第215号黒岩検閲済 2026年6月23日 発行(不定期刊/前号:6月23日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|勧誘の型

「米国株なら必ず儲かる」とSNSで誘う型を、登録の有無とお金の流れで調べた

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黒岩警戒度

SNSやマッチングアプリ、それに著名人の顔を借りた広告で、「米国株なら必ず儲かる」という誘いを見かけるようになった。米国株という言葉は、なんとなく本格的で手堅い響きを持つ。そのせいか、警戒の壁が一段低くなるように思う。今号は特定の案件を名指しするのではなく、この「米国株で必ず儲かる」という誘いがどういう仕組みで成り立っているのかを、登録制度とお金の流れから淡々と調べてみた。

まず、数字を一つ置いておく

警察庁の暫定値によると、SNS型投資詐欺の認知件数は9,538件、被害額は約1,274.7億円で、いずれも前年から増えている。同庁は「著名人の画像や動画を無断で使用した広告」や「『必ずもうかる』、『元本保証』などの文言を含む広告」が確認されたとしている(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」)。

この数字を割り算してみてほしい。1,274.7億円を9,538件で割ると、1件あたりおよそ1,336万円になる。件数も額も、もはや珍しい話ではない、ということだ。そして入口で使われている文句が「必ず」「元本保証」だという点は、後で効いてくるので覚えておきたい。

「米国株」という言葉が果たしている役割

なぜ、ことさら「米国株」「海外の有望株」なのか。仕組みで考えると、理由は確認のしにくさにあると私は見ている。海外の銘柄や制度は、日本の証券口座で簡単に裏が取れる国内株より、専門でない人にとって調べる手間が一段重い。「日本ではまだ知られていない現地の特別な情報がある」と言える余地が、そのぶん広くなる。

つまり「米国株」という言葉そのものが、検証しづらさを買っているわけだ。入りのフレーズが似通うことについては、別号で勧誘DMの型を5つに整理した記事にもまとめている。看板が米国株でも海外FXでも暗号資産でも、入口の運びは驚くほど変わらない。

「必ず儲かる」「元本保証」が出た時点で、制度の話になる

金融庁は、詐欺的な投資勧誘の典型例として「上場確実ですので、必ず儲かります! 元本も保証します!」という文句をそのまま挙げている(金融庁「詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!」)。投資に「必ず」も「絶対」もない。これは精神論ではなく、確実だと誤解させて契約を勧めること自体が、制度の上で問題になる行為だからだ。

さらに前提として、金融庁は「日本の居住者を相手に、株取引やFX取引、暗号資産取引などの金融商品取引業……を行う者は、日本の法令に基づき、登録を受ける必要があります。日本で登録を受けずに金融商品取引業……を行うことは違法です」と説明している(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」)。LINEの個別チャットやグループに招いて米国株の取引をさせようとする相手が、その登録を受けているか。まずそこを確かめたい。

登録の有無を自分で確かめる 金融庁は、無登録で金融商品取引業を行うとして警告書を出した相手の名称を一覧で公表している(無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について)。ただし同庁も断っているとおり、これは警告時点で確認できた相手に限られ、「一覧に載っていない=安全」ではない。あくまで確認の入口として使いたい。

で、その利益の出どころは?

ここが、この調査報でいつも立ち止まる場所だ。たとえ最初に配当らしきものが振り込まれても、その原資が運用で生まれた利益なのか、それとも後から入ってきた別の人の入金なのかは、画面からは分からない。新しく入った人の金を、先に入った人への配当に回しているだけなら、新規が止まった時点で全体が崩れる。仕組みとしてはそれだけの話である。

実際の手口でも、増えたように見える残高を出金しようとすると壁が現れる。国民生活センターは、SNS経由の投資話で「送金されたお金を引き出す際に『出金手数料』などの名目で追加費用を請求する」流れを挙げている(国民生活センター「SNSで勧誘される詐欺的な暗号資産の投資話 被害回復は困難です」)。警察庁も、出金しようとすると「保証金が必要です」「税金として●%かかります」などと言われ、複数回振り込んでしまう例を紹介している(警察庁「SNS型投資詐欺」)。

つまり、画面上で増えた残高は、引き出せて初めて意味を持つ数字にすぎない。引き出そうとした途端に新たな支払いを求められるなら、それは出どころを説明できていない、ということだと私は受け取っている。

この型に共通する三点 看板が「米国株」でも中身は変わらない。①海外・専門という言葉で検証しにくくする ②「必ず」「元本保証」で考える隙を埋める ③出金の段で追加の支払いを重ねさせる。この三点がそろっていたら、商品名が何であれ、いったん近づかないでおきたい。

巻き込まれないための、ゆるい確認手順

気合いで見抜こうとすると疲れる。だから「いつものクセ」にしてしまうのがいい。一番効くのは、その場で決めないこと。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにするだけで、大半は防げる。そのうえで、次の点を確かめてほしい。

  • 「米国株」「現地の特別な情報」と言われたら、具体的な銘柄名と、取引相手の登録の有無をその場で尋ねる
  • 「必ず」「元本保証」が一度でも出たら、制度上おかしいと考えて距離を取る
  • LINEグループで回ってくる“成功談”は、自分で裏の取れない数字として扱う
  • 出金しようとして追加の支払いを求められたら、そこで止めて、やり取りの記録を残す

すでに振り込んでしまった方へ。気持ちは分かるが、順序だけ先に置く。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。①追加で払わない ②やり取りの記録を残す ③振り込んだ決済元に連絡する ④警察相談専用電話「#9110」や消費者ホットライン「188」に相談する。私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。

迷ったとき用の一言 本当に確かな機会なら、こちらが登録の有無を調べ、数日考える時間を取ることを嫌がったりはしない。急かされたり、調べようとして不機嫌にされたら、それはそれで一つの答えだと思う。

この記事のまとめ

  • 「米国株」は手堅い響きの裏で「検証しにくさ」を提供している。看板が変わっても入口の運びは同じ型
  • 「必ず」「元本保証」は制度上おかしい合図。取引相手の登録の有無と、利益の出どころ(運用益か新規入金か)を先に確かめる

結局のところ、その場で決めない・登録と数字を自分で確かめる・第三者や公的窓口に話す。この3つに尽きる。