「初回◯,◯◯◯円」で始まる副業スクールの“モニター価格”——その安さは、どこで回収されるのか
「SNS運用や動画編集のスキルが身につく」「いまならモニター価格、初回◯,◯◯◯円から」。この種の副業スクールの広告を、ここのところよく見かける。入口の値段が、缶コーヒー数本ぶんくらいに見えるのが特徴だ。私が引っかかるのは、まさにそこである。なぜ、これほど安く始められるのか。今号はこの「モニター価格」という値付けの型を、お金の流れから洗ってみたい。
「モニター価格」は、値引きではなく入口だ
普通の商売なら、安く売れば売るほど利幅は薄くなる。だが、この型の入口価格は意味が違う。数千円は「商品の値段」ではなく、「見込み客を一人つかまえるための費用」として置かれている。つまり、安さそのものが広告費なのだ。
では、その費用はどこで回収されるのか。回収先は、入口の後に控えている。国民生活センターは、この種の副業について「情報商材そのものだけでなく、情報商材をきっかけに、電話やWeb会議で高額な副業コンサルティングやサポート契約、ビジネスセミナー等を勧誘されるケースが目立ちます」と整理している(国民生活センター「情報商材」、2026.06.15閲覧)。安い入口は、高い本体への通路になっている、ということだ。
数字でほどく:初回の安さと、その後の請求
仮に、モニター価格が初回9,800円だったとする。一方で、後から案内される「サポートプラン」や「マスター講座」は、数万円から、ものによっては数十万円になることがある。仮に54,780円のプランへ進んだとすれば、入口の約5.6倍である。これが数十万円なら、入口の何十倍にもなる。
消費者庁は2025年6月、簡単な副業をうたって高額なサポートプランを契約させていた事業者について注意喚起を出し、その勧誘の言葉として「初心者でも簡単に稼ぐことができる」「このプランなら、月50万が当たり前になる」といった文句を挙げている(消費者庁 注意喚起(2025年6月26日)、2026.06.15閲覧)。「月50万が当たり前」と言われたら、まず割り算をしてほしい。年に直せば600万。それが「当たり前」に出る運用や副業があるなら、人を募って教えるより、黙って自分でやっているほうが早い。で、その利益の出どころは?――そこが説明されないなら、入口がいくら安くても近づかないでおきたい。
相談は、増えている
こうした副業トラブルは、珍しい話ではなくなっている。国民生活センターによれば、「スキマ時間に気軽に稼げる」などとうたう副業に関する相談の登録件数は、2020年末の1,341件から、2021年末2,398件、2022年末2,793件、2023年末3,694件へと、数年で増え続けている(国民生活センター「スキマ時間に気軽に稼げる等とうたう副業トラブル!」(2024年9月4日)、2026.06.15閲覧)。「自分だけは大丈夫」と思いがちな手口ほど、数字の上では広く起きている。
もし、入口の数千円を払ったあとで気づいたら
入口を払い、その後で高額プランを勧められて違和感を持った——という段階で読んでいる方もいるだろう。ここで大事なのは順序だ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先になる。
制度の話も一つだけ。広告を入口に「これを買えば仕事を紹介する・稼げる」という形で教材やプランを売る取引は、特定商取引法の「業務提供誘引販売取引」に当たることがある。その場合、契約書面を受け取った日から数えて20日以内であれば、書面または電磁的記録によって契約を解除(クーリング・オフ)できる、と消費者庁は説明している(消費者庁 特定商取引法ガイド「業務提供誘引販売取引」、2026.06.15閲覧)。ただし、取引の形態によって適用の有無は変わる。自分のケースが当てはまるかどうかは、契約書面を手元に置いたうえで、消費生活センターに確かめてほしい。
- 入口価格より先に「最終的にいくらかかるのか(総額)」を確認する
- 「簡単に」「必ず」「月◯万が当たり前」という言葉が出たら、いったん止まる
- 契約書面・やり取り・振込の記録を、消さずに残しておく
- 追加の支払いを求められても、その場では決めない
この記事のまとめ
- 「モニター価格」の数千円は値引きではなく、高額な本体契約へつなぐための入口費用になりやすい
- 判断材料は入口価格ではなく「総額」と「利益の出どころ」。月◯万が当たり前という言葉は、まず割り算で確かめる
もう入口を払ってしまった場合も、まずは追加で払わない・記録を残す・消費生活センターに相談する。クーリング・オフが使えるかは、契約形態によるので正規窓口で確かめてほしい。