで、即決を促されたなら、それはそれで一つの答えだと思う。

この記事のまとめ

  • 無料セミナーは「商品」ではなく「入口」。本当に売りたいのは後ろの有料講座のことが多い
  • 事業者の確実な利益は運用益ではなく受講料そのもの。だから成果は外から見えにくい
  • 料金の後出し・登録の有無・実績の裏取り——この3点を契約前に確かめたい

結局は、値段を先に確かめる・その場で決めない・登録と実績を自分でたどる。最終的な判断に迷うときは、金融庁や消費生活センター(消費者ホットライン188)など、正規の窓口に相談してほしい。