第270号黒岩検閲済 2026年7月1日 発行(不定期刊/前号:6月30日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|配当うたい・未公開トークンの型

「上場すれば数十倍・毎月配当も」とうたう未公開トークンの勧誘の型を、お金の流れで調べた

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黒岩警戒度

「上場前のいまなら安く買える」「保有しているだけで、毎月配当が入る」。まだ取引所に上場していない“未公開トークン”を、上場前に買わせようとする誘いがある。今号で扱いたいのは特定の銘柄名ではない。名前を伏せても残る一点、つまり「その配当や値上がりの利益は、いったい誰の・どんなお金から出ているのか」を、こちらから確かめられるかどうかだ。最初に断っておくと、私はどの銘柄も名指しで「詐欺だ」とは言わない。調べるのは、案件をまたいで繰り返し現れる勧誘の“型”のほうである。

「毎月配当」は、どこのお金から出るのか

この型の目立つ売り文句が「毎月、配当(分配金)が入る」だ。ゲームやサービスの売上から分配する、といった説明が添えられることが多い。だが、まだ上場も事業の実績も確かめられない段階で、なぜ毎月きまった配当を約束できるのか。ここは立ち止まって考えたい。もし新しく入ってきた人の購入代金を、先に入った人への“配当”に回しているだけなら、それは事業の利益ではなく、お金の付け替えにすぎない。

金融庁も、暗号資産などの高利回りをうたう勧誘について、「当初は配当があり払戻しもできたが…突然サービスが停止し、配当や預けた現金・暗号資産の払戻しができなくなった」という被害の流れを挙げて注意している(2026年)。最初は配当が出ることこそが、この型の怖いところだ。「ちゃんと入ってきた」という体験が信用をつくり、追加の入金や、周りへの紹介を後押ししてしまう。

そもそも「配当を毎月」「元本は保証する」と約束して、不特定多数から出資金を集める形そのものにも、法律上の線がある。出資法(第一条)は、出資金の全額やそれを超える金額を払い戻すと明示・暗示して出資金を受け入れることを禁じている。元本保証や高い配当の約束は、耳ざわりがいいほど、この線に触れうる領域だと見ておきたい。

「上場すれば数十倍」を、まず数字でほどく

もう一つの目印が、値上がりの数字の大きさだ。「上場すれば数十倍」「今の百倍を狙える」。うまそうに聞こえるが、こういう数字は、いったんほどいてみるといい。

数字でほどく:もし本当に「数十倍が確実」なら 仮に「上場すれば確実に50倍」という話が本当だとする。元手10万円が500万円になる運用が、リスクなく手に入るということだ。もしそんな確実な話があるなら、見ず知らずの相手に声をかけて回らずとも、自分で借りてでも買い占めているはずである。値上がり幅が大きいほど、「なぜ他人にわざわざ配って回るのか」という説明が抜けていることのほうが、私には引っかかる。

国民生活センターに寄せられる暗号資産の相談は、2022年5,625件、2023年8,496件、2024年7,227件と高い水準で推移している(2025年)。同センターは、こうした勧誘に「著名人」「必ず儲かる」「元本保証」といった言葉が多いことも挙げている。「必ず」「確実」「元本保証」と言い切る強さは、安心の根拠にはならない。むしろ、言い切るほど一度立ち止まりたい。

紹介の連鎖――「知り合いから」で警戒がゆるむ

この型は、広がり方にも特徴がある。SNSや、知り合いからの紹介を入口にすることだ。金融庁は、「知り合いからの紹介やSNS等を通じて…必ず儲かるとうたう高利回りな投資話に勧誘され」るケースに注意を促している(2026年)。相手が友人や知人だと、「この人が言うなら」と、それだけで警戒がゆるみやすい。

そして、紹介した側にも紹介料が入る仕組みだと、善意のつもりで周りに広げてしまう。銘柄が一つ行き詰まっても、次の“新しいトークン”へと看板を掛け替えて、同じ人たちが紹介を続ける——そうやって連鎖していくのも、この型でよく見る光景だ。出口では、金融庁が「投資したお金が引き出せない、出金の際に税金等の名目で高額な金銭を要求される、紹介者や業者と連絡が取れなくなる」といったトラブルを挙げている(2023年)。紹介してくれた知り合い自身も、気づけば連絡が取れなくなっている、ということが起こりうる。

確かめられるのは「登録の有無」

値上がりの当たり外れや、配当が続くかどうかより先に、こちらで確かめられる事実がある。登録の有無だ。金融庁は、「国内で暗号資産と法定通貨との交換サービスを行うには、暗号資産交換業の登録が必要」としている(2025年)。登録を受けずに暗号資産交換業を行う者は、資金決済法(第63条の2)に違反するものとして公表の対象になっている。

つまり、そのトークンを売っている運営者が、登録を受けた業者なのか。金融庁は、免許・許可・登録を受けた事業者を検索できる仕組みも用意している(金融庁「詐欺的な投資勧誘等にご注意ください」内の金融事業者検索)。無登録業者との取引について金融庁は、「投資者等の保護態勢が確保されているか当局では確認できず、出金の拒否や法外な出金手数料を請求されたり、急に連絡が取れなくなるなどのトラブルに遭ったという声が多く寄せられています」と注意している(2024年)。立派な資料や動画、丁寧な担当者の対応は、登録の裏付けを意味しない。「上場前」のうちに、相手の会社名・所在地・連絡先と、この登録の有無を、自分の手でたどって確かめておきたい。

入れる前に、立ち止まるための確認

気合いで見抜くのは疲れる。だから、いくつかを「いつものクセ」にしておくのがいい。一番効くのは、その場で決めないことだ。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにするだけで、急かしの大半はかわせる。そのうえで、

  • 「毎月配当」「上場前だけ安い」でも、その配当・利益が新規参加者のお金で回っていないか、出どころの説明を先に求める
  • 「上場すれば数十倍」「必ず値上がり」は、そのまま黄信号として扱い、なぜ他人に配って回るのかを一度考える
  • 「元本保証」「毎月◯%の配当」と言い切る勧誘が出たら、言い切りの強さを根拠と取り違えず、一拍おく
  • 販売元・運営会社が、暗号資産交換業などの登録を受けているかを、金融庁の検索で自分の手で確認する
  • 紹介者が知り合いでも判断を預けず、出金時に「税金・手数料を先に」と求められたら、それ以上は払わず相談先に連絡する
迷ったとき用の一言 「上場前に安く買えて、しかも毎月配当まで確実にもらえるなら、なぜ知らない相手にわざわざ声をかけて回るのか」。これは未公開トークンに限らず、うまい話全般に効く問いだと思う。配って回る理由が説明されない話には、近づかないでおきたい。

この記事のまとめ

  • 「毎月配当」は、新規参加者のお金を先に入った人へ付け替えているだけのことがあり、当初は配当が出ても突然止まりうる
  • 「上場すれば数十倍」は、確実なら他人に配って回る理由がない。「元本保証」「必ず」の言い切りは根拠ではない
  • 紹介の連鎖で警戒がゆるみやすい。当たり外れより先に確かめられるのは、販売元が登録を受けた業者かどうか

配当の心地よさや紹介者の顔より先に、運営者の登録の有無を確かめる。迷ったらお金を入れる前に、消費者ホットライン188へ。緊急でない相談は警察#9110。最終的な判断は、消費生活センターなど正規の窓口に委ねてほしい。