第252号黒岩検閲済 2026年6月29日 発行(不定期刊/前号:6月29日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|二次被害の型

「被害金を取り戻せます」と詐欺被害者に近づく“返金・救済”窓口の型を、お金の流れで調べた

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黒岩警戒度

投資の話やSNSの勧誘でお金を失ったあと、しばらくしてこんな連絡が来ることがある。「あなたの被害金、取り戻せます」「返金交渉を代わりにやります」。検索で見つけた“相談窓口”だったり、被害者が集まる掲示板やSNSのコメント欄から声をかけられたり、入口はさまざまだ。特定の業者やサービスは名指ししない。私が調べたいのは、この“被害者に近づいて「取り戻せる」とうたう”型を、語られる宣伝ではなくお金の流れの側から見るとどうなるか、という一点だ。一度失ったあとだからこそ、その「取り戻せる」という言葉は、強く響く。

なぜ、わざわざ「被害者」を狙うのか

普通に考えれば、お金を失ったばかりの人は、これ以上お金を出す余裕も気持ちもないはずだ。それでもこの型が成り立つのは、被害者という立場が、二つの意味で狙いやすいからだと思う。一つは、「取り返したい」という気持ちが強いこと。もう一つは、最初の詐欺で名前・連絡先・被害額といった情報がすでに相手側に渡っていることがある、ということだ。誰がいくら失ったかを知っている側にとって、被害者の名簿ほど“反応の見込める相手”はない。だから二度目は、最初よりも的を絞って近づいてくる。

ここで踏み込んでおきたいのが、そもそも「返金交渉を代わりにやる」と言える相手なのか、という点だ。国民生活センターは、探偵業者について「依頼者と事業者の間に入り、代理人として解約交渉や返金交渉をする等の行為はできません」とし、「『被害金を回復する』といった説明を受けた場合には、その探偵業者との契約は避けた方が良いでしょう」と明記している(消費者トラブルFAQ「探偵業者に『詐欺被害を回復します』と言われたが、本当か」(国民生活センター))。「被害金を回復します」という言葉そのものが、契約を避ける判断材料になる、と公的機関が言っている。

で、その救済費用の出どころは?

少し立ち止まって考えたい。本当にお金を取り戻してくれるなら、その費用は取り戻したお金から後払いでもいいはずだ。ところが実際には、調査料・着手金・委任手数料・成功報酬の前金、といった名目で、動く前にまとまった金額を求められることが多い。つまり、回収が成功しようがしまいが、相手の手元には先に費用が入る設計になっている。取り戻せたかどうかとは切り離して、お金が動く。で、その救済費用の出どころは?――取り戻せるはずの被害金ではなく、目の前の被害者が新たに出すお金のほうではないか、と見ておきたい。

「返金」という言葉が、いつのまにか逆向きの送金になっている例もある。国民生活センターは、「引き続き返金詐欺に注意!『○○ペイで返金します』と言われたら詐欺を疑って!」(国民生活センター・2024年)として、「返金」してもらうはずが「送金」してしまっていた、というトラブルが目立つと注意を促している。返金の手続きと称して、こちらに操作させ、結果としてお金を出させる。「取り戻す」をうたう窓口でも、同じ向きの動きが起きていないかは確かめておきたい。

「取り戻せます」が前に立つとき 被害のあとに「取り戻せる」「返金できる」と向こうから近づいてくる。動く前に着手金や成功報酬の前払いを求められる。この二つが重なっているときほど、回収が成功しても失敗しても費用は先に出ていく設計になっていないか、を一度はさんでおきたい。取り戻したい気持ちと、取り戻せる根拠は、別の話だ。

「必ず取り戻せる」が成り立ちにくい理由

断定の強さは、そのまま安心の根拠にはならない。むしろ「必ず」「確実に」「100%取り戻す」と言い切るほど、その言葉が何に支えられているのかを見たくなる。先ほどの国民生活センターの説明のとおり、探偵業者は調査や報告はできても、依頼者の代理人として返金交渉をする立場にはない(消費者トラブルFAQ 1505(国民生活センター))。代理で交渉できない相手が「必ず取り戻す」と言うとき、その「必ず」は何で担保されているのか。過去には、トラブル解決をうたって近づき、公的な相談窓口に似た名称を名乗って不安をあおり高額な契約をさせる業者が問題化したこともある(「『アダルトサイトとのトラブル解決』をうたう探偵業者にご注意!」(国民生活センター・2016年)。題材は別ジャンルだが、解決をうたって近づく型の一例として挙げる)。

もう一つ確かめたいのは、その窓口の運営者がどこの誰か、ということだ。消費者庁は通信販売の表示について、事業者名は「通称や屋号、サイト名は認められません」、住所は「現に活動している住所を正確に表示する必要があります」、電話番号は「確実に連絡を取れる番号を表示することが必要です」と説明している(特定商取引法ガイド「通信販売広告について」(消費者庁))。会社名・住所・つながる電話番号がはっきりしない相手に、被害の詳細とお金を預けるのは、それ自体が次のリスクになる。

そもそも、二次被害の母集団は大きい

この型が成り立つ背景には、最初の被害がそれだけ多い、という事情がある。警察庁の暫定値によれば、SNS型投資・ロマンス詐欺の被害は認知件数13,209件・被害額1,550.6億円(うちSNS型投資詐欺は8,217件・1,071.1億円/令和7年11月末暫定値)に上る。著名人をかたった広告やマッチングアプリのDMからLINEへ誘導され、投資に持ち込まれる――この最初の被害者の層が、そのまま「取り戻せます」という二度目の声がかかる母集団になっている。だからこそ、一度つらい思いをしたあとの「取り戻せる」という言葉ほど、いったん立ち止まって扱いたい。

声をかけられたとき、自分で確かめておきたいこと

気持ちが急いているときほど、その場で決めないのが効く。「いったん持ち帰って、公的な窓口に確かめます」を口ぐせにするだけで、大半は防げる。そのうえで、

  • 向こうから「取り戻せる」「返金できる」と近づいてきていないか(こちらから探した正規の窓口かどうか)
  • 動く前に、着手金・調査料・成功報酬の前払いなど、先にお金を出す話になっていないか
  • 「必ず」「確実に」「100%」と取り戻しを断定していないか
  • 会社名・所在地・確実につながる電話番号が、はっきり示されているか
  • 「返金の手続き」と称して、こちらに送金や操作をさせようとしていないか
迷ったとき用の一言 「本当に取り戻せるなら、先に費用を求めず、まず公的な窓口に一緒に相談しよう、と言うはず」。こちらが消費生活センターや警察に確かめる時間を取ることを嫌がる相手なら、それはそれで答えだと思う。

この記事のまとめ

  • 「被害金を取り戻せます」と向こうから近づき、動く前に着手金・成功報酬の前払いを求める流れは、回収の成否と切り離して費用だけが先に出ていく型になりがち
  • 確かめるのは「取り戻せる」という言葉の強さではなく、こちらから探した正規の窓口か・前払いを求めていないか・運営者と連絡先がはっきりしているか

探偵業者は代理人として返金交渉をする立場になく、国民生活センターは「被害金を回復する」と言われたら契約を避けた方が良いとしている。すでに被害に遭った、あるいは「取り戻せます」と連絡が来ている――そんなときは、一人で抱えず正規の窓口へ。消費者庁は全国共通の消費者ホットライン188(いやや!)を、警察庁は緊急でない相談として警察相談専用電話「#9110」を案内している。投資や暗号資産のトラブルなら金融サービス利用者相談室(金融庁)もある。私には個別の解決はできない。判断は、正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。