第242号黒岩検閲済 2026年6月28日 発行(不定期刊/前号:6月27日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|EA配布→権利収入勧誘の型

「紹介すれば権利収入」とEA(自動売買ツール)を配る勧誘の型を、お金の流れで調べた

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黒岩警戒度

「うちのEAは、入れて放置するだけ。しかも、紹介すれば権利収入が入る」――FXの自動売買ツール(EA)をめぐって、こういう誘い方をよく見かける。ツールそのものは無料、あるいは格安。お金は「使うこと」ではなく「広めること」で増える、という建て付けだ。私は20年、止める側から相場を見てきたが、こういう話を聞くと、まず一つだけ確かめたくなる。で、その利益の出どころは、どこなのか。今号は、特定の業者やツールを名指しせず、この“無料で配る→紹介で報酬→人数で回る”という型を、お金の側から洗ってみた。

なぜ「配るだけ」「紹介するだけ」が入口になるのか

怪しい話は、たいてい入口で身構える。「月利20%を保証」と言われれば、さすがに眉に唾をつける。ところが「ツールは無料」「あなたが損をすることはない」「ただ友達に教えるだけ」と言われると、警戒がほどける。タダなら失うものがない、と感じるからだ。

国民生活センターにも、「何もしなくてももうかる」とFX自動売買システムの購入を勧められたという相談が寄せられている(国民生活センター)。さらに、SNS上の投資グループで勧誘される詐欺的なFX取引トラブルについても注意が呼びかけられている(国民生活センター・2024年)。入口が「無料」と「放置」でできているのは、この型に共通する特徴だ。

お金の流れで見ると、利益はどこから来るのか

ここで一度、お金がどこから来てどこへ行くかを追ってみたい。ツールが無料なら、配る側にツール代は入らない。では、その人の収入はどこから生まれるのか。説明を聞くと、答えはたいてい「紹介報酬」にある。あなたが誰かを誘い、その人が口座を開いたり参加費を払ったりすると、あなたに報酬が落ちる。さらにその人が次を誘えば、上の段にも報酬が流れる――この形だ。

数字でほどく:報酬は、運用ではなく人数で増える 仮に一人を紹介すると2万円の報酬が入るとする。10人なら20万円、その10人がさらに10人ずつ誘えば、計算上は100人ぶんの報酬が連なっていく。2万円×人数、という単純なかけ算だ。この場合、上にいる人の取り分は相場で勝ったから増えるのではなく、後から入った人数で増える。すると力を入れる先は「運用で勝つこと」より「次の人を連れてくること」に傾きやすい。で、その権利収入の出どころは、運用益なのか、それとも後から入った人が払ったお金なのか。

誤解のないように言い添えておく。紹介に報酬が出る仕組みそのものが、ただちに違法というわけではない。問題は中身ではなく、利益の源泉が「相場で生んだお金」なのか「新しく入った人のお金」なのか、という一点にある。もし後者なら、新規が止まった瞬間に全体が回らなくなる。誰かの利益は、必ず別の誰かの支払いから来ているからだ。

「紹介で報酬」という連鎖の形には、名前と線がある

人を誘って報酬を得て、その人にもまた次を誘わせる――この形は、法律のうえで名前がついている。消費者庁は連鎖販売取引(いわゆるマルチ)を、個人を販売員として勧誘し、更にその個人に次の販売員の勧誘をさせるという形で、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品(権利)・役務の取引と定義している(消費者庁・特定商取引法ガイド)。EAや投資ツールの「紹介すれば権利収入」が、この連鎖の形に当てはまる場合がある、ということだ。

そしてこの型では、入口の「タダ」が、いつのまにか出費に変わることがある。消費者庁は、SNSなどを通じた投資や副業といった「もうけ話」に注意するよう促している(消費者庁)。さらに国民生活センターには、借金をさせてでも副業や投資の費用を払わせる勧誘への注意喚起もある(国民生活センター・2023年)。「無料」で入ったはずが、参加費やツールの上位版、さらには借入まで持ち出させられる――そこまで進んでいたら、もう「タダ」ではない。

「で、誰が運用しているのか」――登録という制度の線

もうひとつ、確かめておきたい線がある。他人のお金で運用したり、報酬を得て投資の助言を行ったりするには、金融商品取引業の登録が必要だ。金融庁は、日本の居住者を相手に金融商品取引業を行う者は、日本の法令に基づき登録を受ける必要があると明示している(金融庁)。相手が海外にいても、日本に住む人を相手にするなら同じだ、とも案内されている。

読者の側にも、確かめる手立てがある。お金を払う前に、その相手や運用元が登録を受けているかを照合できる。金融庁は逆に、無登録で金融商品取引業を行う者の名称等も公表している(金融庁)。名前で突き合わせられる、ということだ。「ツールが自動で勝つ」と言われたら、では、そのお金を実際に動かしているのは誰で、登録はあるのか――そこを一度、立ち止まって確かめてほしい。

確かめたいのは、ツールの性能より「報酬とお金の出どころ」 ツールがどれだけ「自動で勝つ」とうたっていても、判断材料はそこではない。見るべきは、紹介報酬が何から支払われるのか、参加に費用や借入が要るのか、運用元に登録があるのか、の三つだ。報酬の話が先に立ち、肝心の「お金がどこから来るのか」が後回しにされているなら、それ自体が立ち止まる合図だと考えていい。

入口で確かめたいこと

気合いで見抜こうとすると疲れるので、私は「いつものクセ」にしてしまうのがいいと思っている。「無料」「紹介するだけ」と言われたときほど、次の一歩を急がないでほしい。確かめたいのは、次の4点だ。

  • 収入の説明が「運用で勝つ」より「人を紹介する」に寄っていないか
  • あとから参加費・上位版・借入など、追加の支払いが出てくる流れになっていないか
  • お金を実際に動かす運用元が、金融庁の登録を受けているかを支払い前に確認したか
  • 「今だけ」「枠が埋まる」「先に始めた人が得」と、考える時間を奪う言葉が混ざっていないか
迷ったとき用の一言 「本当に勝てるツールなら、わざわざ人に配って紹介料を払う必要はないはずだ」。自分一人で回せばいいものを、なぜ広める側に報酬を出すのか。そこに引っかかりを感じたら、その感覚は大事にしていい。

この記事のまとめ

  • 「無料のEA」「放置で稼げる」「紹介で権利収入」は、警戒をほどくための入口に使われることがある
  • お金の流れで見ると、報酬は運用益ではなく後から入る人数で増える形になりやすく、それは連鎖販売取引の定義に重なりうる
  • 確かめるのはツールの性能ではなく、報酬の出どころ・追加費用や借入の有無・運用元の登録の有無

「タダ」と「安全」は、別の話だ。紹介の話より先に、お金がどこから来るのかを確かめてほしい。一人で迷うときは、消費者ホットライン188が、最寄りの消費生活センターへつないでくれる。