第237号黒岩検閲済 2026年6月26日 発行(不定期刊/前号:6月26日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|人気銘柄を名指しする投資勧誘の型

「話題のAI半導体株、今が買い時」と特定銘柄を名指しで勧める型を、お金の流れで調べた

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黒岩警戒度

「次に来るAI・半導体株はこれだ」。実在する人気の米国銘柄を名前で挙げて近づいてくる勧誘がある。検索すれば、その会社も株価も本当に出てくる。だから「実在するなら本物だろう」と、つい安心してしまう。今号で見たいのはそこだ。特定の銘柄も発信者も名指しはしない。案件をまたいで現れる「本物の銘柄を入口にして、専用の場所へ送金させる」型を、正規の米国株の買い方と、お金の流れの側からたどってみたい。

「実在する銘柄」は、相手が信用できる理由にはならない

この型のいちばんの特徴は、餌に使われる銘柄が本物だという点だ。半導体やAIの分野には、ここ数年で実際に株価を伸ばした会社がいくつもある。名前を出されても、調べれば実在が確認できる。だから「嘘じゃなかった」と感じてしまう。

ただ、確認できているのは「その会社が実在すること」だけだ。声をかけてきた相手が信用できるかどうかは、まだ何も確かめられていない。ここが入口の落とし穴になる。本物の銘柄の信用を、相手が自分の信用にすり替えている、という見方をしておきたい。

金融庁も、SNS上の投資勧誘について、アカウント名に「◯◯証券」「◯◯運用会社」「◯◯投資クラブ」といった名称や、著名人の名称や画像が使われていることが多いと注意を促している(金融庁「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」)。実在のものを借りて信用を作る、という運びは共通している。

正規の米国株は、誰かに送金しなくても買える

では、お金の流れを見てみる。人気の米国株を買いたいなら、日本の証券会社で自分名義の口座を開けば、そこから普通に買える。買った株は自分の口座に入る。「先生」や「グループの運用担当」に現金を送る必要は、どこにもない。

金額の感覚も押さえておきたい。たとえば株価が1株270ドル前後、1ドル160円なら、1株はおよそ43,000円という計算になる(270×160)。しかも最近は1ドル分の端株から買える証券会社もある。つまり、正規のルートなら「まず数十万円をまとめて送ってください」と言われる理由がない。

ところがこの型では、決まって「専用アプリ」「限定グループ」「特別な口座」へ案内され、そこへ送金するよう促される。正規の株購入と、お金の流れる先が違う。で、その送ったお金は、どこへ行くのか。

分かれ目は「銘柄」ではなく「どこへ送るか」 本物の銘柄かどうかを確かめても、この型は見抜けない。確かめるべきは、お金が「自分名義の証券口座」へ向かうのか、それとも「相手の指定する場所」へ向かうのか、だ。後者だと感じたら、その時点でいったん止まってほしい。

「必ず儲かる」「画面で増えている」をどう見るか

勧誘では、株価の上昇を「だから必ず儲かる」と言い換えてくる。だが、断定はそれ自体が黄信号だ。金融庁は詐欺的な勧誘の典型例として「上場確実ですので、必ず儲かります!元本も保証します!」といった文言を挙げている(金融庁「詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!」)。値上がりへの期待を「確実」と言い切る話には、まず距離を取りたい。

「専用アプリの画面で資産が増えている」も、同じ目で見たい。金融庁は、こうした手口で出金の拒否や法外な出金手数料を請求される事例があると注意している(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」)。画面に並ぶ数字と、実際に引き出せるお金は別物だ。まとまった額を出そうとすると、理由をつけて断られる――その順番までよく似ている。

そもそも、日本で投資の勧誘をするには、相手が海外にいても金融商品取引業の登録が要る。同じ金融庁のページは、日本で登録を受けずに金融商品取引業を行うことは違法だと明記している。相手が登録を受けた事業者かどうかは、金融庁の免許・許可・登録等を受けている業者一覧で確かめられる。

この型は、いま実際に増えている

「自分は大丈夫」と思いたいところだが、数字の側はそうも言っていない。警察庁によれば、SNSをきっかけにした投資詐欺は、DMからLINEへ誘導し「投資金」「手数料」の名目で振り込ませる手口が中心で、SNS型投資詐欺の被害は令和7年10月末までで11,749件・1,370.8億円(暫定値)にのぼる。

国民生活センターにも、著名人らを名乗る金融商品トラブルの相談が2022年度の170件から2023年度は1,629件へ急増し、「いったん振込してしまうと被害回復が困難」だという(国民生活センター・2024年)。話題の銘柄も、有名な会社名も、信用させるための材料として使われている、ということだと私は見ている。

巻き込まれないための、ゆるい行動ルール

身構えすぎなくていい。確かめる順番を、いつものクセにしておけば足りる。まず一番効くのは、その場で送金しないこと。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにするだけで、大半は防げる。そのうえで、

  • 銘柄が本物かではなく、「お金が自分名義の口座へ向かうか」で見る
  • 勧めてきた相手が登録業者か、金融庁の業者一覧で確かめる
  • 「専用アプリ」「限定グループ」への送金を求められたら、一拍おく
  • 画面で増えた数字より、実際に引き出せたかどうかを基準にする
迷ったとき用の一言 「本物の株なら、自分の証券口座でそのまま買える」。誰かに送金しないと買えない、という説明が出てきた時点で、それは正規の株購入とは別の話だと思っていい。急かされたら、なおさら一度持ち帰りたい。

この記事のまとめ

  • 餌に使われる銘柄は本物でも、それは相手を信用していい理由にはならない
  • 正規の米国株は自分名義の証券口座で買える。送金先が「相手の指定する場所」なら立ち止まる

確かめるのは「銘柄が実在するか」ではなく「お金がどこへ向かうか」。送金を急かされたら、その場で決めず、迷えば消費者ホットライン188へ。