「無料インジケーターを配布」とうたう投資ツール勧誘の型を、お金の流れで調べた
「無料で自動売買のインジケーターを配ります」。SNSやYouTubeでこう呼びかける案内を、いくつか並べて眺めていました。配るもの自体は本当に無料なんだろうと思います。ただ、無料で手に入るのが入口だとして、その先のお金は最終的にどこへ流れていくのか。特定の発信者や案件を名指しすることはせず、案件をまたいで共通する“無料配布 → 登録 → 海外口座”という型を、お金の流れの側から調べてみました。
なぜ「無料配布」から始まるのか
入口が無料なのには、それなりの理由があるんだと思います。お金を払う前のハードルがいちばん低いのは、「タダでもらえる」と言われたときですよね。多くの場合、配布の条件として求められるのはお金ではなく、まず名前とメールアドレス、続いてLINEの登録です。ここで受け取られているのは料金ではなく、あとから何度でも連絡できる「連絡先」のほうだと考えると、流れが見えやすくなります。
登録のあとは、自動の配信で「先月はこれだけ増えた」「主婦でも月収100万円」といった成果が次々と届きます。ただ、こうした実績の画像は、こちらからは裏が取れません。そして「無料」はあくまで入口で、その先には有料のツール、月額のサロン、そして口座の開設が控えている——というのが、私が並べて見たかぎりの共通の道筋でした。国民生活センターも、SNSで「稼ぐ」「もうけ話」と誘い、無料アプリなどから高額な情報商材やオンラインサロンへ誘導する手口に注意を呼びかけています(国民生活センター・2021年)。情報商材をめぐる相談は、2017年度に6,593件と2013年度の7倍超に増えたとされます。無料の入口そのものより、その先で何を求められるかを先に見ておきたいところです。
無料の先にある「海外の無登録業者」
道筋の終点でよく出てくるのが、海外に拠点を置く業者の口座開設です。ここが、お金の流れのうえでいちばん見ておきたい場所だと思っています。日本で投資の勧誘や取引の仲介を行うには、業者の所在が国内か海外かにかかわらず、金融商品取引業の登録が要ります。金融庁は、「取引を行う前に取引の相手が登録を受けているか確認して、無登録の海外所在業者との取引は行わないよう、注意してください」と呼びかけています(金融庁)。
では、登録のない業者に預けると何が起きるのか。金融庁の説明では、無登録業者は「投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず、登録を受けている業者と同等の態勢が整っていない可能性が高い」とされます。具体的なトラブルとしては、「これまで出金ができていたにもかかわらず、出金の拒否や法外な出金手数料を請求されたりする」事例が挙げられています(いずれも金融庁・2024年更新)。無料でもらったツールの画面の上で残高が増えていても、それを引き出せるかどうかは、預けた先がどこかで決まる、ということです。
「勝率100%」「必ず儲かる」が成り立たない理由
この型の案内で目を引くのが、「勝率100%」「必ず儲かる」といった言葉です。気持ちとしては心強いのですが、投資の勧誘でこの言い方が出てきた時点で、私はむしろ警戒を強めるようにしています。証券取引等監視委員会は、「有価証券の価格等が必ず騰貴する、又は必ず下落するといった断定的な判断を示して勧誘することを禁止しています」と説明しています(証券取引等監視委員会/金融商品取引法第38条の解説より)。「必ず上がる」と言い切って勧めること自体が、法律で禁じられている、ということです。
外国為替証拠金取引(FX)についても、国民生活センターは消費者向けの回答で、「外国為替証拠金取引(FX)で『必ず儲かる』ことはありません」とはっきり述べています。相場が必ず一方向に動く道具など存在しない以上、「勝率100%」をうたう無料ツールは、その言葉の時点で説明がひとつ破綻している、と考えるのが安全だと思います。で、その「必ず勝てる」という言葉は、いったい誰が、何を売るために言っているのか。そこを一度引いて見てみたいところです。
巻き込まれないための、初動のチェック
難しい知識で見抜こうとすると疲れてしまうので、私は「お金を入れる前にだけ確認する」と決めてしまうのがいいと思っています。SNSをきっかけにした投資トラブルの相談は近年急増していて、国民生活センターの集計では、著名人や知人を名乗る勧誘に関する相談が2022年度の170件から2023年度には1,629件へと大きく増えました(国民生活センター・2024年)。増えているからこそ、入口の確認を習慣にしておく価値があります。
- 最終的にお金を入れる相手が、日本の金融商品取引業の登録を受けているか確認する
- 「勝率100%」「必ず儲かる」が出てきたら、その言葉自体を黄信号として扱う
- 無料ツールの画面で増える数字と、実際に出金できた事実を分けて考える
- 運営者の氏名・住所が示されているかを見て、法人番号公表サイトで実在を確かめる
- 登録・口座開設を急かされたら、その場では進めず一度持ち帰る
この記事のまとめ
- 無料インジケーター配布の型は「無料配布 → メール・LINE登録 → 有料ツール/サロン → 海外口座」の道筋になりがち
- 終点の海外無登録業者では「出金できない」トラブルが起きやすく、画面の残高と引き出せるお金は別物
- 「勝率100%」「必ず儲かる」と言い切る勧誘は、その言葉自体が法律上も成り立たない
確かめることは、結局この二つに尽きます。お金を入れる相手は登録を受けているか、そしてそのお金は本当に引き出せるか。答えられないうちは、無料の先へ進まない。