「稼ぎ方を有料で売る」高収入インフルエンサー商材の型を、お金の流れで調べた
「パチプロで月収300万円」「バイナリーで自由な暮らし」。動画やSNSで成功した姿を見せ、無料の情報をきっかけにLINEへ誘い、そこから数万〜十数万円の“攻略法”や“ツール”を売っていく——。発信者の名前はそのつど違っても、お金の流れだけを見ると、よく似た一つの型が浮かぶ。今号は特定の人物や商品を名指しせず、この「稼ぎ方そのものを売る」型を、順にほどいてみたい。
なぜ「成功している人」が、わざわざ“稼ぎ方”を売るのか
まず引っかかるのは、順序のおかしさだ。本当に月に数百万円を稼げる方法を持っているなら、人を集めて数万円で売るより、黙って自分で回したほうが早い。それでも“稼ぎ方”を商品にするのは、稼ぎの中心が「その方法で増えるお金」ではなく「方法を買ってもらうお金」にある場合があるからだ。
消費者庁も、こうした入口について「投資や副業といった儲け話をきっかけにした消費者トラブルが年齢を問わず依然として続いています」とし、SNSや動画を通じたもうけ話への注意を促している(消費者庁「SNSなどを通じた投資や副業といった『もうけ話』にご注意ください!」2024年)。無料の動画や発信は、それ自体が目的ではなく、信用と連絡先を集めるための入口になっていることがある。
では、その「月収300万円」は、誰が、どこから払っているのか。動画の向こうでは確かめられない。確かめられないものを根拠に財布を開くのは、順序として危うい。
「無料」から始まり、LINEへ移し、少しずつ金額を上げる
導線にも型がある。最初は無料の動画やプレゼントで関心を引き、次に「もっと詳しい話はこちらで」とLINEなどの閉じた場へ移す。警察庁も、SNSをきっかけにした投資勧誘の手口として「SNSのダイレクトメッセージで接触後、被害者をLINEなどの他のSNSに誘導し、『株や暗号資産に投資すれば利益が得られる』などと言葉巧みに被害者を信用させ」る流れを挙げている(警察庁「SNS型投資詐欺」)。公開の場から閉じた場へ移すのは、第三者の目とブレーキを外すためでもある。
そして金額は、いちどに大きくは出てこない。国民生活センターによれば、情報商材をきっかけに、その後さらに高額なサポート契約やコンサルティングへと勧誘される事例が多く報告されている(国民生活センター「情報商材(各種相談の件数や傾向)」)。最初の数万円は入口で、本体は「上のコース」「専用ツール」「個別サポート」として後から積み上がっていく。最初に見せられた価格は、総額ではないことが多い。
「攻略ツール」「必勝法」を、まず仕組みでほどく
うまい話は、まず仕組みでほどく。パチンコの攻略法もバイナリーの必勝ツールも、本当に確実なら、売るより自分で使い続けたほうが減らない。広く売れば手の内が知られて効きが鈍るのに、あえて売る——その時点で、商品は「攻略」ではなく「攻略という商品」だと見ておきたい。
金融庁も、ツール型の情報商材について具体的に注意している。「友人やSNSを通じて『儲かる』と勧誘され、バイナリーオプション取引の分析ツールが入ったUSBなど高額な情報商材を購入し、勧められた海外無登録業者と取引したところ、多額の損失が発生したなどの相談が増加しています」というものだ(金融庁「バイナリーオプション取引にあたってご注意ください!」2024年更新)。高額なツールを買わせ、その先で別の損失が生まれる——お金が二重に出ていく構図には、目を留めておきたい。で、その利益の出どころは?――勝った人ではなく、買った人のほうにあるのではないか。
特商法の表示義務から見る「総額・返金条件・追加費用」
払う前に、こちらが自分で確かめられる数少ない手がかりが、特定商取引法に基づく表示だ。情報商材の多くは通信販売にあたり、同法は広告に表示すべき事項を定めている。消費者庁の特商法ガイドは、表示事項として「販売価格(役務の対価)」「代金の支払時期、方法」「事業者の氏名(名称)、住所、電話番号」などを挙げている(消費者庁 特定商取引法ガイド「通信販売」)。
電話番号について、同ガイドはさらに「『電話番号』については確実に連絡を取れる番号を表示することが必要です」と踏み込んでいる(消費者庁 特定商取引法ガイド「通信販売広告について」)。だとすると、価格は「無料」とだけ大きく書かれ、総額や返金条件は読めず、連絡先がLINEやメールだけ——という売り方は、この表示義務を満たしているとは言いにくい。最初の「無料」は、後ろにある金額を見えにくくする働きをしていることがある。
巻き込まれないための、ゆるい行動ルール
気合いで見抜こうとすると疲れる。私は「いつものクセ」にしてしまうのがいいと思っている。順に置いておく。
- 見せられた「実績」は、自分の手で裏が取れるかを基準にする(動画やスクショは根拠としては弱い)
- 申込み前に、総額・追加費用・返金条件が一か所に全部書かれているかを確かめる
- 特商法の表記(販売価格・事業者の氏名・住所・電話番号)を自分で読む
- 「無料」「LINEで限定公開」で先を急がされたら、一拍おいて第三者に話す
もし、もう登録・購入してしまったら
すでにLINE登録や、最初の商材の支払いをしてしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。「今ならまだ上のコースに」「専用ツールを入れれば取り返せる」と追加を求められても、そこで止めてほしい。順序はこうなる。①追加で払わない ②やり取りや決済の記録を残す ③振り込んだ決済元(カード会社・銀行)に連絡する ④消費者ホットライン「188」や警察に相談する。情報商材はクーリング・オフが使えるとは限らないので、解約や返金ができるかどうかも含めて、188で相談したい。私には個別の解決はできない。最終の判断は、正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。
この記事のまとめ
- 「稼ぎ方を売る」型は、無料で信用と連絡先を集め、LINEで総額を伏せたまま段階的に上げてくる
- 本当に確実な攻略法なら、売らずに自分で使う。売られている時点で、商品は「攻略」ではなく「攻略という商品」
対策は結局、その場で決めない・実績は自分で裏を取る・総額と特商法の表示を自分で確かめる。この3つに尽きる。